アイドルの“推し活”資金欲しさに勤務先のお金を着服 プレゼントをもらったほうには、課税されるのか? – マネーイズム
 

アイドルの“推し活”資金欲しさに勤務先のお金を着服 プレゼントをもらったほうには、課税されるのか?

2022年10月11日、三重県警は、勤務先だった同県の町立病院の口座から現金1億1,200万円を引き出し着服したとして、業務上横領の疑いで38歳の元職員を再逮捕しました。病院の会計業務を担当していた元職員は、すでに4,300万円あまりを着服したとして2度逮捕・起訴されていました。この事件であ然とさせられたのは、着服額の大きさもさることながら、その動機がアイドルグループの“推し”に課金するためだったことです。ところで、元職員は、着服したお金で、特定のアイドルに高価なバッグなどをプレゼントしていたといいます。この場合、受け取ったほうの「税金」はどうなるのでしょうか? 「プレゼントと税金」について考えます。

事件の概要

着服額は1億5,500万円

10月の逮捕容疑は、2019年5月から22年6月ごろにかけて、診療費などの入った病院の口座から、現金約1億1,200万円を横領したというもの。元職員は容疑を認め、「アイドルのイベントや2ショット写真の代金などに使った」と話しているといいます。町は今年8月に、1億5,500万円の横領があったとして告訴状を提出しており、これでその全額分で逮捕されたことになります。

実際は何に使ったのか?

それにしても、1億5,000万円というのは、相当「使い出のある」金額です。全国のイベントに出かけたり、2ショット写真に課金したりしても、数年で消費するのはかなり大変かもしれません。
 

この点に関して、週刊誌報道などでは、“推し”のアイドルに対して、ディオール、シャネル、ルイ・ヴィトンといったハイブランドのバッグやシューズを、毎週のようにプレゼントしていた、という「自供」以外の出費も報じられています。事実だとすると、アイドルが受け取ったプレゼントも、相当な金額に上るはずです。

アイドルには納税義務が生じる?

該当するのは「贈与税」

このように、他人から高額なプレゼントを贈られた場合、受け取ったほうには税金がかかるのでしょうか? 答えは、「場合によっては課税される」です。
 

金品を贈る(贈与する)ことによって、受け取った側に発生する税金を「贈与税」といいます。とはいえ、贈与があった場合に必ず贈与税が課税されるのかというと、そうではありません。
 

例えば、結婚式でもらった「ご祝儀」は、基本的に非課税です。「個人から受ける香典、花輪代、年末年始の贈答、祝物または見舞いなどのための金品で、社会通念上相当と認められるもの」(国税庁ホームページ)などには、贈与税はかからないのです。
 

また、この贈与税には、「年間110万円まで」という「基礎控除額」があります。この金額の範囲ならば、課税はされません(110万円を超えた分が課税対象になります)。「場合によっては課税される」というのは、そういう意味です。

アイドルは課税対象となる公算大

では、今回の元職員の“推し”で、ブランド品などのプレゼントをもらっていたアイドルのケースでは、贈与税は課税されるのでしょうか?
 

まず、プレゼントの意図や中身などから考えて、贈与税の発生しない「社会通念上相当と認められるもの」に該当するとは、考えられません。問題は金額ですが、毎週のようにハイブランドの商品をプレゼントしていたのならば、年間110万円という基礎控除額をはるかに超えていた、とみるのが自然でしょう。このアイドルの場合には、贈与税の課税対象となる可能性が高いものと思われます。
 

ちなみに、贈与税は、贈与された金額が高くなるほど税率が上がっていく「累進課税」となっており、一般贈与財産(※)の場合、最高税率は55%(基礎控除後の課税価格3,000万円超)です(この税率では、最終的に400万円が控除されます)。
 

贈与税の速算表【一般贈与財産用】
基礎控除後の課税価格 200万円以下 300万円以下 400万円以下 600万円以下 1,000万円以下 1,500万円以下 3,000万円以下 3,000万円超
一般税率 10% 15% 20% 30% 40% 45% 50% 55%
控除額 - 10万円 25万円 65万円 125万円 175万円 250万円 400万円

引用:贈与税の計算と税率(暦年課税【国税庁】
 

仮に、1年間に基礎控除額110万円を超えて1,000万円の贈与を受けた場合、贈与税の金額は、「1,000万円×40%-125万円=275万円」になります。特に高額の贈与になると、かなりシビアな税金を取られることになるのです。

※ 贈与を受けた年の1月1日時点で18歳(2022年3月31日以前の贈与については20歳)以上の受贈者(贈与を受けた人)が、父母や祖父母などの直系尊属から贈与により財産を取得した場合には、「特例贈与財産」として、これとは別の計算になる。

税を申告しないとどうなる?

今回の事件に話を戻すと、週刊誌報道によれば、このアイドルは、元職員の横領発覚後に知人に対して「税金の心配」を口にしていたといいます。ということは、少なくともその時点では、贈与税の申告・納税をしていない「無申告」の状態だったことになります。
 

もし、それが税務署にバレた場合には、未払いの税金(本税)に加えて、「無申告加算税」というペナルティを追徴されることになるでしょう。贈与を意図的に隠したり、申告書を偽造したりすれば、さらに重い「重加算税」の対象になるかもしれません。
 

無申告加算税は、期限までに確定申告を行わず、なおかつ納付すべき税金があった場合に課せられる税金で、原則として納める税額が50万円までは納付税額の15%、50万円を超えた場合部分については20%が加算されます。なお、税務署から指摘される前に、自主的に納付した場合は、5%に軽減されます。
 

さらに、「延滞税」も納付しなければなりません。これは、期限までに納税しなかったことに対するペナルティとして課される税金で、税金の納付期限の翌日から完納されるまでの日数を基に計算されます。原則として納付すべき日から2カ月までは7.3%、2カ月を過ぎると年14.6%が、本税に課税されることになっています。
 

アイドルは、元職員に欲しいものをリクエストしていたとも報じられていますが、ペナルティはかなり高いものにつきそうです。なお、言わずもがなですが、物でプレゼントを受け取っていたとしても、贈与税の納税は現金でしなくてはなりません。
 

まとめ

他人からもらったプレゼントには、「社会通念上相当と認められるもの」に該当せず、年間110万円を超えた場合、贈与税がかかります。税率が高いので、特に高額の金品を受け取るときには要注意。また、申告を怠っていると、「加算税」や「延滞税」の対象になる可能性があります。
 

マネーイズム編集部
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