養育費の金額決定基準や、確実に支払いを受けるための方法を解説! – マネーイズム
 

養育費の金額決定基準や、確実に支払いを受けるための方法を解説!

未成年の子を持つ夫婦が離婚の選択に至った場合、子の養育費についての協議を避けるのは禁物です。養育費は一方の好意で支払われるものではなく、親の子に対する義務だからです。
この記事では養育費の意義、額の基準、きちんと支払ってもらうための方法について解説します。

「養育費」とは何か正しく認識しておこう

養育費とは、離婚により子の監護者(養育に関する事務を行う者)にならなくなった側の親が、子を養育するために必要な費用を負担する目的で監護者側に支払う費用のことです。ここでは養育費の支払い側を「義務者」、監護者側を「権利者」と呼びます。

養育費支払いは親としての義務

日本では離婚後、夫婦間の子に対し父母のどちらか一方のみが親権者となります(民法819条1項)。そして子の親権を得た側はまた、子の監護者ともなるのが一般的です(同820条参照)。
しかし親権者とならなかった側が子の面倒をみずに済むわけではありません。離婚後、赤の他人となるのは夫婦間のみで、親子関係は法律上(戸籍上)継続します。親は、自身の子が未成年の間は監護義務、すなわち養育義務があり、離婚して親権を失ってもそれは変わりません。自分の子を養育するのに必要な費用は当然に父母で負担すべきです(同887条1項参照)。
時々誤解している方がいますが、義務者は「元配偶者と子」の生活費を負担するのではなくあくまでも「子」に必要な費用を支払うのです。したがって、権利者は堂々と養育費の支払いを相手側に請求すべきなのです。

具体的にはどんな費用をいつまで支払う?

養育費は原則として子を養育するうえで通常かかるであろう費用、具体的には衣食住に関する費用や教育費、また医療費などを補うために義務者が支払います。
もっとも、生活費は権利者が持ち家かどうか、また教育費も学校関係だけか、塾や習い事まで含むかで大分変わるでしょう。他にも養育に必要な費用は個々の事情で変わります。
 

一方支払期間については親の親権が子に及ぶのは成年になるまでであり、2022年4月の民法改正後、これまで20歳だった成年年齢が18歳に引き下げられました。となれば養育費の支払期限もまた18歳が一つの目安となるともいえそうです。しかし大学進学率が50%を超える日本では、少なくとも20歳まで、あるいは大学卒業時(22歳)まで支払う形が多いと考えられます。

養育費の額に相場はあるの?

養育費は権利として当然に相手側へ請求できることはお分かりいただけたと思います。
しかし、実際にいくら請求するべきなのかが分からないと協議の目処が立ちにくいかもしれません。以下の説明がご参考になるかと思います。

「相場」はないが家庭裁判所による「算定表」を目安にできる

離婚後、義務者と養育費の取決めをしている単親家庭は42.9%との調査があり、以前よりは増えてきています。

引用:「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」より母子家庭の場合【厚生労働省】
 

しかし、実際に継続して養育費の支払いがある母子家庭の割合は24%、その平均額は月額43,707円となっています。しかもこれはあくまでも「受け取れている」額であり、相場とするべきではありません。
一方、家庭裁判所が離婚調停や審判において使用する養育費の適正額を算定するための表が公表されています。こちらは権利者、義務者の年収(給与所得者と個人事業主の別あり)、子の数及び離婚時の年齢から適正といえる額を割り出しているため、ある程度養育費相場の目安となり得ます。
例えば、0〜14歳の子が1人で親権者が母、父の年収700万円で母の年収200万円の場合だと月6〜8万円が適正額と算定されます。
もっとも、実情として子の養育費として十分といえるかは難しいところです

実際には協議で各家庭の実情にあった額を決めればよい

養育費算定表は目安であり、適正とされる額から離れていても、夫婦間で協議を行い、個々の家庭の事情に基づき双方が納得できる額が決められれば金額はいくらであっても問題ありません。筆者が関係した案件でも、子1人につき月々3~20万円以上までさまざまな事例がありました。
養育費に目安はあっても相場はない―結論としてはそういえるでしょう。

確実に養育費を得るには公正証書がおすすめ

公正証書は公証役場で公証人が作成する、一般的な契約書(私文書)より高い証拠力が認められ、さらに直接強制執行力をも有する書類(「債務名義」)です。
離婚協議書も契約書の一種ですから、公正証書で作成しておくことで権利者には様々なメリットが得られます。

公正証書なら比較的簡単に強制執行が可能

離婚協議書を公正証書で作成しておくことで、証書内で取り決めた養育費の支払いが滞った場合に公正証書そのものを債務名義として、強制執行、すなわち義務者の財産差押えの申立てができます。
強制執行の申立ては証書内で取り決めた管轄の地方裁判所に、公正証書の正本や差押え対象(義務者の勤務先や義務者が口座を有する金融機関)などを提出して行います。
以前は義務者の差押え対象口座がどこにあるか不明の場合、権利者が探し当てるのは困難でした。しかし2020年4月の民事執行法改正により「第三者からの情報取得手続」という制度が設けられ、裁判所を介して銀行などの第三者に財産開示を求めることができるようになりました。これにより強制執行の実現が以前より容易になったことは大きなポイントです。
 

なお、公正証書を債務名義として強制執行を行うためには、作成時や申立時にいくつか注意が必要です。ここでは割愛しますが、公証人から説明がされますのでしっかり聞いておきましょう。

一方が応じない場合は調停か審判で

養育費の金額について夫婦間で協議がまとまらなかったり、一方が協議に応じなかったりする場合は家庭裁判所に養育費を求める調停を申立てることができます。
申立ては一方当事者のみでも行うことができ、調停は裁判官1名、調停委員2名(以上)が当事者の話を聞いて協議がまとまるよう助言します。専門知識を有する第三者の意見を参考にすることで夫婦間の話し合いを円滑にまとめることを目的とした手続です。
 

調停でも決着がつかない、あるいは一方当事者が調停に出てこない場合には調停不成立となり、自動的に審判に移行します。
審判手続では、裁判官が当事者から聞いた説明や提出された資料をもとに、上記の算定表や個々の事情を鑑みて具体的な養育費額についての判断を下します。
 

これらの調停証書・審判調書も、もちろん債務名義となります。裁判手続と聞くと面倒なイメージがあるかもしれません。しかしいずれの手続きも法廷ではなく個室で行われますし、費用もそれほどかかりません。協議が整わない際には利用を検討することをおすすめします。

養育費支払いが滞った場合の回収方法

養育費の取決めをしていても、肝心の支払いが継続して受けられなければ意味がありません。支払いがなくなった場合の回収方法についても知っておきましょう。

話し合いで解決できる場合も

なお衰えぬコロナ禍や、ここしばらくの円安など、景気が不安定なここ数年は特に、義務者の収入が大幅に減り、養育費全額が支払えなくなるということもあるでしょう。
このような場合、当事者間で協議を行い、期限を定めて養育費の減額を認めるという選択肢もあります。子のためにもできる限り父母が連絡を取り合える関係は残しておきたいものです。

公正証書か裁判で強制執行をする

特に理由も説明もなく突然養育費の支払いが止まり、義務者に催促しても支払われないときには、前項で述べたように公正証書などの債務名義をもって相手の財産に強制執行をかけることが可能です。
 

債務名義がない場合であっても諦める必要はありません。
義務者の住所地を管轄とする裁判所に養育費支払いの申立てをする方法があります。ただし申立てから調停もしくは審判調書といった債務名義を得るまである程度時間がかかることは覚悟しましょう。

まとめ

養育費は子の養育のために父母それぞれが負担しなければならない大切な費用です。「とりあえず離婚さえできれば養育費は要らない」で済ませられる問題ではありません。互いが納得できるまで話し合い、できる限り公正証書等債務名義となる書類を離婚時に作っておきましょう。

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橋本玲子
行政書士事務所経営。宅地建物取引士、知的財産管理技能士2級取得。遺言執行や成年後見などを行う一般社団法人の理事も務めている。
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