広がる金融機関の「LGBTQカップルの配偶者認定」 そのメリットは? | MONEYIZM
 

広がる金融機関の「LGBTQカップルの配偶者認定」
そのメリットは?

さきごろ、京都信用金庫(京都市下京区)が、住宅ローンを利用する際の配偶者の定義に「同性パートナー」や「事実婚」(婚姻届を提出せずに、婚姻の意思を持って夫婦の実態を有する共同生活をしている状態)も含める対応を開始した、というニュースがありました。大手銀行も含め、こうした対応が徐々に広がりつつあるのですが、当事者には具体的にどのようなメリットが生まれるのでしょうか? ポイントを解説します。

「法律上の夫婦」が原則の住宅ローン

住宅ローンを同居する夫婦2人で組めば、それぞれの収入を合算できるため、単独で借りるよりも多くの融資を受けることが可能になります。このような、いわゆる「ペアローン」には、次の2つのタイプがあります。

 

①2人が債務者になる「並立型」。借入額を収入に応じて分割し、それぞれが別のローンを組んで返済していきます。収入合算は可能ですが、金融機関の手数料などは、単独の場合の2倍が必要になります。

 

②1人が主債務者となり、もう1人が連帯保証人になる「連帯型」。主債務者がローンを返済できなくなった時には、もう1人が支払いを行います。

 

ただ、このように同居者と共同で住宅を購入する(ローンを組む)ことができるのは、法律上の夫婦や家族に限られ、「同性パートナー」や「事実婚」のカップルには認められてきませんでした。

 

金融機関がそのような対応を取るのには、「いざ」という場合に、貸付金を回収できないリスクがあるのも大きな要因です。もしカップルの片方が亡くなった場合、もう一方は法的な配偶者ではないため、法定相続人ではありません。他に相続人がいれば、担保である住宅を残された人が受け継ぐことになるのか、保証はないわけです。仮に亡くなった人が、「パートナーに住宅を譲る」という遺言書を残していたとしても、法定相続人が遺留分(※1)を主張して、いざこざが起こるかもしれません。

 

※1遺留分
遺言書の内容に関わらず、相続人が最低限受け取れる遺産の取り分。

住宅ローン控除も利用できる

こうした状況の下で、同性や事実婚のカップルが家を持とうとする場合には、例えばどちらかの名義で購入してローンを組み、もう一方は「個人的に」返済の一部を負担する、というかたちで同居するしかありません。その状態で購入者が亡くなった場合には、やはり相続人との関係で、家を追い出される可能性もあるでしょう。

 

しかし、LGBTQに対する理解の広がり、「事実婚」の増加などを背景に、説明したような現状を見直す金融機関が登場しました。報道などによれば、2017年にみずほ銀行が同性カップルも配偶者扱いとして、前述の①、②の住宅ローン利用を可能にしたのを皮切りに、三井住友銀行、ソニー銀行、住信SBIネット銀行、楽天銀行、琉球銀行、滋賀銀行、大垣共立銀行などが、同様の取り扱いを開始しています。

 

この「ペアローン」を利用することにより、融資額の上限が引き上げられるだけでなく、パートナーが亡くなった時に住処を失う、といったリスクも回避することができます。

 

また、①のローンの場合は、2人とも住宅ローン控除(※2)の対象になります(②は主債務者のみ)。法律上の夫婦同様、団体信用生命保険(団信)に加入できるようになるのも、大きなメリットと言えるでしょう。団信とは、住宅ローンの債務者が返済期間中に死亡または高度障害状態になった時などに、その保険金で住宅ローンの残高が完済される保険のことです。完済された後、残された人は、住宅ローンの返済が不要になるのです。

 

※2住宅ローン控除
住宅取得などを目的に住宅ローンを組んだ場合、契約時期や入居時期などの要件を満たせば、10年間、年末のローン残高の1%が戻ってくる制度。コロナ禍により、これを13年に延長する特例制度が実施されている。

自治体発行の証明書や公正証書で「ローン可」に

この「ペアローン」を利用する場合に必要になる書類は、基本的には

 

  • 同性パートナー:自治体が発行する「同性パートナーシップ証明書」またはこれに類する証明書
  • 事実婚:「未届けの妻/夫」などの記載のある住民票

 

となっています。

 

「同性パートナーシップ証明制度」は、自治体が同性カップルの関係性を「婚姻相当に認める」制度で、導入した自治体は100を超え、人口の1/3超をカバーしています。2015年11月に東京の渋谷区と世田谷区からスタートしたこの制度が、説明したような金融機関の対応を後押ししたことは間違いありません。

 

ただ、この制度を導入していない自治体ではペアローンが利用できないかというと、そんなことはありません。多くの金融機関では、「合意契約」と相互の「任意後見契約」の公正証書(※3)を提出すれば、利用できることになっています。

 

「合意契約」とは、2人がパートナーとして生活をともにしていくことを誓約し、夫婦に準ずる生活の必要事項(生活費の分担など)を取り決めるものです。また、「任意後見契約」は、認知症などで財産管理ができなくなった場合に、もう一方が後見人となって相手のローン返済事務などに当たることを、あらかじめ決めておくものです。自治体によっては、この2つの公正証書を「同性パートナーシップ証明書」発行の要件にしているところもあります。

 

なお、必要書類の詳細は、金融機関によって異なりますので、申し込みの前に調べるようにしてください。ちなみに、楽天銀行のように、「同性パートナーシップ証明書」などの提出は不要ながら、購入対象の不動産を「スーモカウンター新築マンション」などでの申し込み物件に限っているところもあります。言わずもがなのことですが、2人の収入が基準に満たないなど、審査の結果希望通りのローンが組め回可能性があるのは、法律上の夫婦などの場合と同じです。

 

※3公正証書
2人以上の間における権利や義務に関する契約を法令に定めた方式で公文書として作成した証書のこと。公証役場で公証人が作成する。

まとめ

「同性パートナー」や「事実婚」カップルに、法律上の夫婦と同様の住宅ローンが組めるようにする対応が広がっています。必要書類などの要件は、金融機関によって異なりますから、事前によく調べるようにしてください。

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