2020年度は“マルサ”が約90億円の脱税を摘発! ビットコイン取引で初の有罪判決も – マネーイズム
 

2020年度は“マルサ”が約90億円の脱税を摘発!
ビットコイン取引で初の有罪判決も

    公開日:
    2021/06/25
     
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    国税庁は、このほど「令和2年度 査察の概要」を公表しました。新型コロナの感染拡大に伴う緊急事態宣言などによる移動制限が影響し、脱税の摘発件数、総額ともに前年度を下回る一方、1件当たりの脱税額はアップしました。「概要」には、いわゆる「貧困ビジネス」やリゾート地における不動産事業に絡んだものなど、社会的に注目された告発事例も列記されています。併せて紹介しましょう。

    告発率は73.5%に

    納税者に対して行われる「税務調査」には、各地の税務署が行う「任意調査」と、全国に11ある国税局(沖縄は国税事務所)が実施する「強制調査」があります。「査察」は後者のことで、令状を持った国税査察官(マルサ)の手で、その名の通り有無を言わせぬ「調べ」が行われます。ちなみに、任意調査の場合は、基本的に日程調整や税理士の同席などが可能。そうしたことが許されないのは、多額の脱税の事実が明白で、その悪質性も高いと判断されたからにほかなりません。

     

    公表された「概要」によると、その査察により2020年度に摘発した脱税は、113件(前年度比52件減)、総額約90億5,000万円(同約29億4,000万円減)でした。そのうち、特に悪質だとして検察庁に告発したのは、83件(同33件減)、脱税額にして約69億3,000万円(同約23億5,000万円減)となっています。ご覧のように、いずれの数字も前年度を下回っており、報道によれば、摘発、告発ともに、脱税額は1972年度の統計開始以来、最も少なかったそうです。

     

    そうなった背景に、新型コロナによる移動制限があったのは明らかでしょう。ただ、告発率(告発件数/摘発件数)は、73.5%(同3.2%増)で2008年以来の高水準になったほか、1件当たりの脱税額は、摘発分が約8,000万円(同約700万円増)、告発分が約8,300万円(同約300万円増)と、いずれも前年度を上回りました。

    「国際事案」などを重点調査

    「概要」では、特に「消費税事案」「無申告事案」「国際事案」「時流に即した事案」などの社会的波及効果が高いと見込まれる重点事案について積極的な調査を行ったとして、具体例も示しながら、それぞれについて説明しています。

     

    (1)消費税事案

    消費税に対する国民の関心が極めて高いことを踏まえ、積極的な取り組みを行った結果、20年度は18件を告発した、としています。うち9件は、消費税の輸出免税制度などを利用した消費税不正受還付事案でした。

     

    〈事例〉
    A社は、国内の金地金取扱業者に金地金を販売(課税取引)していたが、香港法人に販売したと仮装する方法により輸出売上(免税取引)を計上し、不正に消費税の還付を受け、または免れていた。

     

    (2)無申告事案

    納税者の自発的な申告・納税を前提とする申告納税制度の根幹を揺るがす無申告による逋脱犯(※)については、13件を告発した、としています。

     

    〈事例〉

    • B社は、不動産売買に伴う測量、設計及び土地家屋調査業務を行っているが、実質経営者であるCは、売上代金を借名名義の預金口座に入金させ、B社に売上がないよう仮装する方法により所得を秘匿し、法人税の確定申告書を提出せずに、法人税を免れていた。
    • D社は、異業種交流会や節税セミナーなどと称して集めた複数の顧客に対し脱税を持ち掛け、顧客の脱税を指南することにより、多額の報酬を得ていたが、法人税及び消費税の申告義務を認識しながら確定申告を一切せずに納税を免れていた。

     

    (3)国際事案

    消費税の輸出免税制度を悪用した消費税不正受還付事案や、海外に不正資金を隠すなどの国際事案に関しては、20年度は過去5年で最多の27件を告発しています。

     

    〈事例〉

    • 国内において中古自転車を仕入れ、アフリカに輸出していた在留外国人Eは、消費税の輸出免税制度を悪用し、実際の取引に基づかない、過大な金額の輸出免税売上及び仕入税額控除を故意に計上し、不正に消費税の還付を受けたとして告発した。
    • F社は、国内外からダイヤモンド等を仕入れ、宝飾品として製造・加工し、国内の宝飾品販売会社に販売しているが、香港法人に対する架空の原価(材料費)を計上するとともに、香港に開設された同法人名義預金口座に不正資金を送金し、留保するなどの方法により法人税を免れていた。

     

    (4)その他の社会的波及効果の高い事案

    〈事例〉

    • G社ほか3社は、ホームレスやネットカフェ難民等の生活困窮者に宿泊施設を提供し、受給した生活保護費から家賃収入を得ていたグループ法人だが、現金で回収した家賃収入の一部を除外するなどして法人税を免れていた。
    • H社は、北海道ニセコ地区において、外国法人等を相手に不動産取引を行っていたが、借名名義で不動産取引を行い、H社に収入がないよう仮装するほか、虚偽の請求書を作成して架空仕入高を計上する方法により、法人税を免れていた。

     

    ※逋(ほ)脱犯 納税義務者が不正な手段によって,各種の租税を免れる行為が犯罪となる場合をいう。

    告発されると、ほぼ100%有罪に

    「概要」では、告発後、2020年度中に一審判決が言い渡された案件についても述べられており、87件のうち86件に有罪判決が出され、6人に実刑判決が下った、としています。

     

    有罪判決の中には、ビットコインなどの暗号資産取引により得た利益を申告から除外し、所得税を免れていた、として全国初の告発となった事案も含まれています。被告は所得税法違反の罪で、懲役1年(執行猶予3年)、罰金1,800万円の判決を受けました。

     

    また、法人2社の脱税を助け容易にした協力者に対して、法人税法違反の幇助犯(査察事件単独・再犯者)として、全国初の実刑判決(罰金800万円とともに懲役10月)が出されました。過去に同様の罪で有罪判決を受けたにもかかわらず、その刑の執行猶予期間中に犯行に及んだことから、「重罪」となったものです。

    まとめ

    2020年度には、国税局の査察(強制調査)による摘発、告発は、件数、金額とも前年度比ダウンとなりました。ただし、この結果にはコロナ禍が大きく影響しているものとみられ、感染が収束に向かえば、増加に転じる可能性が高いものとみられます。

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