オリンピックの報奨金は課税される? オリンピックの報奨金の税金とは – マネーイズム
 

オリンピックの報奨金は課税される?
オリンピックの報奨金の税金とは

    公開日:
    2021/09/09
     
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    東京オリンピックが終わり、多くの日本の選手がメダルを獲得しました。メダルを獲得した日本人選手には、JOCや競技団体などから報奨金が支払われます。

     

    では、メダルを獲得した日本人選手が受け取る報奨金には税金がかかるのでしょうか。ここでは、選手が受け取るオリンピックの報奨金と税金の関係について解説します。

    オリンピックのメダリストの報奨金制度とは

    はじめに、オリンピックのメダリストの報奨金制度について見ていきましょう。日本のオリンピック(パラリンピック)や加盟団体、選手を統括するJOC(日本オリンピック委員会)やJPSA(日本障がい者スポーツ協会)では、国際競技力の向上を図るなどの目的から、オリンピック競技大会、パラリンピック競技大会のメダリストに対して、報奨金を支給しています。

     

    JOCやJPSAの報奨金は、メダルごとに次のようになっています。

     

    協会名 金メダル 銀メダル 銅メダル
    JOC 500万円 200万円 100万円
    JPSA 300万円 200万円 100万円

     

    また、JOCやJPSAとは別に、競技団体や企業からの報奨金が出ることもあります。例えば、陸上競技の場合、日本陸上競技連盟から、金メダルをとれば2,000万円、銀メダル1,000万円、銅メダル800万円(入賞者にも報奨金あり)の報奨金を選手が受け取ります。また、野球の場合、NPBエンタープライズから金メダルで500万円、銀メダルで200万円、銅メダルで100万円の報奨金が出ます。

     

    このように、オリンピックに出場した選手はメダルを獲得すれば、報奨金を受け取ることができます。

    オリンピックの報奨金は課税される?

    オリンピックに出場した選手は、メダルを獲得すればJOCやJPSA、競技団体や企業から報奨金を受け取ります。ここで気になるのが、報奨金は課税されるのかということです。

     

    実は、オリンピックの報奨金は報奨金を支払う団体によって、税金の課税・非課税が異なります。そこで、ここではオリンピックの報奨金と税金の関係を見ていきましょう。

    JOCや競技団体の報奨金は非課税

    オリンピックの報奨金として一般的なものがJOCやJPSAからの報奨金と、日本陸上競技連盟やNPBエンタープライズなどの競技団体からの報奨金です。オリンピックの報奨金については、法律で規定があります。

     

    所得税法第9条1項14号では、JOCやJPSAからの報奨金や、JOCやJPSAに加盟している競技団体から支払われる報奨金(政令で定めるものから交付されるもので財務大臣が指定されたもの)については、所得税が非課税とされています。そのため、原則JOCやJPSA、競技団体の報奨金は非課税です。

     

    ただし、JOCやJPSAと競技団体では、非課税の範囲が異なります。JOCやJPSAからの報奨金は非課税の上限がなく、すべての金額に税金が課されません。一方、競技団体からの報奨金には、金メダルで500万円、銀メダルで200万円、銅メダルで100万円までの非課税となっています。そのため、この金額を超える報奨金を受け取った場合は、超えた部分に税金がかかります。

    企業からの報奨金は課税

    オリンピックの選手の中には、企業に所属してスポーツ活動を行っている人もたくさんいます。企業によっては、自社に所属する選手がオリンピックで優秀な成績を残した場合に、報奨金を支払うこともあります。

     

    企業からの報奨金については、企業により報奨金の金額が異なることや、そもそも報奨金を出さない企業もあるため、企業からの報奨金を非課税としてしまうと不平等が生じてしまいます。そのため、企業からの報奨金は所得税などが課税されます。

     

    所得税では、収入の種類によって10の所得区分に分けて、所得金額や税金を計算するのですが、企業からの賞金や報奨金による収入は「一時所得」もしくは「給与所得」に該当します。

     

    一時所得とは、営利を目的としたり、資産の売却などに関係したりしない一時的な所得のことです。企業からの報奨金も一時的なものであるため、給与所得に該当しないものについては、一時所得になります。そのほかに、懸賞や福引きの賞金品や競馬などの払戻金も一時所得です。一時所得の金額は、次の計算式で求めます。

     

    一時所得金額=収入金額-経費(収入を得るために支出した金額)-特別控除額50万円

     

    オリンピックの報奨金には、原則として経費(収入を得るために支出した金額)はありません。
    そのため、例えば企業から1,000万円の報奨金が出た場合の一時所得の金額は、以下のようになります。

     

    一時所得金額=収入金額1,000万円-特別控除額50万円=950万円

     

    一時所得金額950万円に対して税金が課されます。

     

    日本の所得税は、所得金額が高ければ高いほど、税率も高くなる累進課税制度を採用しています。所得税率は、5%~45%の間で7段階に区分されています。一時所得金額は、ほかの所得金額と合算し、合算後の所得金額により税率が決まります。

     

    ただし、ほかの所得金額と合算する場合は、一時所得金額を1/2にします。もし、所得税率が20%だった場合、上記の例では単純計算で一時所得金額950万円×1/2×20%=95万円の税金が課されます。

    オリンピックの報奨金における課税の歴史

    見てきた通り、オリンピックの報奨金は、報奨金を出す団体などによって課税されるかどうかなどが異なります。なぜ、複雑な課税関係になったのかというと、今までのオリンピックの報奨金にかかわる課税の歴史に起因します。

     

    オリンピックで報奨金が支払われることになったのは、実はそんなに昔のことではありません。昔は、アマチュアリズムの観点からオリンピックで報奨金を支払うのが敬遠されてきました。

     

    しかし、プロの選手のオリンピック参加など、時代の流れとともにオリンピックも変化してきます。1974年には五輪規定からアマチュア規定が削除され、日本でも1992年のアルベールビルから、メダリストの報奨金制度が創設されました。これは、1988年のソウルオリンピックで、日本のメダル数が激減したことがきっかけでできた制度で、資金を活用した選手や競技の強化をすることを目的としています。

     

    では報奨金制度の創設当時、オリンピックの報奨金にかかわる税金はどうなっていたのでしょうか。実は、報奨金制度の創設当時は、JOCの報奨金に対してもすべて税金が課せられていました。

     

    JOCの報奨金が非課税になったきっかけは、バルセロナオリンピックです。バルセロナオリンピックでは、競泳の岩崎恭子さんが金メダルを獲得しました。もちろんJOCから報奨金が支給されたのですが、JOCの報奨金は税金が課されるため、当時、未成年だった岩崎恭子さんも報奨金に対して税金を納めざるを得ませんでした。

     

    このことは日本中で大きな議論となり、世論から反発も招いたことから報奨金は非課税になりました。また、JOCに加盟する競技団体からの報奨金も一定金額までが非課税となっています。

     

    しかし、企業からの報奨金については、平等性の観点などから、課税対象のままとなっています。これらの経緯から、今もJOC・JPSA、競技団体、企業、それぞれからの報奨金の課税関係が異なっています。

    まとめ

    東京オリンピックでは、多くのアスリートが良い成績を残し、メダリストも多く誕生しました。この背景には、メダリストへの報奨金制度も一因となっています。

     

    現在は、JOC・JPSA、競技団体、企業、それぞれからの報奨金の課税関係は異なっていますが、これは今までの報奨金制度の過程から来ているもので、今後も変更される可能性もあります。

     

    これからのオリンピックでも多くの日本人選手が良い成績を残せるためにも、さらによりよい制度にしていくことが重要となるかもしれません。

    長谷川よう
    会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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