育児休業給付金とは?従業員の育児休業取得について企業が忘れずにやるべきこと | MONEYIZM
 

育児休業給付金とは?従業員の育児休業取得について企業が忘れずにやるべきこと

働き方改革の促進とともに、男女問わず育休(育児休業)を希望する従業員が増えており、育休に関する法制度も定期的に見直されています。
その中には、従業員が育児に専念できるために設けられた「育児休業給付金」という制度があります。今回は育休制度や育児休業給付金に関する概要、従業員が育休を取得する際に必要な手続きについて解説します。

育休とは

育休(育児休業)とは、子を育てる従業員が育児に専念するための休業として、「育児・介護休業法」により定められた権利です。
「育児休業」と「育児休暇」は混同されやすいですが、育児休暇」は企業ごとに定められた制度(福利厚生)であるのに対し、育児休業」は国による制度(育児休業制度)を指します。
育児休業は、法律で定められた、従業員が有す権利であり、企業は従業員から申し出があった場合、拒否できません。従業員に対し、育休取得を理由とした不当な扱いはしてはならないとされています。

育休の対象者

以下の条件を満たす場合、育休の対象となります。「パートタイマー」などの時短労働者であっても、期間の定めのない労働契約を結んでいる場合は、育休の取得が可能です。
 

  • ● 原則として1歳に満たない子を養育する男女労働者(日雇い労働者を除く)
  • ● 有期雇用の場合、子が1歳6か月に達する日までに、労働契約(更新される場合には、更新後の契約)の期間が満了することが明らかでない労働者

 

ただし、労使協定を結び、以下の要件を満たす場合は、育休対象外となります。

  • ● 雇用期間が1年未満の労働者
  • ● 育休申請日より、1年以内に雇用関係が終了することが明らかな労働者(1歳6か月までの育休の場合は、6か月以内)
  • ● 1週間の所定労働時間が2日以下の労働者

 

育休の期間

育休の期間は原則、子どもが1歳になるまで(誕生日の前日)とされています。ただし、子どもが1歳になる時点で保育所などに入所できないなど、雇用継続のために特に必要であると認められる場合に限り、1歳6か月まで(再延長の場合2歳まで)、育休の延長が可能です。
また、女性の場合、産後8週間の産後休暇を終えてから育休期間が始まりますが、男性の場合は、子どもが生まれた日から育休期間が始まります。

育休の申し出があったときは

従業員から育休の申し出があったとき、企業の担当者は以下3つの手続きをおこなう必要があります。
 

  • ● 育児休業取扱通知書の交付
  • ● 育児休業給付金の申請
  • ● 社会保険料免除の手続き

 

育児休業取扱通知書の交付

従業員から育休の申し出を受けたら、育休開始予定日の1か月前までに、「育児休業申出書」を提出させ、内容を確認し、「育児休業取扱通知書」を交付します。
「育児休業取扱通知書」とは、育休中の取り扱いに関して従業員に通知する書類であり、以下の記載が必要です。
 

  • ● 休業期間等(休業開始日・職場復帰予定日、休業の対象外である理由など)
  • ● 休業期間中の取扱い等(休業中の給与や社会保険料など)
  • ● 休業後の労働条件(職場復帰後の給与の条件など)
  • ● その他(休業期間中の連絡手段など)

 

従業員とのトラブルを回避するためにも、「休業中の待遇」や「職場復帰後の待遇」など、労働条件について、しっかりと明記しておきましょう。また、「育児休業申出書」は、育休開始予定1か月前までに提出が必要です。
 

育児休業給付金の申請

「育児休業給付金」とは、子どもを養育する従業員が、給与が支給されない休業中でも、生活に困らず育児に専念できるように設けられた給付金制度です。条件を満たした場合、男性も取得可能です。

育児休業給付金の受給要件

育児休業給付金は、以下の要件を満たした場合、受給対象となります。
 

  • ● 雇用保険に加入している
  • ● 1歳未満の子どもがいる
  • ● 育休開始日を起点として、過去2年間に、就業日数が11日以上ある月が12か月以上あること
    (ただし、条件を満たさない場合でも、産休休業開始日等を起点とし、その日以前2年間に、就業日数が11日以上ある月が12か月以上ある場合は、要件を満たすものとする)
  • ● 育休期間中の就業日数が、1か月10日以下であること、また、休業前の賃金の8割以下であること

 

雇用期間に定めのある、パートタイマーや契約社員などの有期雇用労働者の場合、上記に加え以下のいずれの要件も満たす必要があります。
 

  • ● 働いている期間が1年以上であること
  • ● 子どもが1歳6か月に達する日までに、雇用契約期間が終了することが明らかでないこと

必要書類

育児休業給付金の申請に必要な書類は以下の通りです。
 
【初回の場合】

  • ● 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書
  • ● 休業開始時賃金月額証明書
  • ● 賃金台帳、出勤簿またはタイムカードなど
  • ● 母子健康手帳など、育児を証明できる書類

 

【2回目以降の場合】

  • ● 育児休業給付金支給申請書
  • ● 賃金台帳、出勤簿またはタイムカード

申請の流れ

従業員から育休の申し出があった場合、以下の流れで、育児休業給付金の申請をおこないます。

  • ● 必要書類を準備する
  • ● ハローワーク(電子申請も可)に提出する初回申請(手続き)後、2か月に1回支給申請をおこなう

育児休業給付金の延長要件

育児休業給付金、および育休の延長は、以下の要件を満たした場合に対象となります。
 
【1歳6か月までの延長】

  • ● 育休の対象となる子どもについて、保育所(無認可保育施設は除く)等の入所を希望し、申請したものの、その子どもが1歳に達するまでの期間において、入所できない場合
  • ※ あらかじめ1歳に達する日の翌日について、保育所等における保育が実施されるように、申込みを行う必要があります。

  • ● 育休の対象となる子どもが1歳に達するまでの期間について、その子どもを養育する本人または配偶者が、以下のいずれに該当した場合
  • (1)死亡したとき
    (2)負傷、疾病または身体上、もしくは精神上の障害により、育休の対象となる子どもを養育することが困難な状態になったとき
    (3)離婚などの事情により、配偶者が育休の対象となる子どもと同居しないこととなったとき
    (4)育休対象の子どもの次の子どもが生まれる予定、または生まれた場合

 

【2歳までの延長】
以下のいずれかに該当し、子どもが1歳6か月に達する日後の期間に育児休業を取得する場合は、その子どもが2歳に達するまでの期間、育児休業給付金の支給対象となります。

  • ● 育休の対象となる子どもについて、保育所(無認可保育施設は除く)等の入所を希望し、申請したものの、その子どもが1歳6か月に達する日前までの期間において、入所できない場合
  • ※あらかじめ1歳6か月に達する日の翌日について、保育所等における保育が実施されるように、申込みをおこなう必要があります。

  • ● 育休の対象となる子どもが1歳6か月に達するまでの期間について、その子どもを養育する本人または配偶者が、以下のいずれに該当した場合

(1)死亡したとき
(2)負傷、疾病または身体上、もしくは精神上の障害により、育休の対象となる子どもを養育することが困難な状態になったとき
(3)離婚などの事情により、配偶者が育休の対象となる子どもと同居しないこととなったとき
(4)育休対象の子どもの次の子どもが生まれる予定、または生まれた場合
※有期雇用労働者は、子どもが1歳6か月に達する日の翌日において、子どもが2歳までの間に、その労働契約(労働契約が更新される場合にあっては、更新後のもの)が終了することが明らかでないことが必要です。

育児休業給付金延長時の必要書類

育児休業給付金を延長する際は、延長が必要な理由に応じ、以下の書類が必要です。

  • ● 市町村が発行した、保育所等の入所保留の通知書など、当面、保育所において保育がおこなわれない事実を証明できる書類
  • ● 世帯全員について記載された住民票の写しおよび母子健康手帳
  • ● 保育を予定していた配偶者の状態についての医師からの診断書

など

社会保険料免除の手続き

免除の手続き

育休期間中は、企業側と従業員が支払う、それぞれの社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除されます。そのため、従業員から育休の申し出があった場合、企業の担当者は「社会保険料の免除」についても、必要な手続きを適切におこなわなければなりません。
また、社会保険料が免除されている期間について、被保険者としての資格が喪失されるわけではなく、育休中も社会保険料を支払ったとみなされます。ただし、住民税については免除されないため、従業員が休業に入る前に、あらかじめ徴収方法などについて、確認しておきましょう。

申請の流れ

従業員から育休の申し出があった場合、以下の流れで、社会保険料免除の手続きをおこないます。

  1. ● 「育児休業等取得者申出書」を準備する
  2. ● 企業の担当者が、「育児休業等取得者申出書」を年金事務所に提出する

☆ヒント
育児休業給付金手続きでは、「退職が決まっている場合や育休中の就業日数によっては受給不可」、「1歳の誕生日前日を過ぎると延長不可」といった点に注意しなければなりません。また、自治体によっては育休を取得した企業に奨励金を出すところもあるため、確認しておくとよいでしょう。受給要件や奨励金申請などの手続きは複雑となるため、トラブルを回避するためにもまずは顧問税理士に相談すると安心です。

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まとめ

従業員とのトラブルは、給与など待遇に関することが多く、「育児休業」および「育児休業給付金」についても注意しなければなりません。
従業員から育休の申請があった場合、スムーズに適切な手続きがおこなえるよう、日頃から、育児休業に関する法令や必要な手続き、書類などについて理解し、管理部門のサポート体制を整えておきましょう。

松崎ぶっち
立命館大学卒。
在学中に起業・独立などにあたり会計や各種監査などの法規制に対応するためのシステム導入ベンダーを設立。紆余曲折を経て多くのシステムを経験。
システム導入をされるお客様の起業活動を通じて得た経験、知見を活かし皆さんの気になるポイントを解説します。