基本的なことをわかりやすく!初心者向けアメリカの経済指標について | MONEYIZM
 

基本的なことをわかりやすく!初心者向けアメリカの経済指標について

中国の追い込みが激しいとはいえ、アメリカは世界第一の経済大国です。
この記事では、これから投資やFXなどを始めようとする初心者に向けて、アメリカの経済指標についての基礎知識を解説します。用語の意味だけでも後で参考になるかもしれません。

経済指標ってなに?アメリカの経済指標が注目されるのは?

そもそも経済指標ってなに?

経済指標とは、その国の経済データのことであり、その時々の経済活動の状況を示す値のことです。
経済指標は公的な期間が定期的にデータを集計し、公開するものです。
景況とは経済活動の状況のことですが、この景況を表す経済指標は金融市場に大きく影響します。
したがって、外国株式を取引する場合にはその国の経済指標が役に立つものなのですが、アメリカの経済指標はそれ以外の国とは違った意味を持ちます。
それはアメリカ、特に米ドルの影響力によるものです。

アメリカの経済指標が注目されるのは?

GDP(国内総生産)とは、わかりやすく言うと1年間にその国で算出された付加価値の総和であり、その国の経済活動がいかに活発に行われているかを示す1つの経済指標です。
付加価値とは、大まかに言うと売上から仕入を引いた利益であり、GDPはその国の経済の大きさを表します。
一般にGDPの値が前年より大きいと景気は良くなり、小さいと景気は後退するため、今後の取引の大きな参考になります。
 

いわば、その国の利益の総合計とも言えるGDPですが、アメリカは現在もGDP世界第1位の国です。
そして「GDPが大きいこと=経済力が大きいこと」となります。
 

下の図はIMFDataMapperという手軽に経済指標が閲覧できるサイトから、2022年における世界のGDP比較地図を貼り付けたものです。
中国のGDPも非常に大きいのですが、2022年時点では中国はアメリカの約8割といったところです。

<2022年における世界のGDP比較:IMF>

出典:IMF(国際通貨基金)GDP current prices 2022のデータより
 

したがって、円、ドル、ユーロなど異なる通貨を交換する外国為替市場においても、現在は米ドルが中心的な地位を占めています。実際、金融取引においても外貨の準備においても米ドルが最大です。
 

各国の通貨の中でも中心的な地位を占める通貨を「基軸通貨」と呼びます。
基軸通貨は、相場や金利などにおける信頼性と取り扱う相手が多いという利便性を兼ね備えた通貨なのです。アメリカ以外の地域でも基軸通貨である米ドルを介した取引が行われており、通貨の基準となっているのが米ドルなのです。
 

このように、世界で最もGDPの値が大きく、世界で最も取引量の多い通貨を持つ経済大国アメリカの経済の先を読むための手がかりとして、アメリカの経済指標に注目が集まるわけです。

米国雇用統計とISM製造業景気指数、消費者物価指数

米国雇用統計とはなにか?

アメリカの経済指標の中でも最も基本的で、かつ、注目度の高い3つの指標を紹介します。
 

まず、「米国雇用統計」から紹介します。
米国雇用統計(Current Employment Statistics)はアメリカの経済指標の中で最も注目されるものの1つです。
この雇用統計は、アメリカの労働統計局が実施する月次調査で、失業者数や就業者数などが毎月第1金曜日に発表されます。
発表内容は全部で10項目あり、その中でも「非農業部門雇用者数」、「失業率」の2つが注目されます。
そして、最も重要視される非農業部門雇用者数(Nonfarm Payrolls:NFP)は、農業部門を除く産業分野で企業や政府に雇用されている人の数を表したものです。
 

これは、アメリカはサービス業などが産業の中心となっており、非農業部門に特化した分野が重要視されるためです。非農業部門でどれだけの人が働いているかを示したNFPは、発表の前に専門家の事前予想値が出されます。
 

興味深いのは、雇用者数そのものではなく、NFPの事前予想値と実際の発表結果の差が市場に影響を与えるということです。
結局、予想値が外れるということは証券会社など専門家の調査力でも分析できなかったことが、実際の経済社会で起こっていたということになり、先の経済を読むために機能する訳です。
予想値については、2006年からアメリカの給与計算アウトソーシング会社であるADP社(Automatic Data Processing, Inc.)がNFP発表の2営業日前に前月の雇用者数を発表するようになりました。
したがって、専門家達はこのADPの雇用統計をもとに事前予想値を修正するようです。
 

予想値も実際の結果も前月比でどれだけ増減したかで示されます。
例えば、直近(2023.2.3)のデータでは、前回の実際結果 26万人増、事前予想値:18.7万人増、実際の結果:51.7万人増という結果でした。予想値と実際値の差異が非常に大きくなりました。
 

実際の結果が予想された値をはるかに上回ったことは、予想したよりも雇用環境がよく、「景気の強さ」を示しています。この結果はまた、賃金の高いITや金融関連の大手企業の解雇が進む中、サービス業により多くの労働者が戻ってきたことも示しています。

ISM製造業景気指数とはなにか?

雇用統計の次に注目度の高いのがISM景気指数と呼ばれるものです。
ISM(Institute for Supply Management:米国供給管理協会)とはアメリカで最も権威のある職業組織であり、供給管理と購買について約100年にわたって管理してきた団体です。
 

ISM景気指数は、「ISM製造業景気指数」と「ISM非製造業景気指数」からなりますが、NFP同様にアメリカはサービス業の比率が高いため、ISM非製造業景気指数がより注目されます。
この指数は、毎月第1営業日に発表されるため、他の経済指標の先行指標となって注目度が高いものとなります。
 

ISM非製造業景気指数は、アンケート調査の結果を数値化したものです。
非製造業の購買や供給の責任者に、その企業の受注や在庫状況などのアンケート調査を実施し、状況が「良い」、「同じ」、「悪い」の3択での回答をもらい、集計します。
集計によって、回答は0から100までに数値化され、「良い」と「悪い」の比率が同じだと「50」となります。
「50」を超えると景気は良くなり、株価も上昇、逆に「50」を下回ると景気は後退し、株価は下がるという判断の材料として使います。
 

この景気指数においても事前予想があり、NFP同様、アナリストなどの専門家が出した事前予想値と実際の結果の差異が市場に影響を与えるしくみは同じです。

消費者物価指数とはなにか?

最後は消費者物価指数(Consumer Price Index:CPI)について解説します。CPIは、上の2つに比べるとよく耳にする経済指標です。
消費者物価指数とは、消費者が購入するモノやサービスの価格変動を示す指標であり、米国労働省が毎月半ばに発表します。インフレの動向を知る重要な指標として、重要視される指標です。
 

そしてCPIは、FRB(米連邦準備理事会:日本における日銀のような存在)の金融政策に最も大きな影響を与えるため、市場だけでなくメディアなどから大きな注目を集めています。
FRBは一般に、景気後退期には政策金利を下げ、物価や景気の下支えを行います。逆に、景気が上向き過ぎる時には政策金利を上げてインフレを沈静化しようとします。
 

アメリカではコロナ禍に突入し不景気になったため、金融緩和策を実施してきました。
金融緩和とは、景気回復のための金融政策のことであり、金利の引き下げや資金供給量を増やして、投資、消費などの活動を促すことを言います。リーマンショック以来のゼロ金利が復活しました。
 

その後、アメリカではコロナの収束とともに経済が回復する中、半導体の供給不足や原油価格の高騰などが加わり、物価が急速に上がり始めました。FRBは、CPI上昇の勢いが止まらなくなったため、2022年3月から段階的に利上げを実施し、現在に至ります。この利上げが今年後半にはどうなるかに注目されています。

まとめ

この記事では、指標の概要説明となるため、例えばGDPには実質GDPと名目GDPがあったり、米国雇用調査には他にも注目すべき項目があったりしますが、詳細には触れていません。また、日本との格差についても今後の課題とさせていただきました。気になる経済指標や金利政策があれば、それぞれ深掘りしていただければ幸いです。
 

岡和恵
大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。システム会社に転職。 システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。 2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。