日本大学前理事長の脱税事件 課せられるペナルティとは?大学はどうする? – マネーイズム
 

日本大学前理事長の脱税事件 課せられるペナルティとは?大学はどうする?

公開日:
2022/01/11
 

2021年11月29日、日本大学の田中英寿理事長(当時)が、取引業者から受け取ったリベート収入などを申告せず約5,200万円の所得税を脱税したとして、逮捕されました。12月20日には、東京地検特捜部が田中容疑者を所得税法違反で起訴し、同氏も起訴内容を認めました。“日大のドン”と呼ばれ、以前から金銭などをめぐる数々の疑惑が取りざたされてきた田中容疑者ですが、今後どんなペナルティが課せられることになるのでしょうか? 現時点で予想されることをまとめました。

どんな事件だった?

大学病院建て替えプロジェクトが舞台

理事長という私立大学のトップが逮捕された今回の事件、どんなものだったのかを簡単におさらいしておきましょう。

 

直接の舞台になったのは、老朽化した日大板橋病院の建て替えプロジェクト(予算規模1,000億円)です。日大は2020年に新しい病院の基本設計を、ある設計会社に24億円で発注したのですが、そのうち2億円が田中容疑者の知人が関係する医療コンサルタント会社に不正に送金され、その一部がリベートとして田中容疑者の手に渡った…という図式でした。

「背任」か「脱税」か

大学から出たお金と知りながら、リベートとして自分に還流させたとしたら、大学に損害を与える「背任」です。実際、2億円の送金を指示した田中容疑者の側近と、それを受け取った知人は、背任容疑で逮捕されました。捜査当局は、当初田中容疑者についてもその共犯で起訴する予定だったのですが、裏付けが不十分だとして立件は見送られました。

 

ただし、「不起訴」ということにはなりませんでした。当局の次の一手が「脱税」の罪です。田中容疑者がリベートとして受け取ったお金を所得と認定、それが申告されていない事実をつかんで、所得税法違反で起訴したのです。田中容疑者が隠した所得は、他の案件も含めて1億1,800万円で、所得税約5,200万円の支払いを免れていたとされます。

「マルサ」が動いた

税務署の調査官が会社などにやってきて帳簿を調べる税務調査は、「任意調査」です。原則として、事前に税務署から連絡があり、税理士の同席も許されます。理屈のうえでは、調査自体を拒否することもできます。

 

他方、税務調査には、国税局査察部(通称「マルサ」)が、裁判所の令状を持ってやってくる「強制調査」もあります。テレビドラマなどで目にすることがありますが、今回もこの強制調査が行われました。この強制捜査は、「所得隠しが高額で悪質」とみなされる場合に行われます。

どんなペナルティが?

申告に問題があると課される「加算税」とは?

“不正な税務申告”には、大きく分けて、計算ミスや経理上の解釈の誤り(例えば経費計上できない費用を誤って計上した)と、意図的な税逃れがあります。メディアなどでは、一般的に前者を「申告漏れ」、後者を「所得隠し」と表現し、より悪質で「マルサ」の調査を受け、起訴に至った事例を「脱税」と使い分けています。

 

税務申告に関しては、たとえミスであっても、本税(本来支払うべき税額)の納付に加えて、「加算税」というペナルティが課せられます。これには、“罪の重さ”によって次の4種類があります。

 

  • 過少申告加算税→申告期限内に申告はしていたものの、申告額が本来支払うべき税よりも少なかった、という場合に課税される。
  • 無申告加算税→定められた申告期限までに申告をしなかった場合に課税される。
  • 不納付加算税→源泉所得税(※)を納付期限までに納めなかった場合に課税される。
  • 重加算税→納税額を意図的に偽装・隠蔽したうえで、無申告、過少申告を行った場合に課税される。

それぞれの税率など、詳しくは財務省のホームページを参照ください。
加算税の概要

※源泉所得税:企業が従業員や報酬を受け取る人から源泉徴収し、本人に代わって納める所得税。

「延滞税」もある

また、本税部分には、原則として法定納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて、利息に相当する延滞税が自動的に課されます。例えば3年間所得を隠していたのが見つかったら、その分の「利息」も請求されるというわけです。

 

利率は、納期限の翌日から2月を経過する日までは原則として年7.3%・それを過ぎた分は年14.6%となっています。

脱税には刑事罰も

今説明した金銭面でのペナルティは、「行政処分」に当たります。しかし、脱税という悪質な犯罪の場合、それとは別に刑事罰に問われることもあります。罰則の中身は、適用される法律(所得税法、法人税法など)に規定されていますが、基本的には「10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金またはその両方が科されるもの」とされています。犯罪の悪質度によっては、懲役刑と罰金刑の両方が科せられることもあるのです。

 

最近では、東日本大震災の復興事業をめぐって、約8,300万円を脱税した罪に問われた鹿島建設東北支店の元幹部に、懲役1年(執行猶予3年)、罰金2,000万円の判決が言い渡されています。

田中容疑者はどうなる?

刑事罰+加算税

では、田中前理事長は、今後どうなるのでしょうか? 検察に所得税法違反で起訴されたので、今後裁判が行われることになりますが、本人も起訴内容を認めていますから、何らかの刑事罰が下ることになるはずです。

 

また、行政処分に関しては、さきほど説明した「重加算税」が課せられることになるでしょう。報道によれば、加算税を含む追徴課税はおよそ6,000万円超とみられており、これに加えて延滞税や住民税も納付する必要があります。

《*注:6,000万円の根拠は不明です》

大学への「損害賠償」は?

田中容疑者自身は背任を否定していますが、大学病院の建て替えプロジェクトでは、日大は資金の不正な流出という直接的な損害を受けました。それ以外にも、不祥事に伴う国の補助金の減額(停止)、ブランドイメージの棄損など、今回の事件で大学が被った被害は甚大です。大学側が田中容疑者に損害賠償を請求することはないのでしょうか?

この件に関しては、末松信介文部科学大臣が、「さらに厳正な対応を行う必要がある」として、日大に対して田中容疑者に対する損害賠償請求などを検討するよう異例の“指導”を行いました。日大の対応によっては、私立学校法に基づく初めての「措置命令」(学校法人が法令に違反したときなどに必要な措置を取れるよう命じることができる規定)を出す可能性にも言及していますから、田中容疑者にはまた新たなペナルティが課せられることになるかもしれません。

まとめ

“日大のドン”と言われた田中前理事長が、5,200万円あまりを脱税した所得税法違反で逮捕、起訴されました。刑事罰や追徴課税に加え、大学から損害賠償を請求される可能性も高まっているようです。

マネーイズム編集部