日本郵政が減損処理で 約700億円の特別損失計上!会計処理は?  – マネーイズム
 

日本郵政が減損処理で
約700億円の特別損失計上!会計処理は? 

    公開日:
    2021/06/24
     
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    「日本郵政が、2021年3月期の連結決算で700億円の特別損失を計上」というニュースが流れました。700億円というと大きな金額の損失になりますが、減損損失がどのようなものか知らない人も多いのではないでしょうか。

     

    そこで、この記事では日本郵政のニュースを確認しながら、減損損失とはどのようなものか、また会計処理について詳しく解説します。

    日本郵政が減損処理で約700億円の特別損失を計上

    日本郵政が、2021年3月期の連結決算で700億円程度の特別損失を計上することになりました。これは、傘下の企業トール・ホールディングスの売却によるものです。トール・ホールディングスはオーストラリアにある国際物流会社です。2015年、日本郵政はトール・ホールディングスの国際物流のノウハウを入手するために買収しました。

     

    その後、トール・ホールディングスの業績が悪化し、多額の赤字を計上することとなったため、今回、現地の投資ファンドに売却することになりました。オーストラリア経済の減速や荷物などの物の引き受けが少なくなっていることなどから、再建をあきらめて売却にいたったようです。

     

    売却価格は10億円程度を見込むということですが、トール・ホールディングスには多額の債務があり、この債務を日本郵政が肩代わりすることなどに伴い、減損損失として700億円程度の特別損失を計上します。実を言うと日本郵政は、これまでも何度かトール・ホールディングス関連の減損損失を計上しています。

     

    ここで問題となるのが、減損処理や減損損失がどのようなものかということです。実際の減損処理や減損損失は複雑ですが、次の項からできるだけわかりやすく減損処理や減損損失について説明します。

    減損処理とはどんなもの

    ここでは、減損処理とはどのようなものなのか詳しく見ていきます。

    減損処理と減損損失とは

    減損についての新聞やネットなどのニュースを見ていると、減損処理と減損損失という似た2つの言葉がでてきます。それでは、減損処理と減損損失はどう違うのでしょうか。

     

    減損処理とは、投資した資産に対し、投資した金額に見合う金額が回収できないとわかった場合に、その資産の価値を切り下げる会計処理のことです。切り下げた価値、つまり損失額のことを減損損失といいます。

     

    例えば、100万円の機械を購入したとします。この機械を使って、将来的に得ることのできるキャッシュが150万円だった場合、100万円の機械に投資することで、150万円-100万円=50万円のもうけを得ることができます。

     

    しかし、2年後、同業種のライバル会社の出現で、当初予定よりも将来的に得ることのできるキャッシュが減少しました。100万円の機械(減価償却後の帳簿価格は80万円)に対して、将来的に得ることのできるキャッシュが30万円と判明しました。

     

    これでは、もうけどころか投資金額の回収さえもできません。そこで、帳簿価格の80万円を将来的に得ることのできるキャッシュ30万円まで切り下げます。切り下げる処理のことを減損処理といいます。そして、帳簿価格を切り下げることで80万円-30万円=50万円の損失が出ます。この損失が減損損失です。

    減損処理のプロセスとは

    上述した通り、減損処理は帳簿価格を将来的に得ることのできるキャッシュの額まで切り下げる処理のことです。しかし、減損処理を行うには、将来的に得ることのできるキャッシュの額を見積もるなど、多くのプロセスが必要となります。一般的な減損処理のプロセスは、次の通りです。

     

    • 資産のグルーピング
    • 減損の兆候の把握
    • 減損損失の認識の判定
    • 減損損失の測定

     

    減損処理のプロセスは複雑です。ここでは、簡単に各プロセスの内容を見ていきましょう。

     

    1.資産のグルーピング
    減損処理では、将来得ることのできるキャッシュを計算する必要がありますが、多くの場合、ひとつの資産だけでキャッシュを生み出すことはありません。いくつかの資産を使ってキャッシュを生み出します。

     

    そこで、減損処理の最初のステップとして、キャッシュを生み出す最小の単位まで、資産をまとめる必要があります。これを資産のグルーピングといいます。減損損失は、このグルーピングの単位ごとに測定することになります。

     

    2.減損の兆候の把握
    資産のグルーピングができたら、減損の兆候の把握を行います。減損処理は、将来を測定して処理を行うため、実際に目に見えるものではありません。そのため、減損が生じている可能性を示す事象がおきていないかを定期的に確認する必要があります。

     

    「減損が生じている可能性を示す事象」とは、例えば、営業活動から得る利益やキャッシュが継続してマイナスになっていることや、材料の高騰など市場環境や経営環境に著しい悪化があることなどです。これらの事項が生じている場合は、減損の兆候があるのではないかと考え、減損処理することを考えます。

     

    3.減損損失の認識の判定
    減損の兆候を検討し、減損の兆候があると判断した場合は、次に減損処理を行うかどうかを判断します。

     

    減損損失の認識の判定は、少し難しくなりますが、割引前将来キャッシュ・フローを見積もり、それと固定資産などの帳簿価格を比較します。固定資産などの帳簿価額の方が、見積もった割引前将来キャッシュ・フローよりも大きければ、減損している可能性が高いとして、減損処理を実施する必要があると判断します。

     

    4.減損損失の測定
    減損損失の認識の判定を行い、減損処理を行うとなった場合は、損失額がいくらになるのかを測定します。損失額がいくらになるのかを測定するためには、将来得ることのできるキャッシュ(回収可能価格)を計算する必要があります。回収可能価格は、使用価値と正味売却価額のいずれか高い方の金額になります。

     

    使用価値とは、その資産を使い続けて得るキャッシュとその資産を売却して得るキャッシュを見積り、現在価値に割引計算した価額のことです。正味売却価額とは、資産や資産グループの時価から処分費用の見込額を控除して求めた金額のことです。減損損失の測定をし、その金額を用いて会計処理を行えば、減損処理の完了です。

    減損処理における会計処理

    ここまでは、減損処理のプロセスについて見てきました。ここからは、減損処理における会計処理について見ていきましょう。

     

    減損処理の会計処理には、資産の価値を直接減額する直接控除方式と間接的に減額する間接控除方式の2つがあります。原則は直接控除方式を用いて処理を行いますが、間接控除方式で処理しても問題ありません。それでは、具体例を見ていきましょう。

     

    例)当社は第一製造部について減損の兆候が把握されたため、検討を重ねた結果、減損処理を行うこととなった。減損の金額は建物100万円、機械装置50万円の合計150万円だった。

     

    ・直接控除方式

    借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
    減損損失 150万円 建物 100万円 減損処理
    機械装置 50万円 減損処理

     

    ・間接控除方式

    借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
    減損損失 150万円 減損損失累計額 150万円 建物・機械装置減損処理

    まとめ

    減損処理とは、投資した資産に対し、投資した金額に見合う金額が回収できないとわかった場合に、その資産の価値を切り下げる会計処理のことです。また、切り下げた価値、つまり損失額を減損損失といいます。

     

    減損処理はプロセスが複雑です。実際に減損処理をしようと考えている場合は、税理士などの専門家に事前に相談しましょう。

    長谷川よう
    会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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