子会社の作り方はどうすればよい?意義やメリット・デメリットを解説 | MONEYIZM
 

子会社の作り方はどうすればよい?意義やメリット・デメリットを解説

「子会社を設立してみたいが作り方を把握できていない」という経営者は多いです。子会社の設立には難しいイメージがあるかもしれませんが、理解してしまえば簡単です。今回は、子会社を作るメリットやデメリットを含め、設立手続きの手順を解説します。

子会社とはどのような存在か

まず、子会社とはどのような存在であるのか簡単にご説明します。

子会社とは

そもそも子会社とは、会社法で「会社がその総株主の議決権の過半数を有する株式会社その他の当該会社がその経営を支配している法人として法務省令で定めるものをいう」と定義されています。難しい言葉が並んでいますが、基本的には議決権の50%超を持つ・持たれるという関係にある会社同士を「親会社」「子会社」と呼ぶルールです。
子会社は親会社に「支配」されているため、経営方針などには親会社の意向が反映されます。完全に独立した法人ではなく、親会社の方針に従う法人が子会社です。

親会社と子会社の関係

親会社と子会社は、株式の保有状況によって以下のとおり関係が変化します。
 

  • ●  完全子会社:親会社が議決権のある株式100%を保有している
  • ●  連結子会社:親会社が議決権のある株式の過半数を保有している
  • ●  非連結子会社:子会社ではあるが連結子会社ではない

 

株式の保有状況によって親会社と子会社の関係は変化します。子会社と親会社の関係であるからといって、親会社が100%の株式を保有しているとは限りません。この点は誤認しやすいため、「必ずしも100%の株式を保有しない」と理解しておきましょう。

子会社設立によるメリット

子会社を設立すると4つのメリットを得られます。

節税効果が期待できる

子会社を設立すると、参入できる交際費の合計金額が増え、本来は損金に算入できなかった費用を損金に算入できる可能性があります。親会社と子会社に経費を振り分けることで、それぞれの会社の課税所得が減少し、親会社と子会社全体で見ると支払う税金を抑えられます。
また、親会社から子会社に転籍する場合は、親会社で退職金などの支給が可能です。これだけ支払ったお金は経費として算入できるため、親会社の課税所得が減り節税効果を生み出します。

意思決定が効率化される

子会社を作り組織を小さくできれば、意思決定が効率化されます。これは業務領域が狭くなったり、従業員数が少なくなったりすることが背景にあります。
規模の大きな会社は組織が複雑となり、意思決定の仕組みも複雑化する傾向にあります。意思決定に時間がかかることは会社経営の課題となりますが、子会社化するとスピーディな意思決定を実現できるでしょう。

損益を把握しやすくなる

子会社を設立して会社の規模を小さくすることで、損益を把握しやすくなります。規模の大きな会社では部署や事業が多く、それぞれの損益を把握しにくいですが、子会社を設立すれば課題を解決できます。
理由は、子会社における売上と費用を明確できるためです。規模の大きな会社では売上に対してかかった費用が分かりにくくなってしまいますが、子会社にすると関係性が分かりやすくなります。損益が把握しやすくなるだけではなく、必要な対策も明確になるでしょう。

経営面でリスクヘッジできる

事業で失敗した場合に、リスクヘッジできます。例えば行政上のミスで業務停止処分を受けた場合、子会社化していると影響を最小限に抑えることが可能です。
1つの会社で多くの業務を営んでいると、業務停止命令を受けると他の業務にも影響しかねません。しかし、子会社化していると業務停止命令を受けても、子会社のみが対象となります。万一の時に、影響を最小限に抑えるためにも、事業ごとに子会社化するといいでしょう。

子会社設立によるデメリット

子会社を設立すると3つのデメリットもあります。

設立手続きに時間を要す

子会社を設立するためには、時間を要します。法務局に提出する書類を準備しなければならず、提出してからも会社が設立されるまでに時間が必要です。
書類作成は親会社が契約している税理士法人などに依頼すれば、スムーズに作成してもらえるでしょう。社内で作成するより、ミスなく短時間で完了するはずです。ただ、法務局に書類を提出してから1〜2週間程度待つ必要があり、この期間は短縮できません。

子会社の数だけ維持費が増える

設立する子会社が増えると、それだけ維持費が増えてしまいます。総務部門などそれぞれの子会社に重複する部門を設置する必要があり、ひとつの会社で同じ業務を遂行する場合に比べるとコストが発生しがちです。
また、税理士などと顧問契約すると個別に料金がかかり、それぞれの子会社で法人住民税の支払いも必要となります。子会社の設立は節税などのメリットが期待できますが、同時に費用面のデメリットに注意すべきでしょう。

損益通算はできない

完全支配関係にある子会社を除いては、親会社と子会社では損益通算をできません。親会社が黒字で子会社が赤字でも、別々に税金の計算をして親会社は納税する必要があります。
1つの会社であれば赤字部門と黒字部門の損益を合計して税金を支払うため、赤字部門があると納税額は下がります。しかし、親会社と子会社では基本的にこのような損益通算をできず、仮に莫大な赤字を抱える子会社があったとしても、親会社や他の子会社は黒字である以上、税金を納めなければなりません。

子会社の作り方

大まかに4つのステップに分けて、子会社の作り方を説明します。

事前準備

親会社が新たに子会社を設立する場合、親会社が基本的に発起人となります。会社設立にあたっては発起人がさまざまな事項を決定する必要があり、子会社の設立でも同様です。
例えば、事業目的を決定しなければなりません。子会社は親会社から切り離した事業を営むため、事業に適した目的を検討しておきましょう。
また、子会社を設立するにあたって、子会社の役員を選出する必要があります。会社設立時に役員が決まっていなければ登記できないため、こちらも事前に決定しておきましょう。

定款の作成

定款は「会社の憲法」とも呼ばれる重要な文章です。会社の運営に必要な基本的なルールが定められています。法律で「絶対的記載事項」と呼ばれる最低限、記載が必要な事項が定められているため、それらの事項を中心に作成しなければなりません。
また、株式会社の場合は公証人役場に定款を持ち込み、定款の認証をしてもらう必要があります。子会社を設立する際は、株式会社を選択するケースが多いと思われるため、定款の認証作業もあると考えておくといいでしょう。

資本金の払込みと書類の準備

子会社の資本金は定款で定めます。定めた金額を金融機関で払込みして、資本金の入金手続きをしましょう。入金した口座の控えが必要となるため、通帳などのコピーを取得してください。
また、資本金の払込みが完了すれば、法務局に提出する書類作成が必要です。会社の種類や状況によって異なりますが、専門的な書類をいくつも作成しなければなりません。書類作成は時間を要すため、子会社の設立にあたって作成にかかる時間も意識しましょう。

法務局での登記

必要な書類がそろえば、法務局に提出して法人登記を手続きします。書類が完成していれば提出するのみで、難しい手続きではありません。
内容に指摘事項がなければ、1〜2週間で会社設立が完了します。会社設立が完了すれば子会社として経営できるため、書類を提出してからは完了まで他の準備をしておきましょう。
 

☆ヒント
子会社の設立にはメリット・デメリットがあるため、一概に作ればよいとは言い切れません。また、専門的な書類作成が必要で時間を要します。子会社の設立を検討する際は、顧問税理士に相談できるようにしておくと安心です。

まとめ

子会社の作り方とメリットやデメリットについてご説明しました。子会社の設立にはデメリットがあるため、両方を把握してメリットがデメリットを上回るのか検討しましょう。
なお、子会社の作り方は特別なものではなく、一般的な会社設立と同様です。発起人が親会社になるなどの条件はありますが、特別な手続きはありません。定款や必要な書類を作成し、法務局に提出することで子会社を設立できます。

松崎ぶっち
立命館大学卒。
在学中に起業・独立などにあたり会計や各種監査などの法規制に対応するためのシステム導入ベンダーを設立。紆余曲折を経て多くのシステムを経験。
システム導入をされるお客様の起業活動を通じて得た経験、知見を活かし皆さんの気になるポイントを解説します。
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