在宅勤務手当の課税扱いとは? 通信費や電気代の補助で一部非課税に! | MONEYIZM
 

在宅勤務手当の課税扱いとは?
通信費や電気代の補助で一部非課税に!

新型コロナウイルスが蔓延している中、テレワークを導入している企業も多くあります。テレワークをしている従業員に対して、在宅勤務手当として一定額支給する場合と、通信費や電気代などの実費を支給する場合とでは、課税方法が異なります。この記事では、在宅勤務手当がどう規定されているのか、在宅勤務費用が非課税になるケースについてご紹介します。

テレワークで支給される在宅勤務手当

在宅勤務手当とは

在宅勤務手当とはテレワークを行っている従業員に対して、必要な経費を会社が負担するための手当のことを指します。この手当が支給される要因は、テレワークを開始するうえで全ての従業員の自宅環境が業務に適しているわけではないためです。このため、自宅でも集中して業務を行えるように環境を整備する費用を支給します。併せて継続してテレワークを行うには、通信費や光熱費などの環境維持費も発生するため、これらの費用を在宅勤務手当として会社が負担するケースも少なくありません。

いつから始まった制度?

テレワークが普及する背景には2019年4月に施行された「働き方改革関連法案」が大きく影響しています。現代の日本では、長時間労働や少子化による労働力の減少が問題視されているため、政府はこれらの問題を解決するための一つの手段として働き方を多様化できるテレワークの導入を推進していました。しかし、テレワークを実施するには様々な問題が生じるという懸念があり、ほとんどの企業で出社勤務が継続されていました。しかし、新型コロナウィルスの感染拡大を受けテレワークの導入が必要不可欠となり、急速にテレワークが普及し始めました。それに伴い、各企業で在宅勤務手当が新設されるようになったというわけです。

平均的な支給額

在宅勤務手当の支給額は企業によって設定している金額が異なります。このため、一概に平均がいくらであるとは言い難いですが、毎月3,000〜5,000円を支給している企業が多いようです。ただし、企業によっては環境整備などにかかった実費とは別に毎月一定額の手当を支給している会社もあるため、実際の支給額は10,000円を上回るケースもあります。

在宅勤務手当が必要なワケ

テレワークを導入する会社が急増

新型コロナウィルスの感染拡大を受けて、2020年には全国に緊急事態宣言が発令されました。国は企業に対して出勤者を7割減少するように要請したため、テレワークを導入する会社が急増したのです。そのことは、2020年12月に内閣府が発表した「第2回 新型コロナウィルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」内に記載されている「【働き方】地域別のテレワーク実施率」からも見受けられます。この資料によると、感染拡大前である2019年12月に東京都23区内でテレワークを実施している企業は17.8%でした。それに対して感染拡大後の2020年5月には48.4%に増加しており、約半年の期間で多くの企業がテレワークを導入したことが分かります。2021年現在でも新型コロナウィルスの収束の兆しは未だ見えず、新しい生活様式としてテレワークを導入する企業が増加することが予測されています。

ネットワーク環境の整備

テレワークを開始するにあたり、最大の課題となるのがネットワーク環境の整備です。自宅で使用するネット環境によっては、さまざまなセキュリティリスクが存在します。例えば、従業員が所有するパソコンの対策が十分に施されていないことで、外部に情報が漏洩するなどが挙げられます。企業貸出のパソコンと違い、個人所有のパソコンはセキュリティ面が万全ではない可能性があります。このため、テレワークを導入するためには、これらの問題を解決するための初期投資を行うことが必要です。

テレワークの維持費と初期費用

前述した通り、テレワークを開始するには維持費と初期費用が必要です。テレワークに欠かせないインターネット回線やデスクや椅子などを揃える必要があるため、まとまったお金を用意しなければなりません。さらに、自宅内の仕事環境を維持するためには、光熱費や通信費などの維持費も必要です。今後、テレワークの定着が予測されており、費用面での従業員の負担が大きくなることが見込まれます。このため、企業は従業員が安心して業務を行えるように、仕事環境を整えるための初期費用や維持費などを支給することが不可欠だと言えます。

従業員のモチベーション向上

在宅勤務手当を支給することで、従業員のモチベーション向上に繋がります。テレワークはいくら居心地の良い自宅であっても、今までと違う環境で同じ業務を行う必要があるため、従業員のストレスが高まりかねません。また、長時間自宅にいることで生活費の増加も懸念されるため、生活面での不安を取り除かなければ満足のいく業務を行いづらくなります。このため、在宅勤務手当を支給することは、従業員の生産性向上に有効な手段だと言えます。

在宅勤務手当は課税対象

所得税の課税対象

在宅勤務手当は、給与の一部と見なされ所得税の課税対象となります。仮に従業員がテレワークに必要な費用として使用しなかった場合でも、その所得は企業に返還する必要がないためです。ただし、「業務で使用する用品の購入」や「通信費などの実費相当額を精算」といった形で支給した場合、非課税になります。

一部非課税枠の設置

電気や水道などの光熱費やインターネットや電話の通信費は業務と私用に分けて計算することが難しく、企業と従業員どちらが費用を負担するのかでトラブルになりやすいです。このため、2021年1月に国税庁は在宅勤務に係る費用の課税範囲を明確化することを目的として、「在宅勤務に係る費用負担等に関するFAQ(源泉所得税関係)」という税務上の指針を公表しました。ここでは、どのような費用が非課税の対象となるのかなどが明確に記されており、在宅勤務手当を支給する際の基準として活用できます。

 非課税対象は通信費と電気代

在宅勤務手当の中で非課税対象となるのは、通信費と電気代です。しかし、これらの費用は業務以外でも私用により発生するお金でもあるため、明確な線引きが必要です。

通信費の非課税額

在宅勤務費用における通信費とは、「電話料金」や「インターネット接続に係る料金」のことを指します。どちらの費用も1ヶ月の基本料金や通信量のうち、在宅勤務日数を割り当てた金額に、「1日のうち睡眠時間を除いた時間に占める労働時間の割合」を乗じた金額が経費に相当し、給与課税の対象外となります。

 

「1日のうち睡眠時間を除いた時間に占める労働時間の割合」の算式は、睡眠時間を除くすべての時間に基本使用料や通信料が発生していると仮定した場合、下記となります。

 

(法定労働時間)/(24時間-平均睡眠)

 

上記を踏まえ、8時間睡眠、8時間労働と仮定した場合に非課税となる通信費の具体的な算式は、下記になります。

(基本料金や通信料、通話料など)×(1ヶ月の在宅勤務日数)/(該当月の日数)×1/2)

上記の算式によらず、より精緻な方法で算出することで非課税の割合を増やすことも可能ですが、算出方法は可能な限り税理士に相談しましょう。

電気代の非課税額

電気代も1ヶ月の基本使用料や電気使用量から「業務として使用した部屋の面積比率」と「在宅勤務日数」を割り出した金額に2分の1を乗じた金額が経費として給与課税の対象外になる、という考え方が示されています。非課税となる電気代の具体的な算式は、下記の通りです。

 

(1ヶ月分の基本料金や電気使用料)×(業務に使用した部屋の床面積)/(自宅の床面積)×(1ヶ月の在宅勤務日数)/(月の日数)× 1/2)

従業員本人が計算

仕事をする上で使用した電気代や通信費などは、従業員自身での計算が必要です。しかし、計算方法は難しく理解することは容易ではありません。そのため、ここでは分かりやすいように計算例をご紹介します。下記の算式は、6月に従業員がワンルーム(自宅の床面積20㎡、内業務に使用した面積は10㎡)の自宅で在宅勤務を20日間行った際に、1ヶ月間の基本料金や通信量が12,000円,電気代が6,000円かかったことを想定して算出しています。

 

  • 通信費の非課税額
    (12,000円)×(20日)/(30日)× 1/2=4,000円
  • 電気代の非課税額
    (6,000円)×(10㎡)/(20㎡)×(20日)/(30日)× 1/2=1,000円

 

仮に端数が生じた際は、1円未満は切り上げて算出する必要があります。

☆ヒント
在宅勤務手当を会社が支給した場合、所得税の課税対象となり、自己負担額が発生してしまいます。とはいえ、在宅勤務手当の全てが課税対象となるわけではなく、通信費や電気代のうち一部の費用は非課税対象と定められています。非課税部分の計算には複雑な項目も必要であるため、顧問税理士に相談すると安心です。

まとめ

今後もテレワークを継続する上で、何の手当も支給がないと従業員の負担だけが増えてしまい、モチベーションの低下に繋がりかねません。そこで、在宅勤務手当を支給する企業が増えてきたのですが、在宅勤務手当は生活に使用した金額を差し引き、仕事で使用した金額を従業員自身に計算させることが必要なため、複雑な計算を従業員に強いてしまうことで戸惑う声も少なくありませんでした。在宅勤務手当の税務上に関する内容で、自社に合った算式、精緻な方法、従業員の経費精算方法などに不安がある方は、いつでも相談できる税理士を探しておくと良いでしょう。

米澤あきひと
大阪市立大学法学部卒。1級FP技能士・宅地建物取引士・司法書士の資格を所持。 卒業後は大手建設会社で営業として勤務しており、その後大手コンサルティング会社に転職。 不動産や税金、建築の専門知識を保有。 経験や知識を活かして、中学生でも分かりやすい記事を心がけています。
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