家族が死亡すると葬儀などで出費がかさむため、支出面を心配する人が多く見られます。一方、支出があるのと同時に国や自治体から死亡時にもらえるお金も存在するため、上手く活用して支出面の心配を取り除きましょう。今回は家族が死亡した際に、もらえるお金について解説します。
死亡時に公的機関からもらえるお金とは
死亡一時金
死亡一時金は、国民年金の第1号被保険者が36カ月以上、保険料を納めたにもかかわらず、老齢基礎年金や障害基礎年金を受けずに死亡した際に支給されるお金です。受取人は生計を同じくしていた遺族であり、複数人が該当する場合は配偶者・子・父母・孫・祖父母・兄弟姉妹の順に受取人が決まります。ただ、死亡一時金は遺族基礎年金を受け取る場合には支給されません。一般的には遺族基礎年金を受給したほうがトータルで受け取れる金額が大きいため、受け取りの際には注意が必要です。
金額や申請先など、くわしい内容は以下のとおりです。
<金額>
保険料を納めた月数に応じて12万円~32万円
<申請先>
市区町村役場または年金事務所、街角の年金相談センター
<必要書類>
- 国民年金死亡一時金請求書
- 年金番号がわかる書類
- 世帯全員の住民票の写し
- 亡くなった人の住民票の除票
など
<申請期限>
死亡翌日から2年以内
葬祭費
国民健康保険に加入している場合は、被保険者が死亡した際に葬儀代金の補填として埋葬費がもらえます。自治体からもらえるお金で支給額は市区町村によって異なります。お金をもらう際は市区町村の役所へ出向き、国民健康保険担当部署で手続きが必要です。告別式をした日から2年以内に手続きをしなければならないため、できるだけ早く済ませておきましょう。
葬祭費の内容は以下のとおりです。
<金額>
3~7万円程度
<申請先>
市区町村役場
<必要書類>
- 葬祭費支給請求書
- 葬儀を行ったことが確認できる書類
- 亡くなった人の健康保険証
- 請求者の本人確認書類
- 受け取り金融機関の通帳等
など
<申請期限>
葬儀を行ってから2年以内
埋葬費給付金
国民健康保険や社会保険などに加入していると、被保険者が死亡した際に埋葬費が支給されます。給付対象は保険によって少々異なりますが、被保険者に生計を維持してもらっていた人が対象です。もらえるお金の額は加入している保険によって少々異なります。また、必要な手続きや申請書類も保険によって異なるため、加入している保険の情報を参照してください。
こちらも、くわしい内容を確認しておきましょう。
<金額>
5万円
<申請先>
加入先の保険組合
<必要書類>
など
<申請期限>
埋葬を行った日の翌日から2年以内
遺族年金
遺族年金とは、本来本人に支給されるはずだった年金を、生計を共にしていた遺族が受け取れるお金です。遺族年金は、「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つに大きく分かれます。違いや特徴を見ておきましょう。
・遺族基礎年金
遺族基礎年金とは、国民年金に加入していた被保険者が亡くなった際に子どものいる配偶者または子どもが受け取れる年金を指します。要件などくわしい内容は以下のとおりです。
<支給される要件>
支給されるには、「被保険者等要件」と「保険料納付要件」を満たしている必要があります。また、遺族も一定の要件を満たしていなければなりません。
<被保険者等要件>
亡くなった人が以下のいずれかに該当している必要があります。
- ①国民年金の被保険者である間に死亡していること
- ②国民年金の被保険者であった人で、死亡当時日本国内に住所登録があり60歳以上65歳未満であること
- ③老齢基礎年金の受給資格期間が25年以上あること
- ④老齢基礎年金を25年以上の受給資格期間で受給していた人であること
<保険料納付要件>
亡くなった人が被保険者要件のうち①または②に該当する場合、死亡前日において以下の要件を満たす必要もあります。
・死亡日が含まれる月の前々月までの被保険者期間に、国民年金の保険料納付済期間および免除期間、厚生年金の被保険者期間、共済組合の組合員期間の合計が3分の2以上あること
・死亡日が2026年3月末日までの場合、亡くなった人が65歳未満であれば死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未払いがないこと
<対象者>
遺族基礎年金の対象者は、子どもがいる配偶者と子どもです。なお子どもとは以下に該当する人を指します。
- 18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子ども
- 20歳未満で障害年金の障害等級が1級または2級の子ども
<金額>
- 子どもがいる配偶者が受け取る場合…【年額795,000円+子どもの人数に応じた加算額】
- 子どもが受け取る場合…【年額795,000円+2人目以降の子どもの人数に応じた加算額】
<申請先>
市区町村役場または年金事務所、街角の年金相談センター
<必要書類>
- 年金請求書
- 年金番号がわかる書類
- 亡くなった人との関係がわかる書類
- 亡くなった人と生計を共にしていたことがわかる書類
- 請求者と子どもの収入が確認できる書類
- 死亡診断書等
など
<申請期限>
死亡翌日から5年以内
・遺族厚生年金
遺族厚生年金は、厚生年金に加入していた被保険者がなくなり、亡くなった人によって生計を維持されていた遺族に支給される年金です。要件を満たしていれば子どもがいなくても支給されます。要件などくわしい内容は以下のとおりです。
【支給される要件】
遺族厚生年金にも、「被保険者等要件」と「保険料納付要件」があります。
<被保険者等要件>
亡くなった人が以下のいずれかに該当する必要があります。
①厚生年金の被保険者である間に死亡していること
②厚生年金の加入中に初診日のある傷病が原因で保険者の資格を喪失したあと、その初診日から5年以内に死亡していること
③1級または2級の障害厚生年金を受給していること
④老齢厚生年金を受給していること
⑤老齢厚生年金の受給資格期間を満たしていること
など
<保険料納付要件>
①亡くなった人の保険料納付済期間が国民年金加入期間の3分の2以上であること
②死亡日に65歳未満の場合は、死亡日2ヵ月前までの1年間に保険料の滞納がないこと
<対象者>
遺族厚生年金は被保険者によって生計を維持されていた配偶者、子ども、父母、祖父母、孫が対象です。優先順位が決められている点に注意してください。優先順位は以下のように決められています。
1. 配偶者または子ども
2. 父母
3. 孫
4. 祖父母
<金額>
亡くなった人の老齢厚生年金の報酬比例部分(年金額の計算のもとになる金額)の4分の3
<申請先>
年金事務所または街角の年金相談センター
<必要書類>
- 年金請求書
- 年金番号がわかる書類
- 亡くなった人との関係がわかる書類
- 亡くなった人と生計を共にしていたことがわかる書類
- 請求者と子どもの収入が確認できる書類
- 死亡診断書等
など
<申請期限>
死亡翌日から5年以内
児童扶養手当
親のどちらかが死亡してしまいひとり親家庭になった場合は、児童扶養手当が受け取れる可能性があります。こちらは扶養する家族などの人数によって所得制限が設けられているため、申請すれば必ず受け取れるとは限りません。一部のみ支給されたり支給対象外になったりする場合があります。手当が支給されるのは子供が18歳になる年度末までですが、細かな条件は市区町村によって異なります。手続きも市区町村の役場にておこなうため、申請する際にルールについて確認するようにしましょう。申請は死亡してからできるだけ早く、忘れずに手続きが必要です。
くわしい内容は以下のとおりです。
<金額>
対象になる子どもの人数と所得によって異なる
<申請先>
市区町村役場
<必要書類>
- 児童扶養手当認定請求書
- 亡くなった人、請求者、子どもの関係がわかる書類
- 請求者と子どもの個人番号がわかる書類
- 請求者の本人確認書類
- 受け取り金融機関の通帳等
など
<申請期限>
なし
死亡時に勤務先からもらえるお金とは
慶弔金
多くの会社では福利厚生の一環として何かしらの慶弔金制度が用意されています。どのような条件でどの程度支払われるのかは会社によって異なりますが、お見舞金のような形で慶弔金を支給する会社が大半です。具体的な制度内容は会社ごとに異なるため、まずは慶弔金の存在について確認してみましょう。
死亡退職金
死亡退職金は死亡した人が本来受け取るべきだった退職金を指します。在職中に死亡した社員の遺族に対して支払われます。慶弔金と間違えられやすい制度ですが、慶弔金は非課税であるのに対して死亡退職金は相続税の課税対象です。死亡してから3年以内に支給が確定した場合は相続税の課税対象に、3年を経過してから支給が確定した場合は遺族の一時所得として所得税の課税対象になるため、支給が確定したタイミングによって取り扱いが変わることには注意が必要です。また、死亡退職金専用の非課税額が設けられており、「非課税額=500万円×法定相続人数」で求められます。死亡退職金を受け取る際は、課税対象と非課税額に注意しましょう。
死亡時に保険会社からもらえるお金とは
死亡保険金
生命保険には死亡保険が存在していて、何かしらの理由で死亡した際に保険金が支給されるようになっています。支給金額や受け取り方は加入している保険によって異なるため、本人が加入している保険証書などの確認が必要です。遺族のためにお金を残す仕組みではありますが、課税所得となる場合があります。想定していたよりも手元にお金が残らない可能性もあるため、疑問点がある場合は専門家に相談することをおすすめします。
死亡給付金
生命保険ではなく医療保険などに加入している場合は、死亡給付金が支給されるかもしれません。実質的には死亡保険に近いものですが、給付される条件が死亡保険とは少々異なります。
基本的に死亡給付金は死亡した事実に対してもらえるお金です。医療保険の中でも万一に備える部分といえます。また、医療保険には違いないため、死亡給付金として医療費に対する給付も受けられます。死亡前に入院したり手術をしたりしていたならば、それらについても保険会社へ請求しましょう。
死亡時に手続きすればもらえる可能性のあるお金とは
高額療養費制度の請求
死亡前の医療費が高額になっている場合は、遺族が本人に代わって高額療養費の請求が可能です。高額療養費制度はすべての健康保険で適用されるため、社会保険でも国民健康保険でも気にすることなく請求できます。高額療養費制度は年齢や年収などによって、医療費の自己負担額上限が決定される制度です。こちらの制度を利用すると払い過ぎた医療費を返金してもらえるため、入院の長期化などで医療費が高額になっている場合は手続きしましょう。
内容は以下のとおりです。
<金額>
負担した医療費によって異なる
<申請先>
市区町村役場、健康保険組合など
<必要書類>
- ・高額療養費支給申請書
- ・医療費の明細書
- ・亡くなった人との関係がわかる書類
など
<申請期限>
診察を受けた月の翌月初日から2年以内
遺族年金の請求
ご説明したとおり手続きをすれば遺族年金をもらえる可能性があります。ただ、遺族年金は死亡一時金を受給した場合には支給されないものであるため、どちらの請求手続きをおこなうかは検討しなければなりません。また、遺族年金についてご説明しましたが、年金に加入している期間が納付すべき期間の3分の2に満たない場合は支給の対象外です。年齢が若かったり年金の支払いができていなかったりすると受給できない場合もあるため、条件について確認することが重要です。
年金を受給している人がなくなった場合、年金受給者と生計を共にしていた3親等以内の親族は「未支給年金」を請求できます。金額や申請先、必要書類は以下のとおりです。
<金額>
元々の受給額によって異なる
<申請先>
年金事務所または街角の年金相談センター
<必要書類>
- 未支給年金請求書
- 年金証書
- 亡くなった人との関係がわかる書類
- 亡くなった人と生計を共にしていたことがわかる書類
- 受け取り金融機関の通帳等
など
なお、亡くなった人が年金受給者だった場合、「年金受給停止手続き」が必要です。亡くなってから10日または14日以内に手続きをしなくてはなりません。手続き先や必要書類を確認しておきましょう。
<手続き先>
年金事務所または街角の年金相談センター
<必要書類>
など
<申請期限>
厚生年金:死亡後10日以内
国民年金:死亡後14日以内
まとめ
死亡時にもらえるお金についてご説明しました。公的機関や勤務先からいくつものお金をもらえる可能性があるため、可能な限り速やかに手続きしましょう。家族が死亡したタイミングで手続きに時間を割くのは難しいかもしれませんが、締め切りが短いものもあるため速やかな対応を求められます。なお、死亡時にもらえるお金の内容によっては、相続税などの税金がかかるかもしれません。税金がかかると手元に残るお金の額が少なくなるため、不安があるならば専門家に相談すると安心です。