75歳以上の医療保険料の負担増?!出産育児一時金増額のしくみとは? – マネーイズム
 

75歳以上の医療保険料の負担増?!出産育児一時金増額のしくみとは?

厚生労働省は増額が予定される出産育児一時金の財源を後期高齢者にも負担を求める方針を固めました。令和4年10月から、一定の人を対象に後期高齢者の自己負担割合が2割になったばかりです。
この記事では、予定される出産育児一時金の増額や後期高齢者の費用負担について考えます。

出産育児一時金の概要と増額への動き

そもそも出産育児一時金とは?

出産にあたっては、健康保険、自治体、企業などにおいて、いろいろな制度が準備されています。
出産育児一時金とは、健康保険に加入している人やその扶養家族が妊娠し、出産した場合に支給される一時金のことを言います。
 

出産育児一時金は、健康保険法による給付として、健康保険は政令で、国民健康保険については市区町村の条例にて出産の経済的負担軽減を目的として、現在42万円支給されています。
 

一時金の支給にあたっては、直接支払われる方法のほか、受取代理制度があり、平成23年度から実施されてます。
受取代理制度とは、まず、医療機関を受取代理人として出産育児一時金等を事前に申請し、医療機関等が被保険者等に代わって出産育児一時金等を受け取ります。そして、退院時の出産費用精算の際に入院費用と一時金を相殺するという方法です。
この制度により、被保険者等があらかじめまとまった現金を用意するという経済的負担の軽減が図られます。
 

出産育児一時金の制度は約30年前の平成6年に支給額30万円でスタートし、当初は全世代が負担するしくみとなっていました。
ところが、平成20年に後期高齢者医療制度が創設された際には、出産育児一時金について、それまでの「全世代での負担」から「75歳未満の者による負担」となりました。
その後、出産費用の値上がり等に伴い平成21年10月に現在の42万円が支給されるようになりました。
実際には、自治体や健保組合等の上乗せにより、42万円以上支給される場合もあります。

出産育児一時金の増額とは?

少子化は従来より懸念されてきましたが、新型コロナの影響により、出生数の減少が早まるとされています。
厚生労働省の令和3年の人口動態調査によりますと、令和3年の出生数は811,622人であり、昭和60年の1,431,577人の約57%となり、下のグラフのように毎年のように出生数は減り続けています。

危機的な状況とも言える出生数の減少に対し、令和4年度からは不妊治療の支援策や産後ケアの推進などの取り組み、さらに令和5年4月からは出産育児一時金についても増額することになりました。
 

出産育児一時金の支給額は、従来の42万円の支給に対し、8万円増額して50万円とする方針です。
従来は出産費用の上昇に合わせて増額されてきましたが、この引き上げ額は過去最大となります。
 

また、増額にあたっての財源としては、下記のように75歳以上の高齢者に出産育児一時金の7%分を負担してもらう方針です。

後期高齢者医療の保険料改定は2年ごとに行われますので、令和6年4月の改定から負担増となる予定です。
 

一方、正常分娩による出産は病気ではないため自由診療であり、医療機関によって費用が異なります。
そこで、せっかく出産時の一時金を増額しても、医療機関が値上げをしては増額効果が薄れてしまうおそれがあるため、厚生労働省のホームページなどで出産費用を施設ごとに並べて公表する予定です。
 

出生数の減少で、近年は出産可能な医療施設を探すのも大変になっていることもあり、出産費用の見える化は実現が望まれます。
しかしながら、この増額の財源となる後期高齢者の医療制度も気になるところです。次項では後期高齢者について見ていきましょう。

後期高齢者医療制度の今後

後期高齢者医療制度の現況について

出産育児一時金の財源とされる後期高齢者医療制度ですが、現在どのような状況かを押さえておきましょう。
 

平成20年、高齢化による医療費増加を社会全体で支えるしくみとして75歳以上を対象に後期高齢者医療制度が創設されました。以来、74歳以下の現役世代が負担する後期高齢者支援金は大きく増加し、現役世代は制度創設時に比べ、負担が1.7倍になりました。
加えて、令和7年(2025年)までに、戦後の昭和22年〜24年(1947年〜1949年)に生まれた世代である「団塊の世代」が後期高齢者となります。ますます現役世代の負担が大きくなることは避けられません。
 

そこで、令和4年10月からは現役並みを除いた一定の後期高齢者に限り、医療費の窓口負担が1割から2割に引き上げられました。

出産育児一時金と後期高齢者医療制度

出産育児一時金を、後期高齢者を含めた「全世代」で支えるしくみを取り入れる際に、「高齢者の世代内」において能力に応じた負担とするため、後期高齢者保険料についても見直しが検討されています。
 

検討されているのは、現役世代の負担上昇を抑えるために、令和6年度以降、「後期高齢者1人あたりの保険料の伸び率」と「現役世代1人あたりの後期高齢者支援金の伸び率」とが同じになるような高齢者の負担率設定方法です。
 

下の図は現行の後期高齢者医療制度のイメージです。
現行では、約1割が後期高齢者が自らの保険料を負担する構造になっていますが、今後は現役世代からの支援金ばかりが増加しないように、後期高齢者の保険料部分の負担見直しが検討されています。
合わせて、低所得層である後期高齢者の負担が増加しないような配慮がされます。

したがって、単に出産育児一時金の負担を後期高齢者に押し付けるという考え方ではなく、長期的に見た人口の変動に対応し、かつ、現役世代への過度な負担を避けるための策が検討されています。

出産時のその他の手当と出産準備金の新設について

出産にかかる受給可能なその他の手当金

先述の出産育児一時金以外で、出産に際して受給可能なお金を示すと次のようなものがあります。
なお、帝王切開や吸引分娩などの異常分娩にあたっては、健康保険による高額医療費制度や所得税・住民税の医療費控除などを受けられる場合があります。
 

手当金など 受給タイミング 概要 受給可能額
出産手当金 産前産後 ・健康保険に加入している女性が産前産後の休業期間に給付される
・国民健康保険は支給されない。
※会社から休業期間中に給与の支給がない場合のみに支給
通常給与の2/3程度
(傷病手当金と同額)
育児休業給付金 子どもが満1歳(または2歳)になるまで ・満1歳(一定の場合には2歳)未満の子の養育のために育児休業を取得する一定の者に支給
・産後パパ育休が令和4年10月より開始
休業前給与の67%ほか
休業前給与の67%ほか 妊娠時、出産時 ・新設(令和5年1月より)
※新設の出産準備金については、次項でご紹介します。

令和5年から始まる出産準備金について

政府は令和5年1月より、出産準備金として新生児1人あたり、妊娠届出時5万円、出生届出時5万円の計10万円相当のクーポンの形で支給する予定です。
出産準備金の支給は令和5年以降となりますが、所得制限を設けずにクーポンで配付するとされます。
 

出産準備金では、各家庭に自治体からクーポンが支給され、指定された育児用品や子育てに関するサービスを受けることができます。一過性の制度ではなく、継続される予定となっています。
 

また、令和5年4月から内閣府の外局として「こども家庭庁」が誕生し、子どもと子どものいる家庭の支援を推進していくこととなりました。現在、子どもの貧困などが問題視されていますが、子どもが安心して成長できる世の中は将来の日本の姿に直結するものであり、実のあるものにしてもらいたいものです。

まとめ

新型コロナの影響による出生数の低下もある中、出産費用への対応でどこまで解決できるかは不明です。
しかしながら、「未来への投資」として、子育て世代を「社会全体で支援する」という観点から、後期高齢者医療制度からも「負担能力に応じた」支援が求められるのは制度として大きな問題はないでしょう。
また、今後とも年金生活者である後期高齢者の生活が、ある程度は保障されるのが見えてくる制度であってほしいものです。
 

岡和恵
大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。システム会社に転職。 システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。 2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。
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