「確定申告で税務署へ」はもう古い!? 今年の申告で急増した「自宅からe-Tax」 | MONEYIZM
 

「確定申告で税務署へ」はもう古い!?
今年の申告で急増した「自宅からe-Tax」

今年の個人の確定申告(2020年分)では、納税者自身が自宅などからe-Taxで申告書を提出するケースが大幅に増え、確定申告会場で作成・提出する人数と肩を並べました。新型コロナウイルス感染症による移動制限も影響したものとみられますが、日本でも「個人の税務申告は自宅で」の時代が、本格的に到来しそうです。

「自宅から電子申告」は135万人増加

国税庁は、このほど「令和2年分の確定申告状況等について」を報道発表しました。そのトピックスとして、自宅でのe-Taxの利用状況を取り上げています。

 

e-Taxは、正式には「国税電子申告・納税システム」といい、個人の場合は、所得税・消費税・贈与税の確定申告を、国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーなどを利用して、パソコンやスマホから行うことができます。わざわざ税務署の窓口などに出かけることなく、自宅や職場などから手続きできるほか、生命保険料控除の証明書などの添付書類の提出が省略できる、還付(※1)がスピーディーに行われる、提出期限中は基本的に24時間いつでも利用できる、といったメリットがあります。

 

今年の確定申告では、このe-Taxを使って自宅などから申告書を提出した人は、税理士による代理送信を含め、所得税で789万9,000人(対前年比25.3%増)、贈与税で21万8,000人(同7.4%増)となりました。

 

さらに、このうち自宅などから納税者自身により申告した人が、前年比135万人増えて321万人に。確定申告会場でe-Taxまたは書面により申告書を作成・提出した人は36万人減の345万人でしたから、ほぼ肩を並べる水準になりました。

 

 

スマホを使ったe-Tax申告は前年比約2.2倍!

自宅からパソコンではなくスマホを使ってe-Taxで申告した人は、前年比約2.2倍の102万人と、自分で申告した人の1/3近くを占めました。マイナンバーカードを利用して「スマホ申告」したのは43万人で、こちらは同約7倍と、さらに高い伸びとなっています。

 

こうした自宅からの申告増加の背景に、新型コロナの影響があるのは明らかでしょう。今年の確定申告は、申告期限が延長されるとともに、国税庁がe-Taxの利用を積極的にアピールしました。

 

加えて、20年分の確定申告から、電子申告または電子帳簿保存を行わない場合(文書による申告)は、青色申告特別控除額が、65万円から55万円に減額されることになりました。こうしたことも“追い風”となったものと思われます。

 

メリットの多い電子申告を選択した人が、再び文書に戻ることは、通常考えられません。今後、新型コロナの感染が収束に向かったとしても、「e-Taxを利用して家から申告する」という流れは、加速していくのではないでしょうか。

 

ただし、「手軽で便利」なことだけに目を奪われていると、うまく節税できなかったり、申告のミスにつながったりする危険もあります。売上規模が大きくなってきたら、税理士のサポートなども検討する必要があるでしょう。

 

※1確定申告による還付
源泉徴収などによって払い過ぎた税金の返還を受けること。

コロナ禍で副業が増加?

2020年分の確定申告の内容についても、特徴的だった点を、国税庁の発表からみておきましょう。

●届け出人員は微増

所得税の確定申告書の提出人員は2,249万人(対前年比2.1%増)、そのうち申告納税額がある人は657万人(同4.3%増)で、その所得金額の総額は42兆5,497億円(同2.2%増)、申告納税額は3兆1,653億円(同1.6%減)となっています。

 

申告書の届け出がわずかながら増えたのは、コロナ禍で「本業」が厳しくなったために、副業を始めた人が一定数いたため、という見方もあります。社員の副業を容認する企業が増えてきた、といった状況も反映されたのかもしれません。

 

なお、サラリーマンが副業をした場合、所得が年間20万円を超えた場合に、確定申告が必要になります。

●譲渡所得は、土地などがダウン、株式はアップ

⼟地などの売買により譲渡所得を申告した人は50万4,000人(同3.9%減)で、そのうち所得⾦額がある人は33万4,000人(同4.6%減)、その所得⾦額は4兆2,160億円(同13.6%減)でした。

 

一方、株式などの譲渡所得の申告人員は、112万5,000人(同13.0%増)でした。そのうち、所得⾦額がある人は47万8,000人(同25.4%増)で、その所得⾦額は3兆5,053億円(同7.2%増)となりました。前年よりも大幅に伸びたのは、株式市場の活況などの結果とみられています。

●個人事業主の消費税納税額は、増加

個人事業主の消費税の申告件数は、112万4,000件(同0.9%増)、申告納税額は6,235億円(同2.8%増)となりました。2019年10月に消費税の税率(標準税率)が8%から10%に引き上げられ、20年はその影響をフルに受けたためとみられています。

●贈与税の申告件数は、ほぼ横ばい

また、贈与税の申告書の提出人員は、48万5,000人(同0.5%減)でした。そのうち、納税額がある人は35万4,000人(同0.2%減)で、その申告納税額は2,772 億円(同10.9%増)となっており、前年と⽐較すると、申告人員と納税人員はほぼ横ばい、納税額は増加となりました。

 

課税方法(※2)別にみると、「暦年課税」を適⽤した申告人員は44万6,000人(同0.1%減)、申告納税額は2,177億円(同0.2%増)となり、前年比ほぼ横ばいでした。一方、「相続時精算課税」を適⽤して申告した人は3万9,000人(同5.7%減)と、前年より減りましたが、その申告納税額は595億円(同82.1%増)となり、大幅に増加しました。

 

※2贈与税には、1月1日から12月31日までの1年間に贈与を受けた財産の価額から基礎控除額(110万円)を差し引いたものに対して課税される「暦年課税」と、受贈者が2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受け、贈与者が亡くなった時に相続税で「清算」する「相続時精算課税」がある。

まとめ

2020年分の個人の確定申告では、自宅などからe-Taxを利用して申告する人が大幅に増えました。中でもスマホから申告するケースが増加しており、今後もこの傾向が加速するのは間違いなさそうです。

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