エネルギー価格高騰で“値上げラッシュ” 日本に忍び寄る「悪いインフレ」って? – マネーイズム
 

エネルギー価格高騰で“値上げラッシュ”
日本に忍び寄る「悪いインフレ」って?

    公開日:
    2021/11/16
     
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    2021年の後半になって、電気やガス料金の値上げが続いています。ガソリンや灯油の価格も、目に見えて上がっており、家計への影響が深刻化しつつあることは、みなさんも実感なさっているのではないでしょうか。原油をはじめとする世界的なエネルギー価格の高騰が原因なのですが、その背景には何があるのでしょうか? 今後予想されることを含めて、まとめました。

    エネルギー価格上昇は「物価高」に直結する

    原油相場が「コロナ前」を超えたのはなぜか

    昨年(2020年)の春頃、原油は新型コロナの感染拡大に伴う需要減で、買い手である欧米各国のタンクが満杯になり、タンカーで洋上貯蔵せざるをえないような事態に見舞われていました。こうした状況を反映して、20年4月の原油価格は、1バレル当たり10ドル台という歴史的な安値まで落ち込んだのですが、相場はその後急速に持ち直しました。21年10月半ば時点では同80ドル程度と、コロナ前の水準を超え、約7年ぶりの高値水準で推移しています。

     

    その理由として挙げられているのが、次のような要因です。

     

    • 産油国による協調減産
      中東のOPEC(石油輸出国機構)とロシア、メキシコなどで構成するOPECプラスは、原油価格の下落を受けて大幅な減産を継続しています。21年10月初旬に開かれた閣僚級会合では、いぜん需要の先行きに不透明さが残るという理由で、増産が見送られました。
    • 新型コロナの落ち着きによる需要の回復
      アメリカや中国をはじめ、世界経済は回復基調にあり、原油の需要自体も増加しつつあります。
    • ハリケーンの後遺症
      20年8月下旬に、大型のハリケーンがアメリカ南部に次々に上陸しました。その際に、メキシコ湾沿岸にある海上油田施設が大きな被害を受けました。
    • そして追い打ちをかける「円安」
      アベノミクスでは、政策的に「円安誘導」が行われました。円安は輸出産業にとってプラスに働きます(外国は日本製品を安く買える)。しかし、外国為替の変動は「裏腹」で、円が安くなると輸入には不利です。例えば、100万円だった輸入品が120万円出さないと買えなくなる、といった状況になるわけです。
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      先行して経済を再開させたアメリカでは、景気が上向いて、急激に物価が上がるのを抑制するために、徐々に金融緩和政策を見直しています。具体的には、市場に流れるお金(ドル)の量を減らして、金利を上昇させるわけですが、その結果、いぜんとして金融緩和を継続する日本の円と金利に差がつきました。

       

      そのため、「利息」の高いドルを買って円を売ろうという動きが強まったことなどから、この間、やはり急速に「意図しない円安」が進みました。資源を持たない日本は、ただでさえ高騰しているエネルギーを不利な為替レートで輸入せざるを得ない、という悪循環に陥っているのです。この円安は、エネルギー以外の原材料の輸入にも、悪影響を与えています。

      燃料や食料品などに影響

      原油のみならず、天然ガスや石炭など一次エネルギー(加工前の資源)の価格が軒並み上昇しているのが、今の「エネルギー高」の特徴です。エネルギー相場の上昇は、ガソリンなどの燃料だけでなく、ペットボトルや食品トレーといった身の回りの製品の価格に直接影響します。

       

      今年の10月からは、マーガリンや食用油、コーヒー豆などが相次いで値上げされました。いずれも原材料の価格上昇を理由としたものですが、エネルギーの高騰が長引けば、これらを含めた食料品などの製造コストに響くことになるでしょう。

       

      大手の電力10社と都市ガス4社が、21年12月の家庭向けの料金を11月に比べて全社値上げの方針であることも報道されました。電力会社によっては、標準家庭で今年1月に比べ1,000円を超える値上がりになっています。

       

      そんなこんなで、もし原油価格がこのまま1バレル=80ドルで推移すると、今後1年間で家計の負担額が2万8,000円程度増える、と指摘する専門家もいます。

      いよいよ「インフレの時代」に突入か

      政府目標は「2%のインフレ」

      このように、モノやサービスの値段が上昇していく状態がインフレ(インフレーション)です。実は、政府・日銀(日本銀行=金融政策を実行する日本の中央銀行)は、2013年1月に、2%という「インフレターゲット(目標)」を掲げました。長引くデフレ(インフレとは逆に価格が下降していく状態)からの脱却を目指したものでした。

       

      物価が下がるのは一見好ましいことに思えますが、それにより企業業績が悪化し、給料が下がり、リストラが増える「負のスパイラル」に陥ったのが、バブル経済崩壊後の日本でした。インフレ目標は、景気は順調で収入がアップし、支出も増えて、結果的にそこそこの物価上昇が起こる、という経済環境の実現を企図したもので、世界各国が取り入れています。

       

      しかし、日本では、実際にはその後も物価はほぼ横ばいで推移し、目標とはほど遠い状況が続きました。では、今回訪れているインフレ傾向は、喜ぶべきことなのでしょうか?

      「悪いインフレ」の入り口か

      答えは「ノー」です。インフレには「良いインフレ」と「悪いインフレ」があり、残念ながら、今の状況は後者に当たるからです。

       

      エネルギー価格の上昇によってもたらされるインフレは、説明したような好況時の物価上昇とは違います。企業にとっては単なるコスト増で、むしろ業績の悪化要因となるでしょう。へたをすれば、デフレどころかスタグフレーション(不況とインフレの同時進行)を招く危険性もあるのです。

       

      述べてきたのは悪いシナリオですが、ポスト・コロナの環境を生かし、経済活動全体を立て直すことができれば、そうしたデメリットを乗り越えることは十分可能なはず。政府には、有効で迅速な政策の実行を望みたいものです。

      まとめ

      原油価格の急激な値上がりが、国内経済にも影響を与えています。今後の動向を正確に予想するのは困難ですが、しばらくはインフレ基調が続くと考えて、節約などの生活防衛に努めるべきでしょう。

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