不動産業開業の際に利用したい補助金・助成金について解説 | MONEYIZM
 

不動産業開業の際に利用したい補助金・助成金について解説

不動産業を開業するためには、多くの資金が必要になります。しかし、開業のための資金をすべて自分で用意するのは難しい場合も多いでしょう。
 

そこで、活用したいのが、国や自治体が用意している補助金・助成金です。ここでは、不動産業を開業するための流れや、開業の際に利用したい補助金・助成金について解説します。

不動産業の開業の流れと必要なお金

はじめに、不動産業の開業の流れと、開業にかかるお金について見ていきましょう。

不動産業の開業の流れ

不動産業の開業までには、様々なことを行う必要があります。一般的な不動産業の開業までの流れは、次のようになります。

・事務所の設置と開業

まずは、不動産業を営むための拠点、すなわち事務所(店舗)を設置する必要があります。不動産業では、事務所や店舗をどこに置くかによって、業績が大きく変わることもあります。そのため、立地や周囲の環境などをよく考えて、事務所を置く場所を決めましょう。
 

本拠地が決まったら、次は、開業や会社の設立です。個人事業主の場合は、開業届などを税務署に提出する必要があります。

・宅地建物取引士の設置

不動産業を営むためには、事務所ごとに一定人数の宅地建物取引士を置く必要があります。原則、従業員数が5名までなら、1人の宅地建物取引士が必要になります。
 

・宅地建物取引業免許の取得

宅地建物取引業を営むためには、宅地建物取引業免許(国土交通大臣または都道府県知事の免許)の取得が必要です。これは、個人事業主であっても、法人であっても必要になります。
 

・宅建協会もしくは全宅保証への加入

最後に、宅建協会もしくは全国宅地建物取引業保証協会(全宅保証)に加入します。宅建協会や全宅保証への加入は任意ですが、法務局への1,000万円の営業保証金が免除されたり、会員同士で情報共有ができたりとメリットが多いため、一般的には加入します。

不動産業の開業に必要なお金

次に、不動産業の開業にはどれぐらいのお金が必要かを見ていきましょう。不動産業の開業には、次のようなお金が必要になります。

・事務所の設置費用

事務所の設置には、敷金や家賃、内装工事費用だけでなく、OA機器などの備品の費用も必要です。事務所の場所や物件の状態によって設置費用は異なりますが、少なくても100万円以上、多い場合は400万円以上の資金が必要になります。

・営業保証金

不動産業を営む場合には、法務局へ本店ごとに1,000万円、支店ごとに500万円の営業保証金を法務局に供託する必要があります。ただし、宅建協会もしくは全宅保証へ加入している場合は、不要です。宅建協会や不動産保証協会などに加入する場合は、加入金などが100万円程度かかります。

・そのほかの費用

そのほか、事務用品費や自動車、免許申請の手数料、当面の生活費などが必要となります。
 

不動産業の開業のための費用は、宅建協会もしくは全宅保証へ加入している場合、おおむね400万~1,000万円程度必要です。

不動産業の開業に使える補助金・助成金とは

不動産業の開業には、多くの資金が必要です。そのため、利用できる補助金や助成金は、積極的に活用したいところです。
 

ここからは、不動産業の開業に使える補助金・助成金について見ていきましょう。

そもそも補助金・助成金とは?

まず、補助金と助成金の違いについて見ていきましょう。
 

補助金も助成金も、国や自治体から給付されるお金で、返済する必要がないという点では同じです。そのため、銀行などの金融機関の融資に比べると、かなり資金繰りが楽になります。補助金と助成金の大きな違いは、次のようになります。

・補助金

補助金は、国や自治体の政策に則った事業に対して給付されるものです。受給するためには審査があり、審査に通らないこともあります。

・助成金

助成金は、おおむね労働環境の改善のために給付されるものです。原則、要件を満たせば給付されます。
 

助成金は原則、要件を満たせば給付されるため、補助金よりも受給しやすくなります。

不動産業の開業に使える補助金・助成金

補助金や助成金には多くのものがありますが、不動産の開業に使える代表的なものには次のものがあります。

・IT導入補助金

IT導入補助金とは、ITツールの導入に使うことのできる補助金のことです。ITツールの導入の最大1/2が補助されます。IT導入補助金には、通常枠として、補助金の金額の違いによりA類型(補助額:30万~150万円未満)とB類型(補助額:150万~450万円以下)の2つがあります。
 

不動産業においては、賃貸物件総合管理システムや不動産売買の管理ソフトなどの導入などに使うことができます。IT導入補助金には、そのほか特別枠なども用意されています。
 

・小規模事業者持続化補助金

小規模事業者持続化補助金は、販路開拓や生産性向上に取り組む費用などが補助されるものです。販路開拓や生産性向上などにかかった費用の最大2/3が補助されます。小規模事業者持続化補助金には、「通常枠」「インボイス枠」「賃金引上げ枠、卒業枠、後継者支援枠、創業支援枠」の3つがあります。
 

不動産業においては、チラシの作成費用や店舗改装費用などに使えます。

・事業再構築補助金

事業再構築補助金は、新型コロナウイルスの影響などによる経済環境の変化に対応するために、新分野展開、業態転換などを行う場合に利用できる補助金です。
 

不動産業においては、他事業から新たに不動産業に転換する場合の建物の内装工事や、システムの導入費などに使うことができます。

・キャリアアップ助成金

キャリアアップ助成金とは、従業員のキャリアアップを促進するための費用を補助する助成金です。キャリアアップの内容により、様々な助成金のコースがあります。
 

不動産業においては、派遣社員を正規雇用に転換する場合などに使えます。

開業後の税務署への手続き

補助金などを使い、不動産業を開業した場合は、税務署への手続きが必要です。個人事業主の場合は、通常「開業届」と「青色申告承認申請書」を税務署に提出します。

・開業届

開業届は、不動産業を開業したことを税務署に知らせるための届出書です。開業後、1か月以内に税務署に提出します。

・青色申告承認申請書

青色申告をする場合は、青色申告承認申請書を税務署に提出します。提出期限は、青色申告をする年の3月15日まで(その年の1月16日以後開業の場合には、開業から2か月以内)です。
 

青色申告をすると、最大65万円の青色申告特別控除や、赤字の繰り越しなどの特典が受けられます。なお開業届、青色申告承認申請書の用紙は、国税庁のサイトや税務署の窓口で入手することができます。

まとめ

不動産業の開業には、多くの資金が必要となります。不動産業の開業のための費用は、宅建協会もしくは全宅保証へ加入している場合、おおむね400万~1,000万円程度必要です。
 

これだけのお金を自己資金で用意することは、容易ではありません。そこで、不動産開業に使える補助金や助成金を利用しましょう。
 

補助金や助成金は、利用できる目的や金額が様々です。自社にあった補助金や助成金があれば、積極的に申請することが重要となるでしょう。
 

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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