今話題のデジタル田園都市国家構想交付金とはどんなもの? | MONEYIZM
 

今話題のデジタル田園都市国家構想交付金とはどんなもの?

岸田内閣の主な政策のひとつに、デジタル田園都市国家構想交付金があります。この交付金は、デジタル田園都市国家構想に沿ったものですが、大きく分けて2つの種類があります。
 

ここでは、そもそものデジタル田園都市国家構想の概要や、デジタル田園都市国家構想交付金の対象・内容について詳しく解説します。

そもそもデジタル田園都市国家構想とは

そもそも、デジタル田園都市国家構想とはどのようなものかを見ていきましょう。
 

デジタル田園都市国家構想は、新しくできたデジタル庁で推進している施策です。デジタル田園都市国家構想とは、簡単にいうとデジタルの力で地域の暮らしをより良いものにし、地域活性化を行うというものです。
 

もともと、地方の発展は安倍政権の時代から課題としてあり、多くの施策を行っていましたが、それをさらに推し進めているのがデジタル田園都市国家構想です。地域の豊かさをそのままに、都市と同じ(時には違う)利便性や魅力を生み出そうというもので、デジタルの力により「心ゆたかな暮らし」(Well-Being)と「持続可能な環境・社会・経済」(Sustainability)を実現していくという構想です。
 

デジタルの力で、「暮らし」や「産業」などの領域に新サービスや共助のビジネスモデルを生み出し、地域の人の豊かな生活の実現を目指しています。
 

デジタル田園都市国家構想には、地域幸福度(Well-Being)の取り組みなどいくつかの施策があります。デジタル田園都市国家構想推進交付金もそうした施策のひとつです。

デジタル田園都市国家構想推進交付金とは

次に、デジタル田園都市国家構想の柱である「デジタル田園都市国家構想推進交付金」について見ていきましょう。

デジタル田園都市国家構想推進交付金の目的と導入の背景

岸田内閣は「新しい資本主義の実現」を目指しています。新しい資本主義とは、これまでの資本主義の弊害、例えば、中間層の没落や持続可能性の喪失、都市と地方の格差などの課題を解決していく資本主義のことです。新しい資本主義実現の柱のひとつが、デジタル田園都市国家構想推進交付金です。
 

デジタル田園都市国家構想推進交付金では、主に都市と地方の格差の問題を解決しようとしています。地方には、都市にはない人口減少や高齢化、産業空洞化などの多くの問題があり、それらの問題は今すぐにでも解決しないといけないほど深刻になっています。
 

そこで、地方の魅力をそのままに、デジタルの力を活用して都市に負けない利便性と可能性を作っていくことを目指し、課題解決のモデルケースとなり得る取り組みなどを交付金により支援するのが、デジタル田園都市国家構想推進交付金です。
デジタル田園都市国家構想推進交付金は国から事業者ではなく、各自治体に交付されます。

デジタル田園都市国家構想推進交付金の2つのタイプ

デジタル田園都市国家構想推進交付金には、「デジタル実装タイプ」と「地方創生テレワークタイプ」の2つがあります。それぞれについて、見ていきましょう。

1.デジタル実装タイプ

デジタル実装タイプとは、デジタル田園都市国家構想を促進するため、デジタルを活用して地域の課題解決や魅力向上を実現する地方公共団体の取り組みに対して、交付するものです。例えば、次のような取り組み交付金が支給されます。
 

  • データ連携基盤を活用し、複数のサービス実装を伴う取り組み
  • 既に確立されている優良モデル・サービスを活用した実装の取り組み

 

デジタル実装タイプは、これらの取り組みにかかった費用の一部を補助する形で交付されます。

2.地方創生テレワークタイプ

地方創生テレワークタイプとは、地方への新たな人の流れを創出するための取り組みに対して交付金を支給するというものです。「転職なき移住」を実現し、デジタル田園都市国家構想の実現に貢献します。もともとあった「地方創生テレワーク交付金」を引き継ぐ形で始まりました。例えば、次のような取り組み交付金が支給されます。
 

  • サテライトオフィスなどを整備し、運用や利用を促進する取り組み
  • 地域への企業進出の促進への取り組み

 

地方創生テレワークタイプは、団体やプロジェクトごとに事業費という形で交付されます。

令和4年度第2次補正予算によるデジタル田園都市国家構想推進交付金

ここからは、令和4年度第2次補正予算で決まった、デジタル田園都市国家構想推進交付金について見ていきましょう。

新たなデジタル田園都市国家構想推進交付とは

デジタル田園都市国家構想推進交付金は、一度きりの施策ではなく、毎年、予算を確保し、その時の状況にあった施策を行います。
 

令和4年度第2次補正予算では、「地方創生推進交付金」「地方創生拠点整備交付金」「デジタル田園都市国家構想推進交付金」の3つを統合し、新たな「デジタル田園都市国家構想交付金」を創設することになっています。
 

新たなデジタル田園都市国家構想交付金では「デジタル実装タイプ」「地方創生推進タイプ」「地方創生拠点整備タイプ」の3タイプになります。ただし、原則はこれまでの施策を継続します。
 

地方創生推進タイプと地方創生拠点整備タイプは、地域再生のための先導的な取り組み、施設や整備の安定的な支援を目的としています。例えば、地方の担い手不足の解消のための取り組みなどに交付金を支給します。

マイナンバー普及の一助となる新たなデジタル実装タイプ

新たなデジタル実装タイプは、今までのデジタル実装タイプと地方創生テレワークタイプが統合されたものです。また、新たなデジタル実装タイプでは、マイナンバーカードの普及促進、スタートアップの活用、地域間連携など、重点施策を推進する観点から新たな優遇措置等を講じています。特に、マイナンバーカードの普及には力を入れており、多くの予算を確保しています。
 

デジタル実装タイプは、TYPE1からTYPE3までそれぞれ目的に応じて3つの種類に分類されます。

・TYPE1:優良モデル導入支援型

既存の優良なモデルやサービスを活用した取り組みに対する支援

・TYPE2:データ連携基盤活用型

オープンなデータ連携基盤を活用し、モデルケースになると予想される取り組みに対する支援

・TYPE3:マイナンバーカード高度利用型

マイナンバーカードの利用について新しい用途開拓などの取り組みに対する支援

マイナンバーカード高度利用型は、マイナンバーカードの交付率が全国平均以上であることを要件としています。補助率は2/3です。
 

基準となる2022年11月時点のマイナンバーカードの全国平均交付率は、53.9%であるため、住民のマイナンバーカード申請率が53.9%以上の自治体であれば申し込みができます。
 

デジタル実装タイプは、3つの種類で構成されていますが、さらに平成4年度補正予算で、今回限りの措置として次の種類も追加されました。

・TYPE4:マイナンバーカード利用横展開事例創出型

マイナンバーカードの利用について新しい用途開拓などの取り組みを行い、かつ他の地域でも展開可能な取り組みに対する支援
 

マイナンバーカード交付率が高い自治体(70%以上)の自治体であれば申し込みができます。補助率も10/10と全額が補助されるため、自治体が率先してマイナンバーカードの普及に取り組むことが予想されます。

まとめ

デジタル田園都市国家構想交付金は、岸田内閣の新資本主義の施策の柱となるものです。
デジタル田園都市国家構想推進交付金では、主に都市と地方の格差の問題を解決しようとしています。
 

デジタル田園都市国家構想推進交付金は、国から地方公共団体への交付金ですが、毎年、予算を確保し、様々な施策を後押ししています。
 

今後も、新たな施策が盛り込まれる可能性があり、注目される交付金といえるでしょう。
 

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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