国民年金の「学生納付特例制度」とは? 将来の年金額を減らさないためにすべきこと | MONEYIZM
 

国民年金の「学生納付特例制度」とは? 将来の年金額を減らさないためにすべきこと

20歳以上、60歳未満の人には、国民年金保険料の納付義務があります。とはいえ、アルバイト収入などに頼る学生にとって、月に1万数千円の負担は「痛手」でしょう。納付が難しい場合には、「学生納付特例制度」を利用して、保険料の支払いを猶予してもらうことが可能です。ただし、制度を「使ったまま」にしておくと、将来受け取る年金額が減ってしまうので、注意が必要です。満額を受け取るためにはどうしたらいいのかを中心に、解説します。

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【知らないと危ない!】学生期間の年金を追納していないと、将来の年金が減ります

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どんな制度なのか?

保険料の支払いを猶予

20歳以上になると、国民年金の保険料を支払わなくてはなりません。保険料は年ごとに多少変動し、2022年度(22年4月~23年3月)は月額1万6,590円、1年間にすると19万9,080円となっています。なお、年金には6カ月、1年、2年分をまとめて前納できる制度もあり、保険料が割り引かれます。
 

ただ、いずれにしても収入の少ない学生にとっては、厳しい出費です。そこで設けられているのが、「学生納付特例制度」なのです。次のような要件を満たす場合には、保険料の支払いが猶予されます。
 

  • 大学(大学院)、短期大学、高等学校、高等専門学校、特別支援学校、専修学校および各種学校、一部の海外大学の日本分校に在学する学生(夜間・定時制課程、通信課程の学生も含む)
  • 本人の所得が一定(128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等)以下の学生

 

所得が要件の水準を超える場合には、保険料の支払いは猶予されません。

申請方法

制度を利用するためには、申請が必要です。申請先は、住民登録をしている市区町村役所の国民年金担当窓口、年金事務所、在学中の学校(学生納付特例制度の対象校、または申請を代行できる学生納付特例事務法人の指定を受けている学校に限る)です。
 

申請には、基礎年金番号通知書のコピーあるいは年金手帳のコピー、学生であること・学生であったことを証明する書類(在学期間が分かる在学証明書の原本や学生証など)の添付が求められます。

「未加入」は避ける

20歳になったのに保険料を支払わず、特例制度の申請も行わないと、年金「未加入」(未納)の状態になります。これには、次のようなデメリットがあります。 

年金額は、支払った期間に応じて決まる仕組みになっています。基本的に、20歳から60歳までの40年間支払えば満額が支給されますが、期間が短いとその分減額されることになるのです。
 

また、学生時代に事故や病気などで障害を負った場合、障害基礎年金を受給することができない可能性があります。学生納付特例制度を利用していれば、たとえ保険料を納めていなくても、年金を受け取ることができます。

「学生納付特例制度」利用の注意点

就職してから何もしないと「未納」と同じ

ただし、保険料の支払い「猶予」は、「免除」とは違います。後で説明する「追納」を行わなかった場合、制度を利用していた年月は、受給資格期間(老齢基礎年金を受け取るために最低必要な期間=10年)にはカウントされるものの、その間の保険料はゼロで計算されることになります。つまり、年金の受取金額に関しては、「未納」と同じ結果になるのです。

どのくらい減額されるのか?

では、保険料が未納だと、満額からどのくらい減額されることになるのでしょうか? 

4年制大学に現役で合格し、20歳から卒業するまで2年間、この制度を利用したとします(未納期間は2年間)。満額がもらえる支払期間40年間のうちの2年間ですから、未納期間の割合は5%になります。
 

これを実際の給付額に当てはめてみます。22年度の老齢基礎年金の満額は、月額6万4,816円、年間で77万7,792円です。ここから5%を差し引くと、月額6万1,575円、年額は73万8,902円となります。年間の受取額は、満額に比べ3万8,890円のダウンとなる計算です。
 

実際には、年金支給額は物価にスライドして毎年変動するのですが、満額に比べて5%ダウンの状態は、支給を受けている間(つまり死ぬまで)変わることがありません。仮に65歳から90歳まで25年間受給したとすると、年間約3万9,000円の差は、トータル97万5,000円まで積み上がるわけです。
 

ちなみに、浪人したりして未納期間が3年だった場合には、未納割合は7.5%です。上の支給額で計算すると、満額に比べ年間5万8,334円減、25年間では145万8,350円までマイナスの額が拡大します。

「追納」すれば年金額は減らない

10年以内に「後払い」する

ただし、必ず減額されてしまうのでは、「猶予制度」の意味がありません。説明した将来の受給額の差は、猶予されていた分を後から納めることで、埋めることができるのです。これを年金保険料の「追納」といいます。
 

この追納にも注意すべき点があります。

◆追納できる期間は10年以内

例えば、この納付特例で2022年度分の保険料を猶予した場合、追納で年金額を上積みできるのは、32年までです。10年を過ぎると、追納することができなくなります。

◆3年以降は「加算額」が発生する

追納金額は、支払いの猶予を受けてから2年度目までは「当時の保険料の額」を納めればOKです。しかし、3年度目以降に追納する場合は、これに「加算額」を加えて支払わなくてはなりません。加算額は、期間が経過するほど上乗せされていきます。追納する場合には、できるだけ早く支払う方が有利です。
 

詳しくは、日本年金機構「国民年金保険料の追納制度 国民年金保険料の追納制度 | 日本年金機構 」をご確認ください。

「保険料を親が代わりに納める」という方法もある

節税効果が期待できる

追納には、就職してからの予定が狂って、結局10年間支払いができなかった、といったリスクもあります。実は、20歳以上の学生の保険料は、親が支払うことも可能です。そうすることで、子どもの年金リスクが軽減できるだけでなく、親の側にも節税効果というメリットが期待できるのです。
 

年金保険料は、「社会保険料控除」の対象ですから、支払った人の所得税、住民税から100%控除されます。例えば、所得が750万円(所得税率:23%、住民税率:10%)の親が、19万9,080円(22年度の月額保険料合計)を支払ったとします。これを申告することで、還付される(戻ってくる)金額は、

19万9,080円×33%(所得税+住民税)=6万5,696円

ということになります。

重複した保険料も還付される

1つ注意したいのは、親が、最初に説明した「前納」で子どもの年金保険料を支払った場合です。子どもが就職して厚生年金に加入すると、給与から国民年金の保険料も天引きされます。その際、前納した時期や期間によっては、親が納めていた分と重複して引かれる可能性があるのです。
 

重複分の保険料については、日本年金機構から還付請求書が届きます。必要事項を記入して返送すれば、重複分は返ってきますが、この手続きを忘れないようにしましょう。時効があるため、還付請求できるのは2年です。
 

まとめ

国民年金保険料の納付義務のある20歳以上の学生は、支払いが猶予される学生納付特例制度を利用することができます。猶予期間分は、年金支給額が減額されますが、保険料を追納することで、満額を受け取ることが可能です。
 

マネーイズム編集部
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