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エコカー減税、グリーン化特例も延長へ

政府は、2023年4月に期限を迎えた「エコカー減税」について、現行の基準を3年間延長することを決定しました。物価高や半導体不足に伴い納車に時間がかかっていることを踏まえ、一定期間延長して購入者の負担増や混乱を避ける必要があると判断したようです。
 

また、エコカー減税だけでなく、グリーン化特例も延長されます。ここでは、エコカー減税やグリーン化特例の延長について解説します。

そもそもエコカー減税とは

エコカー減税とは、環境性能が優れている車が税金の優遇措置を受けられる制度のことをいいます。エコカーに該当するのは、国土交通省が定める環境基準を満たす車であり、対象車を購入すれば、環境性能の高さに応じて、自動車重量税が25〜100%減税されます。

※自動車重量税:自動車重量税は自動車の重量に応じて課税される税金です。自動車重量税は車の新規登録時と車検(新車は3年、2回目以降は2年ごと)のタイミングでまとめて納付する仕組み。

減税の対象となる車種は、「燃費基準」と「排ガス規制」を達成しているかで判断されています。
 

主な対象車として、下記が挙げられます。
● 電気自動車
● 燃料電池自動車
● 天然ガス自動車
● クリーンディーゼル乗用車
その他にも、ガソリン車やガソリンと電気両方を使うハイブリッド車も対象となります。

エコカー減税の期間が延長に

エコカー減税は、減税対象となる燃費基準の定期的な引き上げが必要であるため、数年ごとに期間を限定して行われるのが通例となっています。燃費の良い自動車にかかる税を優遇する「エコカー減税」は、4月に期限を迎える予定だったため、税制改正の焦点のひとつにもなっていました。
 

政府は新車として販売される車のうち、電動車の割合を、100%にする目標を掲げており、電動車ではない車への減税は対象を絞り込み、縮小していく方針のようです。しかし、現在の世界的な半導体不足の影響を踏まえ、当面は今の基準を据え置き、延長する方向で検討に入りました。消費者に急激な影響が出ないよう段階的に引き上げ、同時に脱炭素の取り組みを進めていく方針のようです。
 

今後の延長期間については、自動車業界や経済産業省から「1年間の現状維持」を要望する声が出ている一方で、環境面の技術競争を阻害する恐れがあることから、慎重に検討していくとしています。
 

2023年度税制改正大綱に盛り込まれたエコカー減税の改正とは

2023年度の税制改正大綱には、エコカー減税の改正について多くの事項が盛り込まれました。
2023年度税制改正大綱に盛り込まれたエコカー減税の改正のポイントは、次のようになります。

・2023年12月末まで

はじめに、現行のエコカー減税の制度は、異例の措置として2023年12月末まで継続されます。そのため、2023年中はエコカー減税の制度が変更になることはありません。

・2024年1月1日以降

2024年1月1日以降は、2026年4月末にかけて段階的にハイブリッド・ガソリン車の燃費基準を切り上げていきます。2024年1月1日以降のエコカー減税の改正は、次のようになります。

車種 減免区分 現行 据置期間 基準切り上げ
23年4月30日まで 23年5月1日
~12月31日
24年1月1日
~25年4月30日
25年5月1日
~26年4月30日
電気自動
車等※1
登録時・初回車検時が免税 達成要件なし
ガソリン車・LPG車・クリーンディーゼル車※2
(2030年度燃費基準)
登録時・初回車検時が免税 燃費基準 120%達成 燃費基準 125%達成
免税 燃費基準 90%達成 燃費基準 100%達成
50%減税 燃費基準 75%達成 燃費基準 80%達成 燃費基準 90%達成
25%減免 燃費基準 60%達成 燃費基準 70%達成 燃費基準 80%達成
本則税率
(経過措置)
燃費基準 75%達成
※1 電気自動車等には、電気自動車、一定基準を満たした天然ガス自動車、燃料電池車、プラグインハイブリッド車が含まれます。
※2 クリーンディーゼル車は、2023年12月31日までは特例措置が講じられます。2020年度燃費基準達成の場合は免税、未達成の場合は当分の間、税金が課されます。2024年1月以降は、上の表に従います。

今回の改正では、エコカー減税の期間が3年間延長されましたが、燃費基準が切り上げられています。これにより、政府の目指す「カーボンニュートラル」実現にさらに近づくものと考えられます。
 

また、エコカー減税以外にも、環境性に優れる自動車に対する税の軽減措置として「環境性能割」があります。環境性能割は、2019年に自動車取得税が廃止になった際に導入された税金で、自動車の購入時に価格に課税されます。この環境性能割も今回の税制改正で見直しがされ、2026年4月末にかけて、段階的に引き上げられます。 

現行制度(2023年12月末まで継続)では、ガソリン車・LPG車などの場合、非課税となる基準が、自動車は燃費基準85%達成、軽自動車は燃費基準75%達成でしたが、2025年5月~2026年3月末の期間では、自動車が燃費基準95%達成、軽自動車が燃費基準80%達成で非課税となります。
 

同様に、税率1%、2%、3%における燃費の達成基準も引き上げられるため、注意が必要です。

2023年度税制改正でグリーン化特例も延長される

2023年度税制改正ではエコカー減税だけではなく、グリーン化特例も延長されます。ここでは、グリーン化特例の内容や延長の内容について見ていきましょう。

グリーン化特例とは

グリーン化特例とは、自動車税・軽自動車税について、環境性能の良い車を取得すれば税金を軽減し、逆に環境負荷が大きい車を取得すれば、税金の負担を大きくするという特例です。電気自動車や燃料電池自動車、一定の排ガス規制に適合した天然ガス自動車などが対象となります。
 

グリーン化特例の適用期間中に新車新規登録を行った場合に限り、当該年度の翌年度分について特例措置が適用されます。

2023年度税制改正におけるグリーン化特例の改正とは

2023年度税制改正におけるグリーン化特例の改正では、自動車税・軽自動車税ともに現行制度の適用期限を3年延長することになりました。延長されるグリーン化特例の内容は、次のようになります。
 

1.自動車税

・軽課(いわゆる減税)

車種 2023年3月31日まで 2023年4月1日~2026年3月31日
乗用車 ・電気自動車
・ 燃料電池自動車
・ 天然ガス自動車
(一定の排ガス規制に適合)
・ プラグインハイブリッド自動車
概ね75%軽減 概ね75%軽減
重量車等
(バス・トラック)
・電気自動車
・ 燃料電池自動車
・ 天然ガス自動車
(一定の排ガス規制に適合)
・ プラグインハイブリッド自動車
概ね75%軽減 概ね75%軽減

 

・重課(いわゆる増税)

車種 2023年3月31日まで 2023年4月1日~2026年3月31日
13年超のガソリン車、LPG車 概ね15%重課 概ね15%重課
11年超のディーゼル車 概ね15%重課 概ね15%重課

※バス(一般乗合バスを除く)及びトラック(被けん引車を除く)については、概ね10%重課
2.軽自動車

・軽課(いわゆる減税)

車種 2023年3月31日まで 2023年4月1日~2026年3月31日
乗用車 ・電気自動車
・ 燃料電池自動車
・ 天然ガス自動車
(一定の排ガス規制に適合)
・ プラグインハイブリッド自動車
概ね75%軽減 概ね75%軽減
重量車等
(バス・トラック)
・電気自動車
・ 燃料電池自動車
・ 天然ガス自動車
(一定の排ガス規制に適合)
概ね75%軽減 概ね75%軽減

 

・重課(いわゆる増税)

車種 2023年3月31日まで 2023年4月1日~2026年3月31日
初めて車両番号の指定を受けてから13年を経過した軽自動車 概ね20%重課 概ね20%重課

※電気自動車、燃料電池自動車、天然ガス自動車などを除く

まとめ

地球環境保全のために、環境性能に優れた車に対して税制優遇が導入されたエコカー減税。特例措置が延期されるのは自動車ユーザーにとって嬉しいことですが、車の購入を検討している方は、車両の取得価額だけでなく、排出ガス・燃費などの環境性能を比較し、どれくらい減税・免税があるのかも検討してみることが大切です。
 

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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