税務調査においては 過去何年分の帳簿が調べられるのか? – マネーイズム
 

税務調査においては
過去何年分の帳簿が調べられるのか?

    公開日:
    2021/11/18
     
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    税務署が納税者の申告内容に疑問を感じた時などに行われるのが、税務調査です。ところで、調査対象になった場合、調べられるのは基本的に単年度の帳簿や申告内容だけでなく、「過去分」も含まれるのをご存知でしょうか? しかも、何年にわたって遡るのかは、“ケースバイケース”なのです。実情はどうなっているのか、解説します。

    税務調査をおさらい

    最初に、そもそも税務調査とはどういうものなのかについて、簡単に説明しておきましょう。

    通常行われるのは「任意調査」

    税務調査とは、毎年行われる法人、個人の確定申告に対して、その内容が正しいかどうかを税務署が調査することを言います。調査官には「質問検査権」という法的な権限が与えられており、納税者側には、その質問に答え、帳簿や領収書など求められた資料を提出する義務があります。

     

    この税務調査には、「任意調査」と「強制調査」があります。「任意調査」は各地の税務署が帳簿などを調べに来るもので、一般に税務調査と言えばこれを指します。普通は税務署から事前に連絡があり、日程調整をしたうえで調査になります。ちなみに事前連絡では、「○年分の調査を行います」という内容が、必ず伝えられることになっています。

     

    調査の当日は、税理士が同席してもかまいません。あくまでも任意ですから、理論上は拒否することも可能です。ただし、正当な理由なく資料の提出を拒んだりすると、罰則の対象になることもあります。

    マルサが行う「強制調査」

    これに対して、申告内容に多額、かつ悪質な脱税行為などが明確に認められた場合に、国税局査察部(マルサ)が行うのが「強制調査」です。こちらは、捜査令状を持って行われる一種の犯罪捜査です。

    何年分調べるのかは「税務署の判断」

    最初に述べたように、この税務調査は過去何年か遡って行われます。税務署からすれば、その年の不正やミスは、数年間の経理処理の流れなどによって、より明らかにできる可能性があります。ある年の申告におかしな点がある事業者は、過去に同じことをしているかもしれません。

     

    一方、納税者にとっては、遡る期間が長くなるほど、過去の納税資料を揃えたりするのに手間がかかるだけでなく、問題が見つかれば、それだけ多額の追徴税(不足した税額)や加算税などのペナルティを課せられるリスクがあります。実際の調査では、具体的に何年遡ることになるのでしょうか?

    遡及期間は5年が「原則」

    結論を言えば、悪質な脱税が明らかな場合などを除き、税務調査は5年前まで遡って実施することが認められています。2011年から、国税についての「更正の請求」(払い過ぎた税金の還付請求)の期限が、それまでの1年から5年に延長されたのに併せて、「課税庁による増額更生」も3年から5年に延びたのです。

     

    つまり、普通の税務調査は、

     

    • 5年前まで遡って調査、徴収できる(税務署の立場)
    • 過去に遡っても最長5年間(納税者の立場)

     

    ということになります。

    通常は3年前まで

    ただ、現実には、5年にわたって調査されることは、そう多くはないようです。税務調査の主な目的は、「申告漏れ」などを見つけ、正しく徴税することです。長い期間の帳簿書類などを調べていくのは、税務署の調査官にとっても大きな負担で、当然コストも発生しますから、問題が少ない=あまり多く追徴できない現場に、必要以上に「長居」をするメリットはないのです。

     

    そのため、実際には、過去3年分を調べるのが税務調査の「定番」となっています。そこを調べて大きな問題がなければ、それで終了。調査の結果、多額の申告漏れなどが発覚した場合には、さらに2年分を精査する、というイメージです。ただし、申告内容に問題があるのではなく、最初から申告を怠っていた場合(無申告)には、少なくとも過去5年まで遡って調査(徴税)されることを覚悟する必要があります。

     

    いずれにしても、「3年か5年か」は、税務署の判断によって決まることになるわけです。

    7年間の場合もある

    一方、国税通則法という法律には、「偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、又はその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税」などに関しては、7年間遡って「更正決定」(徴税)できる、という規定があります。「最長5年ではないのか?」と言われそうですが、これが適用されるのは、「よほどの場合」です。

     

    「偽りその他不正の行為」とは、「申告漏れ」の範疇を大きく超えて、例えば億円単位の所得を意図的に隠して申告しなかった、といった悪質な脱税を指すと解釈されています。最初に説明したマルサによる強制調査の場合にほぼ重なる、と考えればいいでしょう。

    税務調査に臨む基本姿勢は?

    税務調査の遡及期間について述べてきましたが、もし調査の対象になったら、どのような姿勢で臨むべきなのでしょうか?

    帳簿などには保管期間が決められている

     

    まず注意したいのは、調査の有無に関係なく、帳簿類には税法上、次のような保管期間が定められていることです。調査があった際に定められた保存期間の帳簿や書類がなかった場合、その分は所得控除などが認められず、追徴課税が発生する可能性もあります。

     

    ●法人
    「帳簿」(総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳など)、「書類」(棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書など)ともに、原則としてその事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間

     

    ●青色申告(※)の個人

    保存が必要なもの 保存期間
    帳簿 仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳など 7年
    書類 決算関係書類 損益計算書、貸借対照表、棚卸表など 7年
    現金預金取引等関係書類 領収証、小切手控、預金通帳、借用証など 7年(※)
    その他の書類 取引に関して作成し、又は受領した上記以外の書類(請求書、見積書、契約書、納品書、送り状など) 5年
    ※前々年分所得が300万円以下の人は、5年

     

    ●白色申告の個人

    保存が必要なもの 保存期間
    帳簿 収入金額や必要経費を記載した帳簿(法定帳簿) 7年
    業務に関して作成した上記以外の帳簿(任意帳簿) 5年
    書類 決算に関して作成した棚卸表その他の書類 5年
    業務に関して作成し、又は受領した請求書、納品書、送り状、領収書などの書類
    引用:記帳や帳簿等保存・青色申告|国税庁

     

    税務調査の対象になり、例えば「過去3年分について調査します」と連絡があった場合には、その分の該当書類をしっかり揃えて臨むようにしましょう。

     

    ※青色申告
    複式簿記の手法に基づいて帳簿を記載し、その記帳を基に所得税、法人税を計算して申告すること。特別控除などの特典がある。「青色」ではない申告が「白色申告」。

    「非協力」も「言いなり」も間違い

    税務調査で、正当な理由なく資料の提出を拒んだりすると、罰則の対象になることもある、と言いました。調査から逃げ回ったり、調査官に対して敵対的な態度で応じたりするのは、得策とは言えません。

     

    同時に、初めから税務署の指摘をすべて受け入れる、というスタンスで臨めば、払わなくてもいい税負担を強いられる結果になるかもしれません。調査官に、業界の実態や商習慣について誤解のあるようなケースも考えられるからです。

     

    今回説明した調査の遡及期間についても、「こういうケースは3年」という規定があるわけではなく、あくまでも「課税庁の判断」に委ねられています。例えば、当初3年分の予定だったものが5年に延長されたような場合には、納税者としては、その理由を詳しく説明してもらう権利があります。

     

    とはいえ、一般の人が百戦錬磨の調査官と渡り合うのには、無理もあります。税務調査を滞りなく終わらせるために、プロの助けを借りることも検討しましょう。税務調査に強い税理士なら、力になってくれるはずです。

    まとめ

    税務調査には、申告の中身によって3年、5年、7年という遡及期間があります。調査になった時に困らないよう、帳簿などをきちんと保存するとともに、実際の調査に際しては、実績のある専門家のサポートを受けるのがお勧めです。

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