介護保険料が上昇を続けている! 今こそ知りたい介護保険料のこと | MONEYIZM
 

介護保険料が上昇を続けている!
今こそ知りたい介護保険料のこと

2021年4月、3年に一度の介護保険料改定が行われました。介護保険制度開始から20年余り、65歳以上の人が支払う月額介護保険料の全国平均は上昇を続け、今回初めて6,000円を超えました。

誰もがいずれは老いて利用する可能性がある介護保険について、基本的なことがらを押さえておきましょう。

介護保険料の全国平均が初めて6,000円越え!上昇を続ける背景とは

介護保険は市区町村によって運営されており、3年に一度介護保険料が見直されます。2021年4月の見直しにより、65歳以上の人が支払う月額介護保険料の全国平均が、初めて6,000円を超えたと報道されました。

 

厚生労働省の集計によると、65歳以上が支払う介護保険料の全国平均は6,014円。介護保険制度が始まった2000年度には2,911円だったので、約2.1倍に膨らんだことになります。

 

制度開始後、介護保険料は上昇を続けています。その背景には、入浴や排せつ、食事の介護をはじめとする介護サービスを受ける人が増えていることにあります。介護サービスに対して介護保険から給付された総額を見ると、2000年度には3.6兆円だったものが2017年度には10.8兆円にまで増えています。この数字は今後も増え続けていくと推測されています。

 

介護保険料は市区町村が決定しているため、住んでいる場所によって介護保険料は異なります。今回の改定では、保険料を支払う高齢者の負担が重くなることを考慮し、保険料を据え置いたり、引き下げたりしている自治体も少なくありません。据え置いた自治体は36.2%、引き下げた自治体は15.2%となっています。

介護保険制度とは?加入について

40歳になると介護保険料を納め始めることになっていますが、そもそも介護保険制度がどのようなものかわからない人も多いのではないでしょうか。ここでは、介護保険制度の概要と加入対象者について解説します。

介護保険制度とはどんな制度?

介護保険制度とは介護が必要な人を社会全体で支える仕組みです。保険料を納めている人(被保険者)が介護を必要とするようになったとき、少ない自己負担で介護サービスを受けられます。介護保険は各市区町村が保険者となって運営し、被保険者が納める保険料と国・自治体が出す公費(税金)が財源です。

 

介護を受ける人は、介護サービスに必要な費用のうち原則1割 を負担し、残りは介護保険の財源から介護サービス業者に介護報酬が支払われます。介護が必要な人を社会全体で支える制度といえます。

介護保険料を納付する対象者

介護保険料を納める対象(被保険者)となるのは、40歳以上の人です。被保険者は年齢によって「第1号被保険者」「第2号被保険者」の2つに分かれます。被保険者の種類によって、保険料の徴収方法や介護サービスを受けるための条件などが異なります。

 

  第1号被保険者 第2号被保険者
対象者 65歳以上の人 40歳~64歳までで医療保険(健康保険組合、市町村の国民健康保険など)に加入している人
保険料 所得などに応じて段階的に保険料を設定(標準は9段階だが、さらに細かく設定している自治体もある) ・サラリーマンなど企業の「健康保険」に加入している人…加入している医療保険の算定方法に基づいて保険料が決まり、事業主と被保険者で半分ずつ負担する
・個人事業主など国民健康保険(国保)に加入している人…加入者の所得や資産、世帯人数などに応じて、世帯単位で保険料を決める
保険料の納付方法 ・年金額が18万円以上の人…年金から天引き
・年金額が18万円未満の人など…納付書払い・口座振替
加入する医療保険と合わせて納付
介護サービスの利用方法 原因にかかわらず、介護保険を運営する市区町村から要介護・要支援認定を受ければ、介護保険を利用して介護サービスが受けられる
 
老化が原因とされる16種類の病気(関節リウマチ、初老期における認知症など)により、要介護・要支援認定を受ければ、介護保険を利用して介護サービスが受けられる

介護保険制度とは?介護サービスの利用について

ここでは、介護保険サービスにはどのようなものがあるのか、またサービスを受けるにはどのような手続きが必要なのか見てみましょう。

介護保険で受けられるサービスとは

介護保険を利用し、介護サービスを受けるには「介護保険被保険者証(介護保険証)」と「介護保険負担割合証」が必要になります。

 

介護保険証は以下のいずれかのパターンで市区町村から交付されます。

 

  • 満65歳の誕生月(第1号被保険者になるとき)
  • 第2号被保険者で要介護・要支援認定を受けたとき

 

介護サービスを利用する際、利用者の負担割合は原則1割ですが、収入が一定額以上の人は2割、3割負担になることもあります。その負担割合が記載されているのが介護保険負担割合証です。介護サービスを受けるには、後述するように要介護・要支援認定を受ける必要があり、介護保険負担割合証は認定を受けた人に交付されます。

介護保険で受けられるサービスにはさまざまなものがありますが、代表的なものには以下のようなものがあります。自宅に住みながら利用する「地域密着型サービス」と施設に入所する「施設サービス」に大別されます。

 

【地域密着型サービス】
●自宅で利用するサービス

  • 定期巡回・随時対応型訪問介護看護…利用者が自宅で生活できるよう、介護職員や看護師が定期的に巡回訪問したり、必要に応じて随時対応を行ったりして、入浴や排せつ、食事の介護などを行う。
  • 夜間対応型訪問介護…夜におむつを変えてほしいときなど、夜間の定期的な巡回を行ったり、利用者が必要とするときに随時対応を行ったりする。

 

●通いで利用するサービス

  • 地域密着型通所介護…定員18人以下のデイサービスセンターなどに通い、食事や入浴サービスの提供を受けたり、レクリエーションなどの機能訓練を行ったりする。
  • 認知症対応型通所介護…認知症の人向けの日帰り施設に通い、食事や入浴サービスの提供などを受ける。

 

【施設サービス】

  • 介護老人福祉施設…「特別養護老人ホーム」とよばれる施設。65歳以上の寝たきりや認知症で在宅介護が難しい人が入所し、介護や食事、入浴などのサービスを受ける。
  • 介護老人保健施設…介護や看護を必要とする、65歳以上の高齢者や認知症の人が一時的に利用する施設。リハビリや食事、入浴などのサービスを受けるが、在宅復帰を前提としている。
  • 介護療養型医療施設…介護職員が配置された病院などが相当する。長期間、療養が必要な高齢者を対象に、医学的な管理のもとで介護やリハビリ、医療を行う。

介護保険サービスを受けるまでの流れ

「介護保険を利用して介護サービスを受けたい」あるいは「親に介護サービスを受けさせたい」と思ったとき、介護保険を運営する市区町村から要介護・要支援認定を受ける必要があります。

 

ここでは、介護保険サービスを受けるまでの流れを見てみましょう。

 

(1)要介護・要支援認定の申請
市区町村の窓口に以下の書類を提出します。

  • 要介護・要支援認定申請書
  • 介護保険証(第2号保険者の場合は医療保険被保険証)
※上記に加えて書類が必要な場合があります。申請窓口で確認しましょう。

 

(2)認定調査
市区町村の認定調査員が、心身の状況などを調査する「認定調査」を行います。

 

(3)主治医意見書
市区町村が、かかりつけ医(主治医)に意見書の作成を依頼します。意見書には病気などに関する所見が記載されます。かかりつけ医がいない場合は、市区町村が指定した医師の診察を受けます。

 

(4)介護認定審査会
認定調査や主治医意見書をもとに、保険・福祉・医療の専門家からなる介護認定審査会が要介護度・要支援度を審査・判定します。

 

(5)認定結果の通知
介護認定審査会の審査結果に基づき、認定結果が申請から原則30日以内に通知されます。認定は要支援1・2、要介護1・2・3・4・5と非該当の8つに区分されます。要介護・要支援の区分により、利用できるサービスやひと月に介護保険で利用できる金額が決まっています。

 

(6)ケアプランの作成
サービスを利用する際は、ケアマネジャー(介護支援専門員)などに相談し、ケアプランを作成してもらう必要があります。ケアプランとは、利用するサービスの種類や回数を記載した計画書です。

 

(7)サービスの利用開始
ケアプランをもとに、サービスを利用します。

 

まとめ

介護保険料は健康保険料と一緒に徴収されているため、制度の仕組みをよくわかっていない人もいるのではないでしょうか。ご家族、あるいはご自身も将来、介護保険のお世話になる可能性があります。この記事を読んでいただいたことを機に、介護保険への関心を深めていただければと思います。

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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