輸入小麦大幅値上げで気になる 「政府売り渡し価格」って? – マネーイズム
 

輸入小麦大幅値上げで気になる
「政府売り渡し価格」って?

    公開日:
    2021/09/27
     
    • Facebookでシェア
    • Twitterでシェア
    • LINEでシェア

    海外産の小麦の高騰で、今後、パン、麺類などの値上げが避けられそうにないようです。ところで、それを伝えるニュースに「政府売り渡し価格」という言葉が出てくるのに、お気づきでしょうか。なぜ、普通に「輸入小麦価格の値上がり」ではないのでしょうか? 私たちの暮らしに欠かせない、小麦の価格設定の仕組みについて解説します。

    輸入小麦は政府が買い付ける

    需要の9割を海外産に依存

    小麦は、言うまでもなく、私たちの食卓に欠かせない主食の1つですが、国内需要のおよそ9割を、主としてカナダ、アメリカ、オーストラリア産の5品種の輸入に依存しています。小麦粉は、含まれるタンパク質の含有量によって、強力粉(パン)、準強力粉(中華麺)、中力粉(うどん)、薄力粉(菓子)に分類されるため、用途に応じた種類のものが、それぞれ輸入されているのです。

     

    輸入数量は、2016年~20年の5年間の平均で、488万トン。国内産小麦の流通量は、同じく82万トンでした(いずれも農林水産省調べ)。

    流通の仕組み

    この海外産小麦は、食料品をはじめとする他の輸入品とは違い、日本政府が商社を通じて買い付けて輸入し、製粉業者などに売り渡す「政府売り渡し制度」が実施されています。その価格が、政府売り渡し価格というわけです。

     

    輸入された小麦は、製粉会社が製粉し、パンや麺類などの製造業者に渡り、加工品として消費者に提供されます。また、一部は味噌や醤油の加工用に回ったり、家庭用小麦粉として販売されたりします。


    引用:農林水産省資料

    なぜ国が「介入」するのか?

    ところで、小麦の輸入が、このように実質的な国家管理の下に置かれているのは、なぜでしょう? 今も説明したように、小麦は米と違って大半を輸入に頼っています。海外産地の動向などによって、日本人にとって大切な食糧の供給に支障をきたすような事態は、避けなくてはなりません。そこで、政府が大口の購入者となることで、安定的な買い付けを確保しようというのが、この制度の目的なのです。

     

    ただし、個別の輸入が禁じられているわけではありません。もともと政府による一元的輸入が行われていた小麦ですが、1994年のGATT(関税と貿易に関する一般協定)ウルグアイラウンド交渉の合意を受けて、関税相当量(TE)を支払えば、誰でも輸入できる制度に変更になりました。とはいえ、高額の税を負担して輸入するメリットは小さく、製粉各社は、その後も継続された「国家貿易」を利用しているのです。

    政府売り渡し価格は、なぜ19%もアップ?

    価格は半年ごとに見直し

    実は、小麦の政府売り渡し価格は、以前は年間を通じて固定相場でした。2007年4月から、国際相場によって変動する相場連動制に変わり、同時に売り渡し価格が毎年4月と10月の2回、見直されることになったのです。

     

    具体的には、直近6か月間の平均買い付け価格に、マークアップ(政府管理費および国内産小麦の生産振興対策に割り当てる経費)を上乗せして算出されます。買い付けの平均額を基準にすることで、小麦の国際相場に大きな変動があった場合でも、売り渡し価格への影響は緩和される、としています。

    10年ぶりの上げ幅に

    にもかかわらず、今回発表された2021年度下期(10月~22年3月)の政府売り渡し価格は、上期に比べて平均19%という大幅なものでした。引き上げは2期連続で、引き上げ幅は11年度上期の18%以来の大きさになっています。この結果、5銘柄平均価格は、1トン当たり6万1820円となり、15年度上期(6万70円)以来の6万円超えとなりました。

     

    ちなみに、製粉会社が政府から小麦を購入する際には、当然消費税が課税されます(上記価格は税込み)。14年4月に消費税率が5%から8%に引き上げられた際には、直近の買い付け価格は横ばいだったにもかかわらず、同年上期の小麦売り渡し価格が2.3%引き上げられたことがありました。

    大幅値上げの理由は3つ

    では、今回の大幅な価格上昇は、どうして起きたのでしょうか? 農林水産省は、価格設定のベースとなる21年3月第2週~同9月第1週の平均買付価格が高騰した主な要因として、次の3つを挙げています。

     

    • ①年初来の米国産、カナダ産小麦に対する中国の旺盛な買付け、特に高騰したとうもろこしに代替する飼料用需要などで、小麦の国際価格が上昇していること
    • ②6月以降、米国北部およびカナダ南部の日本向け小麦産地において、高温乾燥により作柄が悪化し、価格が高騰していること
    • ③太平洋エリアで輸送需要が回復傾向になったことに加え、新型コロナの影響でコンテナ船不足などが深刻化し、海上運賃が大幅に上昇していること

     

    単なる不作ではなく、コロナ禍も絡んだ複合要因によって引き起こされたようです。

    家計への影響は?

    消費者としては、最終製品が具体的にどの程度の値上がりになるのかが気になるところですが、農林水産省は、小麦粉関連製品の小売価格に占める原料小麦代金の割合を基に、次のような試算を明らかにしています。

     

    • 食パン 1斤174円/→+2.3円(+1.3%)
    • うどん 外食で1杯694円→+1.4円(+0.2%)
    • 中華そば 外食で1杯544円→+1.0円(+0.2%)
    • 小麦粉 家庭用薄力粉1キログラム268円→+14.1円(+5.3%)

     

    また、製粉業者には備蓄があるため、製造業者向けなどの小麦粉への価格転嫁が行われるのは、値上げされた売り渡し分を仕入れてから3ヵ月程度先になるものとみられます。

    まとめ

    輸入小麦は、主食の安定供給を維持するために、政府が自ら買い付けて、製粉業者に売り渡す仕組みになっています。その政府売り渡し価格が、国際的な需給の引き締まりや、海上運賃の上昇を背景に、大幅に引き上げられました。来年以降、買い付け価格がどのように推移するのかも、非常に気になるところです。

    • Facebookでシェア
    • Twitterでシェア
    • LINEでシェア