高年齢者雇用に関する定年年齢の定めと高年齢雇用継続給付について – マネーイズム
 

高年齢者雇用に関する定年年齢の定めと高年齢雇用継続給付について

公開日:
2022/07/25
 

少子高齢化が進み、労働人口の減少が見込まれるなかで、高年齢者の雇用は欠かせないものとなっています。
労働意欲と能力のある高年齢者が働きつづけられるよう、企業にもさまざまな措置が求められています。
 

この記事では、定年年齢の引き上げや高年齢雇用継続給付など、高年齢者雇用にまつわる制度について解説します。

高年齢者雇用にまつわる措置とは

65歳までの高年齢者の雇用機会の確保

65歳までの高年齢者については、雇用機会の確保として、下記の2つが定められています。
 

●定年年齢は60歳以上とする
従業員の定年を定めるときは、定年年齢は60歳以上としなくてはなりません。
これは、高年齢者雇用安定法第8条をその根拠としています。
 

●高年齢者雇用確保のための措置を行う
定年年齢を65歳未満としている事業主は、以下のうち、どれかひとつを実施しなくてはなりません。
これは、高年齢者雇用安定法第9条をその根拠としています。
 

・定年年齢を65歳まで引き上げる
・定年制を廃止する
・65歳までの継続雇用制度を導入する
 

「継続雇用制度」とは、再雇用制度や勤務延長制度を指し、原則として、希望者全員が対象となります。
継続雇用先は、自社だけではなく、グループ会社でもよいとされています。

70歳までの高年齢者の就業機会の確保

前項の65歳までの雇用機会確保は事業主の義務ですが、70歳までの就業機会確保については、努力義務とされています。
 

定年年齢を65歳以上70歳未満としている事業主、あるいは、継続雇用制度を導入している事業主は、以下のうち、どれかひとつを実施するよう努めなくてはなりません。
これは、高年齢者雇用安定法第10条をその根拠としています。
 

●定年年齢を70歳まで引き上げる
●70歳までの継続雇用制度を導入する
●定年制を廃止する
●70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度を導入する
●70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度を導入する
 (事業主が自ら実施する社会貢献事業、または事業主が委託、出資などをする団体が行う社会貢献事業)
 

継続雇用制度に関しては、特殊関係事業主、および他の事業主によるものも含むとされています。「特殊関係事業主」とは、自社の子法人、親法人、親法人の子法人、関連法人、親法人などの、関連法人を言います。
 

また、下2つの「70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度」「70歳まで継続的に以下の事業に従事できる制度」をまとめて、「創業支援等措置」と呼びます。

70歳までの就業確保措置である創業支援等措置とは

創業支援等措置を実施するには

創業支援等措置を実施するためには、まず、計画を作成しなくてはなりません。計画の作成にあたっては、留意すべき点が7つ定められています。
事業主に向けた留意点ではありますが、高年齢者も知っておくべきポイントだと言えるでしょう。

●業務の内容について
高年齢者のニーズだけでなく、知識・経験・能力などを考慮して決定します。
 

●支払う金銭について
業務の内容や業務量、業務の遂行に求められる知識・経験・能力などを考慮しなくてはなりません。
 

●契約の頻度について
業務の内容・難易度・業務量などを考慮して、適切な業務量や頻度による契約を締結しなくてはなりません。
 

●納品について
成果物の受領においては、不当な修正・やり直しの要求や、不当な受領拒否をしないようにしなくてはなりません。
 

●契約の変更について
契約の変更においては、支払う金銭や納期などの取り扱いも含めて、労使間で十分に協議するようにしなくてはなりません。
 

●安全・衛生について
この措置を講じる事業主が委託業務の内容・性格などに応じた適切な配慮をすることが望まれます。
 

●社会貢献事業を実施する団体について
社会貢献事業を行う団体への事業主の援助が、社会貢献事業の円滑な実施に必要なものでなくてはなりません。
 

作成した計画は、労働者の過半数を代表する労働組合や代表者の同意を得たうえで、導入することになります。

創業支援等措置に基づく契約の留意事項

高年齢者が創業支援等措置に基づく契約を締結するにあたっても、下記4つの留意事項が定められています。
こちらも、事業主向けの留意事項ですが、高年齢者も知っておいたほうがよいでしょう。創業支援等措置は、雇用によらない就業機会の確保です。その点を理解したうえで、契約を締結するようにしてください。

●契約締結時の留意事項
 ・契約は書面で締結する
 ・創業支援等措置の計画を記載した書面を交付する
 ・労働基準法などの労働関係法令が適用されないことなどを十分に説明する
 

●安全確保に関する留意事項
安全配慮義務などの労働法制上の保護について考慮しながら、事業主が委託業務の内容・性格などに応じた適切な配慮をすることが望まれます。
 

●高年齢者からの相談への対応に関する留意事項
高年齢者から業務について相談があったときは、誠実に対応しなくてはなりません。
 

●労働者性に関する留意事項
創業支援等措置における高年齢者の働き方については、労働者性が認められるようなものとならないように留意しなくてはなりません。
 

なお、「労働者性」とは、使用従属性(指揮監督下での労働かどうか)、報酬の労務対償性(労働者性の判断を補強する要素があるかどうか)を踏まえて、個別に判断されます。

雇用保険の高年齢雇用継続給付とは

高年齢雇用継続基本給付金の概要

「高年齢雇用継続給付」とは、雇用保険の雇用継続給付のひとつです。「高年齢雇用継続基本給付金」と「高年齢再就職給付金」にわかれています。
 

「高年齢雇用継続基本給付金」は、基本手当を受給していない人を対象としています。
「基本手当」とは、いわゆる失業手当です。ここで言う「基本手当」には、再就職手当などの、基本手当を支給したとみなされる給付も含みます。
 

原則として、60歳以降の賃金が、60歳時点の賃金と比較して、75パーセント未満であるときに支給されます。なお、下記2つの要件を満たしている必要があります。

●60歳以上65歳未満の一般被保険者である
●雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある
 

支給額については、基本的には、以下のように定められています。
●60歳以上65歳未満の各月の賃金が、60歳時点の賃金の61パーセント以下
 ⇒各月の賃金の15パーセント相当額
●60歳以上65歳未満の各月の賃金が、60歳時点の賃金の61パーセント超75パーセント未満
 ⇒低下率に応じて、各月の賃金の15パーセント相当額未満の額

高年齢再就職給付金の概要

「高年齢再就職給付金」は、基本手当を受給して、60歳以後に再就職した人を対象としています。
再就職後の各月の賃金が、基本手当の基準となった賃金日額を30倍した額の75パーセント未満であるときに支給されます。なお、下記5つの要件を満たしている必要があります。

●60歳以上65歳未満の一般被保険者である
●基本手当についての算定基礎期間が5年以上ある
●再就職した日の前日における基本手当の支給残日数が、100日以上ある
●1年を超えて継続雇用されることが、確実であると認められる職業に就いた
●同一の就職について、再就職手当の支給を受けていない
 

支給額については、「高年齢雇用継続基本給付金」と計算方法は同じです。
●再就職後の各月の賃金が、賃金日額を30倍した額の61パーセント以下
 ⇒各月の賃金の15パーセント相当額
●再就職後の各月の賃金が、賃金日額を30倍した額の61パーセント超75パーセント未満
 ⇒低下率に応じて、各月の賃金の15パーセント相当額未満の額
 

ちなみに、「高年齢再就職給付金」と「再就職手当」は、併給することができませんので、ご注意ください。

まとめ

老齢厚生年金の受給開始は、現在、原則として65歳からとなっています。ですが、この受給開始年齢が、今後ふたたび引き上げられないとも限りません。
 

まだまだ先のことだと思っていても、いずれ、ご自身が高年齢者になったときの働き方について、考えざるを得なくなるでしょう。
法改正などが報じられた際は、チェックされることをおすすめします。

サガアサコ
長年のキャリアのなかで、総務・労務関係の実務経験は15年以上に。
社会保険労務士の資格取得済み。現在は、知識と経験を活かして、フリーランスのWebライターとして活動中。