宮城県の法人を例に税金が免除される 地方独自のルールについて解説 | MONEYIZM
 

宮城県の法人を例に税金が免除される
地方独自のルールについて解説

どの地方にも独自の税金のルールが存在します。宮城県も例外なく、県内の法人に対する優遇税制が設けられています。しかし、情報量が少なく、優遇税制の存在にすら気づかずに節税のチャンスを逃してしまう可能性があります。そこで、宮城県の法人を例に税金が免除される独自のルールについて説明します。

宮城県の法人に対する優遇税制とは

4つの優遇税制

特定の法人に対する優遇税制は次の4つです。

(1)特定非営利活動法人(NPO法人)に対する県税の優遇措置

NPO法人に対して、法人県民税均等割、不動産取得税、自動車税(環境性能割・種別割)、軽自動車税環境性能割の税負担を軽減する制度です。

(2)過疎地域などの法人に対する県税の優遇措置

過疎地域、離島地域、原子力発電施設等立地地域、地方活力向上地域における法人事業税や不動産取得税などを軽減する制度です。

(3)企業立地促進税制

宮城県内に、後述する一定の要件を満たす工場などの新設・増設をした法人に対して、法人事業税や不動産取得税などを軽減する制度です。

(4)復興産業集積区域における県税の課税免除

東日本大震災からの復興を推進するため、後述する要件を満たす法人に対して法人事業税や不動産取得税などを軽減する制度です。

優遇税制は政策実現が目的

そもそも優遇税制の目的は政策実現です。たとえば、前述の企業立地促進税制の場合、宮城県への企業の立地を一層推進し、産業振興を加速させる目的で設けられました。それぞれの自治体が実現したい政策(政治的な意向)の視点から見てみると、自分たちに使える優遇税制があることに気づくかもしれません。

優遇税制の内容

特定非営利活動法人(NPO法人)に対する県税の優遇措置

NPO法人に対する優遇税制は区分ごとに次の通りになります。

(1)すべてのNPO法人

次の税目が免除されます。

 

  • ①法人県民税均等割
    均等割とは法人の規模(資本金と従業員)に応じて課税する税金です。「収益事業をしないNPO法人」および「所得金額のない収益事業をするNPO法人」に対して均等割が3年間免除されます。
  • ②不動産取得税
    NPO活動に使用するための不動産を無償(寄贈されるなど)で取得した場合、不動産取得税が免除されます。
  • ③自動車税環境性能割・軽自動車税環境性能割
    不動産取得税と同じようにNPO活動の用に供する自動車を無償で取得した場合、自動車税環境性能割・軽自動車税環境性能割が免除されます。
(2) 福祉を担うNPO法人

福祉を担うNPO法人が介護保険法に規定する居宅サービス事業など福祉サービスに使用する自動車を取得・保有した場合、自動車税(環境性能割・種別割)および軽自動車税環境性能割が免除されます。

(3) ナショナル・トラスト活動をするNPO法人

ナショナル・トラスト活動(自然環境や貴重な歴史的建造物を後世に残していこうとする市民運動)をするNPO法人は指定地域内において自然環境として保全すべき山林等を取得した場合、不動産取得税が免除されます。

過疎地域などの法人に対する県税の優遇措置

次の地域の県税が免除または軽減されます。

 (1)過疎地域

令和3年3月31日までに次のことを実施した場合

 

  • 特別償却設備を新設・増設した場合:3年間事業税が免除
  • 特別償却設備である家屋又はその敷地である土地を取得した場合:不動産取得税が免除
  • 特別償却設備である償却資産を取得した場合:3年間県固定資産税が免除
(2)離島地域

令和3年3月31日までに次のことを実施した場合

 

  • 特別償却設備を新設・増設した場合:3年間事業税が免除
  • 特別償却設備である家屋を新設・増設し、又はその敷地である土地の取得した場合:不動産取得税が免除
  • 特別償却設備である償却資産を新設・増設した場合:3年間県固定資産税が免除
(3)原子力発電施設等立地地域

令和3年3月31日までに次のことを実施した場合

 

  • 対象設備を新設・増設した場合:3年間事業税の本来の税率よりも軽減される(1年目は2分の1、2年目は4分の3、3年目は8分の7に軽減)
  • 対象設備である家屋の新設・増設およびその敷地である土地を取得した場合:不動産取得税:税率4%(住宅用は3%)→ 0.4%の税率が適用される
  • 対象設備である大規模の償却資産を新設・増設した場合:3年間固定資産税の税率が軽減される(1年目は0.14%、2年目は0.35%、3年目は0.7%の税率が適用される)
(4)地方活力向上地域

令和2年3月31日までに方活力向上地域等特定業務施設整備計画の認定を受けて、認定後2年以内に実施した場合

 

  • 特別償却設備を新設・増設した場合:3年間事業税の本来の税率よりも軽減される(1年目は2分の1、2年目は4分の3、3年目は8分の7に軽減)
  • 対象設備である家屋の新設・増設およびその敷地である土地を取得した場合:不動産取得税の税率が4%(住宅用は3%)→ 0.4%適用または免除になる

企業立地促進税制

平成20年4月1日から令和5年3月31日までの間に宮城県内に対象設備の新設または増設をした法人に対して、次の税目が免除または軽減されます。

(1)免除される税目

 

  • 平成20年10月から令和元年9月までに開始する事業年度にかかる事業税(所得割のみ) を3年間免除する
(2)税率を2分の1に軽減する税目

 

  • 令和元年10月以降に開始する事業年度にかかる事業税(所得割のみ)を3年間軽減する
  • 不動産取得税を軽減する
  • 固定資産税を3年間軽減する

 

対象設備は次のすべての条件を満たした設備です。

  • 製造業にかかる設備
  • 設備の取得価額が1億円以上
  • 製造業に使用する建物の取得を伴う
  • 新設または増設した設備を使用したことにより、雇用者が3人以上増加する

復興産業集積区域における県税の課税免除

認定地方公共団体の指定を受けた法人が復興産業集積区域内において対象施設等を新設・増設した場合、法人事業税、不動産取得税、県固定資産税が免除されます。

 

ただし、雇用等被害地域市町村区域外において平成31年4月1日以降に、対象施設等を新設または増設した場合、事業税・不動産取得税、県固定資産税は全額免除でなく、4分の3免除になります。

他県の優遇税制

岩手県の場合

宮城県の政策実現と共通する岩手県税の優遇税制は次の通りです。

(1) 「岩手県産業再生特区」に基づく支援

東日本大震災からの復興を促進するために設けられた優遇税制です。機械等、開発研究用資産設備、再投資設備等の取得により、税額控除による税金免除または特別償却による課税の繰り延べ(納税の先延ばし)のいずれかを選択することができます。

(2)「特定区域における産業の活性化に関する条例」に基づく減免

岩手県内にある21市町村125区域の特定地域の企業に対する工場等立地のインセンティブを強化し、工場等立地を促進する目的で設けられた優遇税制です。一定の条件を満たした場合免除・軽減される税目は次の通りになります。

 

  • 不動産取得税:免除
  • 事業税:3年間免除、その後2年間は税率を2分の1軽減する(5年間の優遇税制)
 (3)「過疎地域における県税の免除に関する条例」に基づく減免

岩手県内の30地域(宮古市、遠野市、釜石市など)に対して、次の税目が免除されます。

  • ①   不動産取得税、事業税(3年間)
    平成31年3月31日までに取得価額2,700万円超の工業生産設備を取得するのが免除の条件です。
  • ②   固定資産税(3年間)
    市町村条例に基づきます。たとえば、宮古市の場合、対象業種が製造業に限定されているなどの条件があります。

福島県の場合

福島県の優遇税制はおもに次の通りです。

(1)東日本大震災関連

復興特区法と福島特措法によるものに大別でき、製造業などの特定の業種が指定地域内に対象設備等を取得した場合、事業税(5年間)と不動産取得税が免除されます。

(2)過疎地域

上記(1)と同じように特定の業種が過疎地域内に対象設備等を取得した場合も事業税(3年間)と不動産取得税が免除されます。

(3)原子力発電施設等立地地域

特定の業種が原子力発電施設等立地地域内に対象設備等を取得した場合、事業税(3年間)と不動産取得税の税率が軽減されます。

まとめ

宮城県の優遇税制を中心に見てきました。東日本大震災からの復興、過疎地域対策、原子力発電等立地地域内での設備投資の促進という点は岩手県、福島県と共通しています。該当する自治体の政策課題から利用できる優遇税制を探すのもひとつの手です。

阿部正仁
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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