【終活のすすめ】よりよい「お別れ」のために 知っておきたい葬儀の基本と最新トレンド | MONEYIZM
 

【終活のすすめ】よりよい「お別れ」のために
知っておきたい葬儀の基本と最新トレンド

終活を考えている方、いずれ「喪主」を務めることになる人。双方にとって、どんな葬儀にしたらいいのか、何をすべきなのか、わからないことも多いはずです。よりよい式にするためには、まずその基本や最近の流れを押さえておく必要があるでしょう。コロナ状況下、そしてアフターコロナの葬儀について、あらためて考えてみることにします。

備えておくべき基礎知識

積極的に終活を考える人でも、葬儀の具体的なやり方については、「まだいいか」と後回しにしがちです。でも、しっかり決めておかなかったために、故人の願いがかなえられなかったり、親族同士でトラブルが発生したりすることもあるのです。そんなことにならないためにも、まず葬儀の“イロハ”と注意すべき点について押さえておきましょう。

葬儀の形式は?

昔は、葬儀といえば、お寺や葬儀場で通夜をやり、翌日葬儀・告別式があって、式には親族のほか仕事関係や同窓生などがたくさん集まって、という形のほぼ一択でした。しかし、今は「家族葬」や「直葬」など、形式は多様化しています。

 

  • 一般葬
    通夜と告別式を2日にわたって行う、「伝統的な」葬儀です。
  • 家族葬
    その名の通り、家族(配偶者、子ども、孫)だけで行う葬儀です。亡くなった人の兄弟姉妹や、親しかった人が加わることもあります。より密度の濃い葬儀を、低コストで行うことができます。
  • 一日葬
    通夜を行わず、1日で葬儀を終える方法で、家族、参列者双方の負担を減らすことができます。また、式場や食事、お布施などの費用を節減することができるというメリットもあります。
  • 自宅葬
    自宅で葬儀を行えば、式場の都合に関係なく、いつでも故人を送ることができ、やはり費用の節減にもなるでしょう。思い出の場所から見送れるのも、メリットです。ただ、参列者の人数によっては、準備が大変になります。
  • 直葬
    セレモニーなどは行わず、ご自宅や病院などから火葬場に直接ご遺体を搬送します。最も費用がかからず、最後に棺に花を入れてお別れすれば、故人へ心を込めたお見送りが出来ます。
  • オンライン葬儀
    葬儀をインターネットで配信し、リモートで参列します。新型コロナ感染拡大の状況下で、利用が広がっています。

 

「墓地、埋葬等に関する法律」など法律の縛りはありますが、葬儀のやり方は自由です。故人や家族の希望に沿った、オーダーメイドの式をサポートしてくれる葬儀社もあります。

宗教・宗派の問題は?

日本の葬儀で最も多いのは、「仏式」です。菩提寺(先祖代々の墓がある寺)があれば、その菩提寺のご住職か同じ宗派の作法に従って式を行うのがマナーです。

 

菩提寺がない場合には、葬儀社などに頼んで、僧侶を呼ぶことができます。もし、故人の宗派が不明な場合は、仏壇の本尊や先祖の位牌、墓に刻まれた戒名などを写メしておけば、そこから辿ることもできます。

 

一方、近年は、宗教にとらわれない「無宗教葬」や「お別れの会」も増えています。ホテルの一室などで、好きだった花を飾ったり、音楽をかけたりしながら、故人を偲ぶわけです。ただし、通常、ホテルでは遺骨の持ち込み、焼香など出来ない場合が多く、注意が必要です。

亡くなってから火葬まで

次に、一般葬を例に、葬儀の流れを見ておきましょう。

 

  • ①逝去
  • ②霊安室(病院などの場合)
  • ③搬送、安置
  • ④葬儀社と打ち合わせ
  • ⑤納棺
  • ⑥通夜・告別式
  • ⑦火葬

 

1つのポイントは、③「安置する場所」です。病院で亡くなった場合は、一度自宅に帰してあげたい、と考えるかもしれません。家にその場所がない場合などには、直接斎場などに搬送してほしいということになるでしょう。あらかじめそれを決めておいて、スムーズに搬送できれば、家族には葬儀の方法などについて、いったん考える時間ができるのです。

 

病院で葬儀社を紹介されることもあります。言われるまま葬儀を行って、内容やコスト面で不満が残った、というのもよく聞く話です。とりあえず安置場所までの搬送をその業者に依頼した場合でも、そこから先を別の葬儀社に切り替えることは可能なことも、頭に入れておいてください。

費用はどれくらい?

葬儀にいったいどれくらいお金がかかるのかも、気になるところです。日本消費者協会がアンケート調査を基に算出した全国平均は、195万7,000円(2017年調査)。ただし、説明したように、現代の葬儀にはさまざまな形式があり、「どこでやるか」「参列者は何人か」などによって、コストは大きく違ってきます。ちなみに、最もお金のかからない直葬だと、30万円程度になるようです。

 

同じ規模や中身でも、費用に差が出ることもあります。火葬場を併設した斎場ならば、「公営」だろうと思われがちですが、実は「民営」の施設もあります。その場合、式場の利用料、火葬料などを合計した金額は、公営に比べて最大で5倍、数十万円高額になるのです。

 

ですから、具体的な費用に関しては、葬儀の中身が決まってからでないと、明確なことは言えません。むしろ、「やり方によっては費用を抑えられる」という発想を持つのがいいでしょう。

葬儀のトレンドをつかむ

コロナ下での葬儀について

新型コロナ感染拡大のために、やむなく家族葬や直葬にするケースも多くあります。また、オンラインによる葬儀という新たな形式も生まれました。状況に合わせて活用を考えましょう。

 

一方、新型コロナに感染して亡くなった場合、ひと頃は「家族の面会も許されずに火葬される」状況でした。現在は、その部分はやや緩和されており、厚生労働省・経済産業省の「新型コロナウイルス感染症により亡くなられた方及びその疑いがある方の処置、搬送、葬儀、火葬等に関するガイドライン」(2020年7月29日)でも、葬儀について、「今後の社会状況の変化や遺族等の方の意向を踏まえ、執り行うことが可能かどうか検討してください」などとなっています。

 

ただし、現場の火葬場や自治体は感染拡大に対する警戒感が強いのも事実。家族が実際に面会できるかどうかは、ケースバイケースというのが実情のようです。

高まる「近しい人間で」というニーズ

「葬儀の多様化」は、「家族など本当に親しい人間のみで、形式にとらわれない内容の濃い式に」という意識を反映したものと言えるでしょう。費用面でもメリットが大きい家族葬、一日葬、自由葬、直葬といった形式は、コロナ終息後も定着し、徐々に増えていくものと思われます。

事前の話し合い、準備がカギ

どんなスタイルで、誰を呼ぶのかを決める

現代の葬儀が、意外に「自由」なのを理解いただけたでしょうか。ただし、選択肢が増えたぶん、生前にどれにするのかを選んでおく必要があるということにもなります。決めることは、主に2つ。「どんな形式で、誰を呼ぶのか」です。

 

希望を叶えるためには、家族にその意思を伝える必要があります。家族が迷わないよう、直接話し合っておくのがベスト。具体的な中身は、エンディングノートなどに書き残すのもいいでしょう。

葬儀社も決めておきたい

喪主などに代わって、火葬までの全体の流れを取り仕切るのが葬儀社です。本人が亡くなってからあたふたと決めると、サービスに難があったり、予想以上にコストが膨らんだりといった問題も生じやすくなります。葬儀社の決定も終活プログラムにしっかり組み込んで、事前に内容や費用についての話し合いを詰めておくのがお勧めです。

さらに“葬儀のプロ”がアドバイス

最後に、永六輔さんなどの著名人をはじめ、数多くの「お別れの会」を手掛けた日比谷花壇ライフサポート事業部の金澤和央さんに、「今の葬儀」について、お話をうかがいました。

 

――やはり昔に比べると、葬儀自体が「スリム」になっているのでしょうか?

 

当社の扱ったご葬儀に関して言えば、1件当たりの平均は34名様となっています。10人以下が全体の22%となっていますが、これには新型コロナの感染拡大が大きく影響しています。形式別には、家族葬29%、一日葬30%、直葬20%、一般葬17%などとなっていて、中でも一日葬が増える傾向にありますね。

 

一日葬や直葬などの際に1つ私たちがご提案しているのが、「おうちで通夜」です。葬儀の前の晩に、家のテーブルに故人の写真を置いて、ご家族で故人を偲びながら食事をしていただくのです。

 

――それは心のこもったお別れになりそうです。ところで、一般葬ではなく、家族葬や一日葬、直葬などにする場合、何か注意すべきことはありますか?

 

1つは、その場に「呼ばれなかった」親戚から、「なぜ家族葬にしたのだ」といった問題が起こる恐れがあることです。親族には、ちゃんと訃報を作成し、「諸般の事情で、家族で執り行います」と、しっかり通知しておくようにしましょう。

 

もう1点、気をつけたいのは、寺のお墓に納骨する場合です。お寺の意向を確認せずに「簡素化」すると、納骨ができないなどのトラブルになる可能性があるのです。宗派によっては、通夜と告別式をやって初めて成仏できる、といった考えに立つ場合もありますから。

 

――「よりよい葬儀」にするためのアドバイスをお願いします。

 

やはり、事前の準備が大切です。コロナで家族が集まるのも大変かもしれませんが、ご本人の思いをご家族が共有することは重要です。葬儀社も事前に決めて、どんな式にするのかを話し合っておきましょう。今はリモートによる事前相談も可能ですが、費用が明瞭で適正か、細部まで相談に乗ってくれるのかどうか、といった点が葬儀社選びのポイントになります。

 

葬儀というと、どうしても暗くネガティブにとらえられがちなのですが、私たちはそうは考えていません。参列者の方々にも、故人の明るい笑顔が思い出されるような式にしたいですよね。事前準備をしっかりしておけば、そうした葬儀を行うことができる、とプラスに考えていただきたいと思います。

 

まとめ

一般葬、家族葬、一日葬、直葬など、葬儀は多様化しています。思いを実現するためには、注意点も頭に入れたうえで、終活で事前の準備をしっかりやることが大切です。

「終活・介護」カテゴリの最新記事