2024年秋に健康保険証がマイナンバーカードに一本化へ 「マイナ保険証」で何が変わるのか? | MONEYIZM
 

2024年秋に健康保険証がマイナンバーカードに一本化へ 「マイナ保険証」で何が変わるのか?

河野デジタル大臣は、2023年10月13日、現在使われている「紙の健康保険証」を2024年秋に原則廃止して、マイナンバーカード(「マイナ保険証」)に一本化する方針を明らかにしました。政府は、マイナンバーカードの普及に向けて、取得して利用するとポイントがもらえる「マイナポイント」などを実施した結果、普及率は77%(2023年5月末時点)と高まっています。
「マイナ保険証」への一本化は、これまでの「カードを作ると得する」という方策から、「ないと困る」に転換し、一気にその普及を進めることが主な目的といえるでしょう。一方、保険証がデジタル化されることで、利用者にとっては、いくつかのメリットが生まれます。同時に、気がかりな点も。何が変わるのかを中心に解説します。

デジタル化の加速を狙う

すでに本格運用されている「マイナ保険証」とは?

マイナンバーカードに健康保険証としての機能を持たせた「マイナ保険証」は、2021年10月20日からすでに本格運用が始まっています。病院などの医療機関や薬局の窓口でこれをカードリーダーにかざすことで、保険証として利用します。2023年5月28日時点で、マイナ保険証の登録件数は約6,200万件程度です。マイナンバーカードの保有者のうち約69%がマイナンバーカードを健康保険証として利用できるように登録しています。

マイナンバーカードでは、カードに内蔵されたICチップ内の「電子証明書」を使って本人確認が可能です。マイナンバーそのものを使うことはないため、そこからナンバーが流出するなどの恐れはありません。また、マイナンバーカードをカードリーダーにかざした後に、顔写真でも本人確認を実施するため、保険証としての不正利用を防ぐ仕組みになっています。

マイナンバーカード自体の申請も77%

マイナンバーカードは利用用途が広がっていることや、発行や保険証としての利用登録によるポイント還元があったころから、申請が急増しています。2023年3月頃に申請が急増し、現時点でも一定の申請があったり発行待ちの人がいたりする状況です。
 

また、2023年5月にはマイナンバーカードの機能を特定のスマートフォン上で利用できるようになりました。カードを持ち歩かなくとも、一部のサービスが利用できるようになったため、利便性が今まで以上に向上しています。このサービスは段階的に拡張する予定となっていて、この先数年でスマートフォンから多くの申請ができるようになる見込みです。
 

他にも、2024年度末までを目標として、運転免許証との一体化も予定されています。これは検討段階で正式な発表ではありませんが、マイナンバーカードの利便性が高まれば、さらに申請が増え普及するでしょう。

マイナンバーカードを保険証にするメリットは?

述べたように、「マイナ保険証」には、病院などの医療機関や薬局の窓口で、カードをカードリーダーにかざすだけで保険証として使える、という便利さがあります。ただし、メリットはそれだけではありません。

・転居や転職しても継続して使える

「紙の保険証」では、引っ越しや就職、転職をしたら、その都度、保険証を切り替える必要がありました。「マイナ保険証」にすれば、その必要はなく、継続して健康保険証として使用することができます。

※健康保険組合など保険者への加入の届出は、必要です。
・医療保険の資格確認が円滑に行える

マイナンバーカードを保険証として使っていれば、窓口のカードリーダーにマイナンバーをかざせば、スピーディに医療保険の資格確認をすることができます。そのため、窓口での待ち時間を減らせるなどのメリットがあります。

・手続きなしで高額療養費制度における限度額以上の支払が免除

高額の療養費がかかった場合、一定限度額以上支払った分は後で健康保険組合などから返金がされます。ただし、今までは原則、いったん療養費の全額を支払った後で、手続きをして返金を受ける必要がありました。しかし、マイナンバーカードを保険証として使っていれば、窓口での支払が限度額までに抑えられるため、保険証利用者の負担は大きく減少します。

※自治体が独自に行っている医療費助成を利用する場合は、手続きは必要です。
・医療費控除の手続きが簡単に

マイナポータルを通じて医療費控除の手続きを行うことで、医療費控除などの金額が、自動で入力されるようになります。そのため、自分で医療費の金額などを計算する必要がなく、医療費控除の手続きがスムーズになります。

・医療機関の間で診療内容が共有される

例えば、医療機関でどんな薬を処方されたのかについては、「おくすり手帳」などで患者が自ら管理し、他の医療機関にかかる場合などには、自分で説明する必要がありました。しかし、「マイナ保険証」には自動でそうしたデータが記録されるため、医療機関の側で情報を共有することが可能になります。

・健康管理や医療の質が向上

今後の予定として、マイナンバーカードを保険証として使っている場合は、マイナポータル(政府が運営するオンラインサービス)から、自分の特定健診情報や薬剤情報が確認できるようになります。そのため、自分自身で健康管理を行ったり、医療機関や薬局などで受ける医療の質を向上させたりできるようになります。

・医療保険の事務コストの削減

これは、医療機関側のメリットになりますが、「マイナ保険証」が普及すれば、医療保険の事務コストの削減につながります。医療機関では、保険負担の医療費について国などに請求を行いますが、それらに関する事務量が減り、請求の誤りや未収金が多いなどの問題の解消に役立つものと期待されています。

「マイナ保険証」の課題

一方で、「マイナ保険証」には、今後改善、明確にすべき課題もあります。

使える医療機関が限られている

便利さがアピールされる「マイナ保険証」ですが、実は使える医療機関は、限られています。対応する医療機関は少しずつ増えていく予定ですが、システム導入によるコストの増加といった問題もあり、「全てでOK」となるまでには、時間を要しそうです。
 

「マイナ保険証」が使えるかどうかは、厚生労働省などのホームページで確認できます。

患者の負担が増える!?

「マイナ保険証」の本格導入後に明らかになったのは、「紙の保険証」を使うよりも、患者の自己負担額が増える、という問題でした。今触れた医療機関のコスト増対策として、「マイナ保険証」利用者の診療報酬を上乗せしたためですが、わざわざカードと保険証を紐づける手続きを行ったにもかかわらず、負担額が増えることには、批判も高まりました。
 

この点では、「マイナ保険証」利用者の診療報酬を引き下げ、「紙の保険証」利用者は逆に引き上げることで、前者の方が割安になる制度設計に向けた検討が始まっています。

セキュリティは万全か?

デジタル化で心配になるのは、個人データが流出したり、システムトラブルなどによる不利益(例えば、保険資格の確認ができなくなる)が生じたりしないか、ということです。マイナンバーカードにさまざまな情報が集約されることで、紛失や盗難時のリスクも高まります。国は、そうしたことに対応するセキュリティ対策について、繰り返し説明していく必要があるでしょう。

データの連携ミスなどトラブルが多発

マイナンバーカードの多目的な利用が進められていますが、情報の連携ミスが多発しています。例えば、健康保険証に連携されている情報が異なり、本人確認に問題が発生したり他者の情報が表示されたりしている状況です。健康保険証に紐づく情報は、重要な個人情報が含まれるため、このような状況は望ましくありません。

急ぎすぎた普及で課題が残る

マイナンバーカードの保険証利用は急速に推し進められました。その結果「使い方が分からない」「情報の登録内容を間違える」など人的な誤りが発生しています。また、マイナンバーカードを読み取る端末は、半導体の不足により供給が追いついていない状況です。DXの推進も背景にあり、急速にマイナンバーカードが推し進められましたが、その弊害が見られることも事実です。

マイナンバーカードを保険証にするための手続き

すでにマイナンバーカードを持っていて、健康保険証の利用登録を行っていない場合、それをすれば、「マイナポイント」がやはり7,500円分付与されます。最後に、その手続きを説明しておきましょう。

事前準備

事前準備として、次のものが必要です。
 

①マイナンバーカード
②数字4桁の暗証番号
数字4桁の暗証番号とは、マイナンバーカードを受け取る際に市区町村の窓口で設定した利用者証明用電子証明書のパスワードのことです。
③スマホ(マイナンバーカード読取対応のスマホで申し込みの場合)
④ICカードリーダー(パソコンで申し込みの場合)

・マイナポータルのアプリをインストール

マイナポータルのアプリをインストールします。スマートフォン版のアプリは「GooglePlay」または「AppStore」からインストールします。パソコン版のアプリは、マイナポータルのサイトからインストールできます。

・保険証利用の申し込み

マイナポータルの画面を立ち上げ、保険証利用の申し込みを行います。手順は次の通りです。
 

①マイナポータルの画面(保険証利用)で「利用を申し込む」もしくは「健康保険証利用申込」をタップすると「保険証利用登録」も画面が開きます。
②利用規約の確認が行われるため「同意して次へ進む」をクリックします。
③マイナンバーカード読取の画面に切り替わるので「申し込む」をクリックします。パソコンで申し込みをする場合は「申し込む」をクリックする前に、ICカードリーダーを接続し、マイナンバーカードをセットしておく必要があります。
スマホで申し込みをする場合は「申し込む」をクリックした後で、マイナンバーカードを端末にかざす必要があります。
④パスワード入力
「申し込む」をクリックすると、パスワードの入力画面に切り替わります。数字4桁の暗証番号の入力が求められるので暗証番号を入力し、「OK」もしくは「申し込み」をクリックすると申し込みの完了です。

※マイナンバーカードの保険証の利用は、セブン銀行ATMからも申し込めます。その場合は、マイナンバーカードと数字4桁の暗証番号を準備し、セブン銀行ATMの画面の案内にしたがって、操作していきます。

YouTubeで「マイナ保険証」について解説中!

紙の保険証廃止へ マイナ保険証で医療費は安くなる?【3分かんたん確定申告・税金チャンネル】

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まとめ

2024年秋に現在の健康保険証が廃止され、マイナンバーカードと一体化される方針が示されました。事実上、マイナンバーカードの取得が「義務化」される方向です。現在実施されているマイナポイント第2弾を利用したい場合には、今年末というカード申請期限、23年2月末というマイナポイントの申込期限までに必要な手続きを終えるようにしましょう。
 

松崎ぶっち
立命館大学卒。
在学中に起業・独立などにあたり会計や各種監査などの法規制に対応するためのシステム導入ベンダーを設立。紆余曲折を経て多くのシステムを経験。
システム導入をされるお客様の起業活動を通じて得た経験、知見を活かし皆さんの気になるポイントを解説します。
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