防災対策を後押しする中小企業強靱化法と事業継続力強化計画とは?認定後の支援策についても解説 | MONEYIZM
 

防災対策を後押しする中小企業強靱化法と事業継続力強化計画とは?認定後の支援策についても解説

新型コロナウイルスに限らず、事業を行うにあたってあらゆる災害のリスクに備えておくことは必須です。自然災害や感染症拡大などに対する対策措置を促進するため、中小企業強靱化法が国会で可決されました。また中小企業強靱化法において、中小企業の防災・減災の取り組みを「事業継続力強化計画」として取りまとめ、認定する仕組みが設けられました。この記事では、「事業継続力強化計画」の具体的な内容やメリットについてご紹介します。

中小企業強靱化法とは

基本方針

中小企業強靭化法は、中小企業の自然災害等に対する事前対策(防災・減災対策)を促進することを目的として、2019年に成立した法律です。これにより、防災・減災に取り組む中小企業がその取組みを「事業継続力強化計画」として取りまとめ、国が認定する仕組みが導入されました。

 

政府が定める「中小企業等の経営強化に関する基本方針」のなかでも「中小企業の事業継続力強化」という大項目が設けられ、中小企業庁は、中小企業が行う防災・減災の促進を図っています。

事業継続力強化計画

事業継続力強化計画とは、中小企業が策定する、防災・減災の事前対策に関する計画のことです。経済産業大臣から事業継続力強化計画を認定された中小企業は、税制措置や金融支援、補助金の加点などの支援策を受けられます。事業継続力強化計画には、以下のような内容を記載する必要があります。

 

  • ハザードマップ等を活用のうえ、自然災害リスクを確認・認識する方法
  • 安否確認や避難の実施方法など、災害時の初動対応の手順
  • 人員確保、建物・設備の保護、資金繰り対策、情報保護などのための具体的な事前対策
  • 訓練の実施や計画の見直しなど、事業継続力強化の実行性を確保するための取組み

 

  • 事業継続力強化計画認定の対象となる事業者
    本措置の対象となる中小企業は、業種に応じた以下の資本金等または従業員数のいずれかの条件を満たす会社・個人事業主などです。

    業種 資本金/出資 常時使用する従業員数
    卸売業 1億円以下 100人以下
    小売業 5千万円以下 50人以下
    サービス業 5千万円以下 100人以下
    ゴム製品製造業 3億円以下 900人以下
    ソフトウェア業・情報処理サービス業 3億円以下 300人以下
    旅館業 5千万円以下 200人以下
    製造業および上記以外の業種 3億円以下 300人以下

連携事業継続力強化計画

上記の事業継続力強化計画は、各中小企業が単独で策定するものです。それに対して、連携事業継続力強化計画は、複数の企業が連携して策定する計画になります。個々の企業の防災対策が重要かつ有効である一方で、複数の事業者が連携することでより効果的な防災対策が期待されます。具体的には、以下のような連携の形態が想定されています。

 

  1. 組合等を通じた水平連携
  2. サプライチェーンにおける垂直連携
  3. 地域における面的連携

認定された計画への支援策

税制優遇面

事業継続力強化計画の認定を受けた一定の事業者は、「中小企業防災・減災投資促進税制」と呼ばれる税制優遇措置を受けられます。具体的には、認定事業者のうち、資本金が1億円以下であるなど税法上の「中小企業者等」に該当する事業者が対象となり、認定日から1年以内に計画にしたがって取得し利用する対象設備について、20%(2023年4月1日以後に取得する対象設備は18%)の特別償却を適用できます。

 

特別償却の対象資産は、以下の通りです。

減価償却資産の種類 対象となるものの用途又は細目
機械および装置
(100万円以上)
自家発電設備、浄水装置、揚水ポンプ、排水ポンプ、制震・免震装置
器具および備品
(30万円以上)
自然災害:全ての設備
感染症:サーモグラフィ装置
建物附属設備
(60万円以上)
自家発電設備、キュービクル式高圧受電設備、変圧器、配電設備、電力供給自動制御システム、照明設備、無停電電源装置、貯水タンク、浄水装置、排水ポンプ、揚水ポンプ、格納式避難設備、止水板、制震・免震装置、架台、防水シャッター
※自然災害や感染症の発生が事業活動に与える影響の軽減に対して、上記のものと同等に資する機能を有する資産も対象となります。

金融支援面

認定事業者は、事業継続力強化計画にしたがって取得する設備投資の資金について、審査のうえ日本政策金融公庫の低利融資を受けられます。設備資金に係る貸付期間は最長20年、貸付限度額は7億2,000万円となっています。

 

また、事業継続力強化計画のために民間金融機関から借入を行う場合、一定の限度額のもと、信用保証協会による追加保証や保証枠の拡大を受けられます。

補助金面

事業者は、事業継続力強化計画が認定されても補助金はもらえませんが、ものづくり補助金の審査の際に、加点を受けられます。

申請にあたって検討すべき点

中小企業者庁の「事業継続力強化計画策定の手引」では、事業継続力強化計画の申請にあたって、以下の5つのステップを検討すべきとしています。

引用:中小企業者庁「事業継続力強化計画策定の手引」

計画の概要と目的

事業継続力の強化を図るうえでは、最初に「何のためにこの取組を行うのか」を考えることが最も重要です。したがって、自然災害等が起こった際に、経済社会に与える影響の軽減に資する観点を持つ必要があります。より具体的には、申請にあたって以下のような点を考慮する必要があると言えます。

 

  • 近年、中小企業の事業活動に支障をきたす大規模災害が相次いで発生していること
  • 事業環境の変化が加速し、事業断絶に伴う機会損失が非常に大きくなっていること
  • 自然災害により、従業員やその家族、顧客や取引先、地域に大きな影響が及ぶこと

災害リスクの影響範囲の把握

ハザードマップなどを活用しながら、自社が立地する地域の実際の災害リスクを把握します。そして、想定される被害をもとに、ヒト・モノ・カネ・情報の4つの切り口で、自社にどのような影響が生じるかを考えます。

災害発生時の初動対応と事前対策

災害発生直後の初動対応を、以下の点を含め検討します。

 

  • 人命の安全確保
  • 非常時の緊急時体制の構築
  • 被害状況の把握・被害情報の共有

人員体制や設備、資金の調達方法

前章で検討したヒト・モノ・カネ・情報への影響を踏まえ、たとえば以下の例のような具体的な対策を検討します。

 

  • 従業員の多能工化を進める
  • 設備の耐震化
  • 保険の加入
  • バックアップデータの取得

平時の推進体制と取組み

以下の点に留意しながら、平時の取組みについても検討しておきます。

 

  • 平時の推進体制として、経営層の指揮の下、事業継続力強化計画の内容を実行すること
  • 年に一回以上の訓練を実施し、取組内容を定期的に見直すこと

申請方法

申請に必要な書類と申請方法

紙ベースで申請する場合、主たる事務所の所在地の経済産業局等に、以下の4点の書類を提出します。

 

  • 事業継続力強化計画申請様式(原本一部)
  • 参考書類(必要な場合のみ。既に作成しているBCP等一部)
  • チェックシート(原本一部)
  • A4サイズの返信用封筒(返送用の宛先を記載し、切手(申請書類と同程度の重量のものが送付可能な金額)を貼付)

 

様式やチェックシートは、中小企業庁の「事業継続力強化計画」から入手可能です。

 

☆ヒント
「事業継続力強化計画」は、災害リスクに備えた事前対策を行っている中小企業が計画を国に認定してもらえる制度です。計画が認定されると税制や金銭面において優遇されるなどメリットの大きいため、有事の備えになるだけでなく企業の経営の助けとなることでしょう。申請方法の相談や、確実に不備のない書類を提出したい場合は、顧問税理士がいると安心できます。

まとめ

近年は、自然災害が増えていることに加え、新型コロナウィルスによる影響など、外的要因により事業の安定的な継続が困難になる場面が増えてきています。従業員や取引先、地域への影響も考慮し、具体的な対応策を検討しておくべきでしょう。会社の状況に応じた先行投資も必要になるため、事業継続力強化計画のメリットを活用するようにしましょう。

村上カツ
一橋大学社会学部卒業。 流通業の企業で勤務後、専門性の高い仕事に憧れ、公認会計士を受験。 合格後は会計事務所で税務の仕事をこなし、その後、海外の提携事務所に出向。 幅広い経験を生かし、読者ニーズに応える執筆を心がけます。
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