住宅ローン控除とふるさと納税の控除を併用する場合に注意すべき点 | MONEYIZM
 

住宅ローン控除とふるさと納税の控除を併用する場合に注意すべき点

個人が所得税の控除で代表的なものといえば、住宅をローンで購入した場合の住宅ローン控除とふるさと納税の控除でしょう。どちらも多くの人が利用する控除であるため、両者を併用しようという人も多いです。

 

そこで、住宅ローン控除とふるさと納税の控除を併用する場合に注意すべき点について、詳しく解説します。

住宅ローン控除のしくみ

まずは、そもそもの住宅ローン控除のしくみから見ていきましょう。住宅ローン控除とは、個人が銀行などの金融機関から住宅ローンを利用し、マイホームの新築や取得、増改築などをした場合に、一定の税額控除が受けられる制度のことです。

 

所得税の控除には、所得控除と税額控除の2つがあります。所得税は、収入-経費で求める所得金額に税率を乗じて納める税額を計算します。所得控除は、所得金額から個別の事情を加味した金額を差し引くものです。一方、税額控除は直接、納める税金から差し引くことができる控除のため、所得控除よりも節税効果が高いものになります。住宅ローン控除の控除額は、住宅ローンの年末残高の合計額などを基にして計算します。

 

消費税の税率引き上げや新型コロナウイルスの影響、政府の施策などにより、住宅ローン控除にはいくつかの種類があり、それぞれで控除限度額や要件などが異なります。ただし、基本的には住宅ローン控除の考え方は同じです。一般的な住宅ローン控除の金額は、次の計算式で求めます。

 

住宅ローン控除額=住宅ローンの年末残高×控除率(1%) 控除限度額40万円

(*居住の用に供した年により変動あり)

 

例えば、住宅ローンの年末残高が3,000万円の場合の控除額は、3,000万円×1%=30万円になります。

 

また、住宅ローン控除を受けるには、返済期間が10年以上の住宅ローンを利用していることや、住宅を取得してから6か月以内に入居していることなど、いくつかの要件を満たす必要があり、注意が必要です。

ふるさと納税の控除のしくみ

 
次に、ふるさと納税の控除のしくみを見ていきましょう。ふるさと納税とは寄付金控除のひとつで、自分で寄付をしたい自治体を選んで寄付をすることで、一定金額の控除を受けることができるという制度です。

 

寄附金控除は寄附した金額のうち、2,000円を超える部分の金額を原則、所得税と住民税から控除します。

 

例えば、30,000円のふるさと納税をすると、30,000円-2,000円=28,000円を所得税と住民税から控除します。ただし、所得金額などによっては、控除できる上限を超えてふるさと納税をしてしまう可能性もあるので注意が必要です。

 

また、自治体によっては、特産品などの返礼品を用意していることもあります。つまり、実質2,000円を負担することで特産品などを受け取ることになります。

 

しかし、自治体にふるさと納税をしただけでは、控除を受けることができません。そのため、一定の手続きを行う必要があります。ふるさと納税で税額の控除を受けるための方法には、確定申告とワンストップ特例制度の2つがあります。

 

原則は、確定申告でふるさと納税の控除を受けます。確定申告の場合は、寄付金控除として申請します。ふるさと納税した金額から2,000円を超える部分の金額を、所得税と住民税から控除します。

 

会社員などの確定申告をする必要のない人が利用できる制度が、ワンストップ特例制度です。ワンストップ特例制度では、1年間に5自治体までであれば ふるさと納税時などに自治体から受け取る「寄附金税額控除に係る申告特例申請書(ワンストップ特例申請書)」に必要事項を記入し、ふるさと納税した自治体に提出するだけで、確定申告をせずに控除を受けられます。

 

ワンストップ特例制度では、所得税からの控除はなく、翌年分の住民税のみから控除がされます。

住宅ローン控除とふるさと納税の控除を併用する場合の注意点

 

ここまで、住宅ローン控除とふるさと納税の控除それぞれの仕組みについて見てきましたが、どちらの控除も納税者にとって大変お得な制度だとわかります。また、控除が適用される場面も比較的多いため、住宅ローン控除とふるさと納税の控除を併用できる人も多いでしょう。

 

しかし、住宅ローン控除とふるさと納税の控除を併用する場合には、いくつか注意すべき点があります。ここでは、住宅ローン控除とふるさと納税の控除を併用する場合の主な注意点をご紹介します。

住宅ローン控除1年目はワンストップ特例が使えない

住宅ローン控除とふるさと納税の控除を併用する場合の主な注意点として、まず挙げられるのが、住宅ローン控除1年目は、ふるさと納税のワンストップ特例が使えないということです。

 

上述したように、ふるさと納税のワンストップ特例は、確定申告なしでふるさと納税の控除を受けられる制度です。しかし、確定申告をする場合、ふるさと納税のワンストップ特例を使えません。例え自治体に「寄附金税額控除に係る申告特例申請書(ワンストップ特例申請書)」を提出していたとしても、確定申告をするとワンストップ特例の申し込みは、なかったことになります。

 

そこで、注意したいのが住宅ローン控除1年目です。住宅ローン控除は年末調整で控除が受けられるものですが、1年目だけは年末調整で控除できず、確定申告で申請する必要があります。住宅ローン控除1年目は確定申告が必要となるため、ふるさと納税のワンストップ特例を受けられません。この場合、確定申告書の寄付金控除の欄に控除額などを記載する必要があります。

 

実は、住宅ローン控除1年目だけではなく、医療費控除を受ける場合も確定申告が必要となるため、ふるさと納税のワンストップ特例を利用できません。確定申告書への記載を忘れると、ふるさと納税の控除がされなくなるので、確定申告をする際には、忘れずに記載しましょう。

控除額を使い切れない可能性がある

住宅ローン控除とふるさと納税の控除を併用する場合、もうひとつ注意すべき点が、控除額を使い切れない可能性があるということです。

 

控除には所得控除と税額控除の2つがあります。所得控除と税額控除の2つを併用する場合には、まず所得控除から控除し、次に税額控除を控除します。住宅ローン控除は税額控除、ふるさと納税の控除は所得控除であり、控除の種類が異なります。所得控除であるふるさと納税の控除を先に行うため、その結果、所得税額が減ると住宅ローン控除が使い切ることができないこともあります。

 

所得金額200万円、税率10%、所得税10万円、住宅ローン控除20万円の場合は、住宅ローン控除の全額を使って納める税金は0円になります。この状況でふるさと納税を10万2,000円行うと、所得税の金額は(所得金額200万円-ふるさと納税の控除10万円)×税率10%=19万円になります。所得税9万円に対し、住宅ローン控除は20万円となるので、住宅ローン控除を全額使い切れなくなります。

 

実際には、所得税で使い切れなかった住宅ローン控除は、住民税から差し引くことができます。しかし住民税からの控除には上限があるため、住民税の控除でも使い切れないケースが出てきます。

 

また、住宅ローン控除が2年目以降の場合は、ふるさと納税をワンストップ特例により申請できます。その場合、ふるさと納税の控除は全額住民税から直接控除されるため、所得税額が減ることはありません。しかし、住宅ローン控除が所得税額から引ききれない場合に、住民税で影響を受ける可能性があります。

まとめ

住宅ローン控除とふるさと納税の控除は、併用可能です。しかし、控除額を使い切れない可能性があるなどの注意点もあります。

 

住宅ローン控除の金額はローン残高などによって決まってしまいますが、ふるさと納税については、寄付する金額によって控除額を変えられます。住宅ローン控除とふるさと納税の控除を併用する場合は、納める税金を事前にシミュレーションし、ふるさと納税の金額を調整することで、その恩恵をフルで受けられるでしょう。

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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