コロナ禍での経営悪化に備えて知っておきたい 整理解雇の要件とは – マネーイズム
 

コロナ禍での経営悪化に備えて知っておきたい
整理解雇の要件とは

    公開日:
    2021/09/17
     
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    長引くコロナ禍はいまだ終わりが見えず、会社の経営悪化から、整理解雇を通告される労働者が増えています。
    会社としても苦渋の決断かもしれませんが、労働者にとって、整理解雇は生活の基盤を揺るがす一大事です。
    この記事では、今後ますます増加するおそれがある整理解雇について解説します。

    そもそも解雇とはどのようなものか

    解雇の定義と解雇制限について

    解雇とは、一言で言えば、会社からの申し出による労働契約の終了です。

     

    解雇と似た制度に、退職勧奨があります。退職勧奨は会社が「退職してくれないか」と勧め、促すものであり、労働者には拒否する権利があります。

     

    それに対して、解雇は会社が一方的に申し渡すものであり、労働者に拒否する権利はありません。とはいえ、会社が無制限に、無条件に、自由に、労働者を解雇することはできません。

     

    労働契約法第16条には、以下のように明記されています。

    解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。

     

    また、解雇の理由や時期などについて、解雇制限も設けられています。主な解雇制限を、根拠となる法律の条文と共に、下記にいくつか挙げておきます。

     

    • 業務上の災害による療養のための休業期間、およびその後の30日間の解雇
    • 産前産後の休業期間、およびその後の30日間の解雇
      労働基準法第19条

      労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が(略)休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。

    • 労働組合の組合員であることや、労働組合を結成しようとしたことを理由とする解雇
      労働組合法第7条

      労働者が労働組合の組合員であること、労働組合に加入し、若しくはこれを結成しようとしたこと若しくは労働組合の正当な行為をしたことの故をもつて、その労働者を解雇し、その他これに対して不利益な取扱いをすること

    • 育児休業を申し出たことや、育児休業を取得したことを理由とする解雇
      育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第10条

      労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。

    守るべき解雇の手順について

    解雇を行う際には、守るべき解雇の手順があります。

     

    前項で述べた解雇制限に労働者が該当せず、解雇に合理的な理由があり、社会通念上相当であるとしても、会社が好き勝手なやり方で解雇ができるわけではありません。

     

    労働基準法第20条には、以下のように明記されています。

    使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。

     

    つまり、解雇については、以下のどちらかを満たしていなくてはいけません。

    • 30日以上前に解雇を予告する
    • 30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払う

     

    ただし、労働基準法第20条第2項には、こうあります。

    前項の予告の日数は、一日について平均賃金を支払つた場合においては、その日数を短縮することができる。

     

    つまり、解雇の予告日から解雇日までの日数が30日に満たなかったとしても、その不足する日数分だけ、解雇予告手当を支払えばいいのです。

     

    たとえば、解雇の予告が解雇日の20日前である場合、足りない10日分について、平均賃金×10日を解雇予告手当として支払えば、労働基準法第20条を満たすことになります。

     

    また、労働者が解雇の証明書を請求した時は、会社はすみやかにこれを交付しなければいけません。

    この点は、労働基準法第22条に明記されています。

    労働者が、退職の場合において、(略)証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

    整理解雇とはどのようなものか

    整理解雇の4要件について

    整理解雇とは、不況や経営悪化などの理由から会社が行う、人員削減のための解雇です。

     

    整理解雇には、俗に言う「整理解雇の4要件」が定められています。これらを満たしていなければ、整理解雇は有効とは認められません。

     

    • 人員削減の必要性
      倒産寸前であるなど、整理解雇による人員削減をしなければいけないという経営上の必要性が本当にあるか。
    • 解雇回避の努力
      配置転換や希望退職者の募集、賃金の引き下げなど、整理解雇を回避するための努力を会社はしたか。
    • 人選の合理性
      整理解雇の対象者を選ぶ基準は客観的かつ合理的ものであるか。また、基準に基づいて公正に運用されているか。
    • 解雇手続の妥当性
      整理解雇の必要性や、その時期、方法、人選の基準などについて、労働者が納得できるよう、十分に説明をしたか。

    整理解雇を言い渡されたら4要件について確認する

    万一、整理解雇の対象となり、会社から整理解雇を通告された時は、前項でご紹介した4要件を満たしているか、かならず確認するようにしましょう。

     

    というのも、整理解雇についての裁判で、労働者側の主張が認められて解雇が無効となった判例もあるからです。

    下記にそのいくつかを挙げておきましょう。

     

    • 古沢学園事件
      事業の縮小を理由とする整理解雇に対して、人員削減の必要性がないとして、整理解雇が無効とされた。
    • あさひ保育園事件
      園児の減少を理由とする整理解雇に対して、希望退職者の募集などの手続きもなく行われたとして、整理解雇が無効とされた。
    • 国際信販事件
      部門の廃止を理由とする整理解雇に対して、その手続きが正しく行われていなかったとして、整理解雇が無効とされた。
    • 高松重機事件
      経営悪化を理由とする整理解雇に対して、その基準に合理性がなく、労働者側との協議も不十分だったとして、整理解雇が無効とされた。

    整理解雇をめぐる労働者の対応

    整理解雇については、どこに相談すればよいか

    自分が整理解雇を申し渡された時、それが「整理解雇の4要件」を満たしたものであるか否か、判断に迷うこともあるでしょう。

     

    生じた疑問に関して、法律のプロフェッショナルに相談したいと考えるかもしれません。

    整理解雇について、相談できるところをいくつかご紹介します。

     

    • 労働基準監督署
      各都道府県に設置されており、所在地や電話番号は厚生労働省のホームページに掲載されています。
    • 総合労働相談コーナー
      各都道府県労働局や労働基準監督署に設置されており、所在地や電話番号は厚生労働省のホームページに掲載されています。
    • 総合労働相談所
      各都道府県の社会保険労務士会に設置されており、共通ダイヤルも用意されています。総合労働相談所のリストは、全国社会保険労務士会連合会のホームページに掲載されています。
    • 日本司法支援センター(法テラス)
      各都道府県に事務所が設置されており、電話やメールでの問い合わせにも対応しています。

    整理解雇を不当とした訴え

    前述したように、会社から通告された整理解雇が不当なものであるとして、労働者が訴え、それが認められたケースがあります。

     

    このコロナ禍における整理解雇でも、無効となった例がすでに存在します。整理解雇にまつわる法的な対応の例として、1件ご紹介します。

     

    • 経緯:コロナ禍での経営悪化を理由として、観光バス会社が運転手を整理解雇。運転手がこれを不服とし、雇用関係の確認、および未払賃金の支払いを求めた。
    • 結果:福岡地裁は、解雇は無効であるとし、会社から運転手に約18万5千円を支払うように命じた。
    • 根拠:福岡地裁は、人員削減の必要性は認めたものの、会社が希望退職者の募集もせず、人選の基準など、整理解雇についての十分な説明もしなかったことから、「客観的な合理性を欠いて、社会通念上相当とは言えない」とした。

     

    「整理解雇の4要件」に関して言えば、このケースは「人員削減の必要性」は満たしていても、「解雇回避の努力」「人選の合理性」「解雇手続の妥当性」を満たしていなかったと言えます。

    まとめ

    この記事でご紹介した整理解雇を無効とする事例は、単に、会社の知識不足や認識の誤りから生じたものもしれません。

     

    ですが、コロナ禍のどさくさに紛れて、不当解雇を行おうとする事業主がいないとも限りません。

    雇用関係を維持するためにも、労働者も正しい知識をもって、自分で自分を守るという意識が必要でしょう。

    サガアサコ
    長年のキャリアのなかで、総務・労務関係の実務経験は15年以上に。
    社会保険労務士の資格取得済み。現在は、知識と経験を活かして、フリーランスのWebライターとして活動中。
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