新型コロナで発生した個人事業主の赤字 税務上の扱いは「青色申告」か「白色申告」かで違います – マネーイズム
 

新型コロナで発生した個人事業主の赤字 税務上の扱いは「青色申告」か「白色申告」かで違います

    公開日:
    2021/10/15
     
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    コロナ禍の長期化により、赤字(損失)が発生した個人事業主は少なくないでしょう。その場合、損失金額を翌年以降の黒字、あるいは前年の黒字と相殺できるのをご存知ですか? 基本的に確定申告を「青色申告」で行っている事業者に適用されますが、「白色申告」でもOKの場合があります。その違いを含め、事業所得の「繰越控除」、「繰戻還付」について解説します。

    そもそも「青色申告」とは?

    事業所得などの確定申告の方法には、「青色申告」と「白色申告」があります。青色申告は、複式簿記という方法の帳簿付けが義務付けられています。一方、白色申告は簡易帳簿で可とされていて、申告の際に提出する書類も少なくて済みます。

     

    明らかに「やることが多い」青色申告ですが、そのぶんメリットもあります。その1つが、損失金額の繰越し、繰戻しが可能なことなのです。新型コロナで予期せぬ赤字に陥った場合などには、ぜひ活用すべきでしょう。

    青色申告の事業者が赤字になったら

    赤字金額を3年間繰越せる

    損失の繰越から説明します。赤字とは、経費などの支出が収入を上回る状態を言います。個人事業主の支払う所得税は「所得」にかかる税金ですから、それがゼロになれば、その年は所得税が課税されません。しかし、実際にはゼロではなくマイナス(持ち出し)の打撃を被っているわけですから、仮に翌年黒字化しても、その金額にストレートに課税されてしまうと、事業の存続が危うくなるかもしれません。

     

    そこで、その年に生じた赤字を翌年以降に繰越して、黒字と相殺(控除)することが認められているのです。これを「繰越控除」といいます。繰越は3年間「有効」です。仮に今年(2021年)が赤字決算になったら、22年~24年の期間、繰越すことができます。

     

    イメージとしては、

    ◆今年1000万円の損失発生

    • 翌年400万円の黒字……全額を控除して所得税ゼロ→損失繰越額600万円
    • 2年後450万円の黒字……全額を控除して所得税ゼロ→損失繰越額150万円
    • 3年後500万円の黒字……150万円を控除して350万円に所得税課税

    ということになるでしょう。

     

    この繰越控除は、確定申告時に、申告書とともに必要書類を提出すれば受けられます。

    前年に繰戻すこともできる

    一方、赤字は前年の黒字と相殺することも可能です。そうすることで、前年の所得が減少し、所得税の「払い過ぎた」ぶんを返して(還付)もらえるのです。これを「繰戻還付」と言います。控除と違い、すぐに手元に現金が入ってきますから、資金繰りなどが助かるというメリットがあります。

     

    繰戻還付は、繰越控除と「併用」することができます。例えば、前年が500万円の黒字、今年700万円の赤字だったら、損失のうちの500万円を繰戻し、残る200万円を繰越控除に回せるわけです。

    注意すべき点もある

    事業が苦しい中でありがたい仕組みですが、頭に入れておくべきこともあります。

     

    • 繰越控除の注意点
      • 節税という経済効果が出るのは、赤字の当期ではなく、翌年からになります。
      • 翌年以降も赤字が続くような場合には、節税効果は望めません。
    • 繰戻還付の注意点
      • 前年(黒字と相殺する年)も青色申告している必要があります。
      • 還付請求に対する税務署からの問い合わせや、場合によっては税務調査(※)が行われる可能性があります。

     

    ※税務調査
    国税局や税務署が、納税者の税務申告が正しいかどうかをチェックするために行う調査。税務署が行う任意調査と、国税局査察部が行う強制調査がある。

    白色申告の事業者が赤字になったら

    繰戻還付はできない

    では、白色申告の事業者が赤字になった場合には、どのような扱いになるのでしょうか? 残念ながら、繰戻還付はできません。一方、「事業用資産に生じた災害による損失等」については、その損失額を翌年以後3年間にわたって繰越して、各年分の所得金額から控除することができます。つまり、繰越控除については、条件付きで可能になるということです。

    コロナ禍で対象となる損失とは?

    実は、新型コロナに関連した損失も、その条件に当てはまる場合があります。国税庁は、次のような見解を示しています。

     

    今般の新型コロナウイルス感染症に関連した「事業用資産に生じた災害による損失等」については、次のとおり、取り扱って差し支えありません。

     

    〔災害により生じた損失等(翌年以後に繰り越される損失等)に該当する例〕

    • 飲食業者等の食材(棚卸資産)の廃棄損
    • 感染者が確認されたことにより廃棄処分した器具備品等の除却損
    • 施設や備品などを消毒するために支出した費用
    • 感染発生の防止のため、配備するマスク、消毒液、空気清浄機等の購入費用
    • イベント等の中止により、廃棄せざるを得なくなった商品等の廃棄損
    ※「災害により生じた損失等」とは、棚卸資産や固定資産に生じた被害(損失)に加え、その被害の拡大・発生を防止するために緊急に必要な措置を講ずるための費用が該当します。

     

    〔災害により生じた損失等(翌年以後に繰り越される損失等)に該当しない例〕

    • 客足が減少したことによる売上げ減少額
    • 休業期間中に支払う人件費
    • イベント等の中止により支払うキャンセル料、会場借上料、備品レンタル料
    ※上記のように、棚卸資産や固定資産に生じた被害の拡大・発生を防止するために直接要した費用とは言えないものについては、「災害により生じた損失等」に該当しません。

     

    以上をまとめたのが、次の表です。

     

    青色申告
    (災害による損失かどうかを問わない)
    白色申告
    災害損失 災害損失以外
    繰戻還付
    〔1年繰り戻し可〕  (注1)
    ×
    繰越控除
    〔3年繰り越し可〕  (注1)

    〔3年繰り越し可〕
    ×
    (注2)
    注1:青色申告者の繰戻還付(純損失の繰戻し)及び繰越控除(純損失の繰越控除)については、災害損失とそれ以外の損失で取扱いは変わらず、純損失の全額が繰戻還付及び繰越控除の対象となる。また、純損失の金額の全部又は一部を前年分に繰戻し、繰り戻さなかった損失の金額を翌年以後に繰り越すことも可能。

     

    注2:変動所得の金額の計算上生じた損失の金額は繰越可能。

    まとめ

    個人事業主の所得に赤字が発生した場合には、税の繰越控除、繰戻還付を利用することができます。白色申告の場合でも、新型コロナ関連で繰越しが認められる場合があります。不明な点がある場合には、税理士に相談してみましょう。

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