高校野球、甲子園の入場料収益は○億円!税金がかからないのはなぜ?チケット代や経済効果も | MONEYIZM
 

高校野球、甲子園の入場料収益は○億円!税金がかからないのはなぜ?チケット代や経済効果も

高校野球を開催する公益財団法人日本高等学校野球連盟(高野連)は、2018年には最高10億円超の入場料収益を得ていました。高野連の入場料収益や記念品の販売収益には、法人税が課されません。一体なぜでしょうか?
本記事では、高野連と法人税、高校野球の経済効果や甲子園の使用料・放映権料など「高校野球とお金」について解説していきます。

2018年の高校野球・甲子園入場料収益は10億円超!だが法人税は課されない

甲子園の入場料収益は、公益事業目的会計のため法人税の対象外

高校野球は公益財団法人日本高等学校野球連盟(通称:高野連)と朝日新聞社が運営・開催しています。
 

公益財団法人日本高等学校野球連盟は、47都道府県の高校野球連盟が加盟する組織です。主に選抜高等学校野球大会(センバツ・春の甲子園)・全国高等学校野球選手権記念大会(夏の甲子園)・全国高等学校軟式野球選手権大会を開催しています。
 

高野連は一般法人法・公益法人法に基づき行政庁に認定された公益財団法人です。一般法人や公益法人は、一般法人法で貸借対照表及び損益計算書などを公告しなければならないことが定められています。
 

高野連が毎年公表している決算報告書によると、甲子園の入場料の収益は事業収益の1つであり「公益目的事業会計」として計上されています。
 

高野連にかかわらず、法人税法上の「収益事業」に該当する事業でも事業が公益目的事業と認定されている場合には法人税が課されません。

出典:「一般社団法人・一般財団法人と法人税」❘ 国税庁
 

公益目的事業とは、公益法人法に定める23の分野に当てはまるもので、不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与するものをいいます。
 

高野連は、23の分野のうち「9.教育、スポーツ等を通じて国民の心身の健全な発達に寄与し、又は豊かな人間性をかん養することを目的とする事業」に該当します。
 

行政庁は一般法人を公益法人に認定した際、公示することが定められています。
公示では公益認定を受けた法人に関わる公益目的事業が記載され、記載された「公益目的事業」は非課税です。

甲子園の入場料収益はいくら?2018年は10億円超

高野連が決算報告書で公表している事業収益の公益目的事業会計(法人税の対象外)は以下のとおりです。
 

入場料収益 配布品収益 その他収益
2016 725,081,887 7,614,953
2017 715,987,804 11,391,144
2018 1,078,747,383 11,513,911
2019 987,351,861 12,189,020 29,300,000
2020 0 6,636,847 2,452,103
2021 274,621,798 11,008,066 112,988,726

※配付金収益は大会記念品の製作・販売による利益

出典:「業務・財務に関する資料」❘ 公益財団法人日本高等学校野球連盟
 

2020年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で高校野球は中止になり、入場料収益は0円です。しかし、コロナ前の2018年は10億円超、2019年はおよそ9億8千万円と年々伸びていました。
 

収益が伸びた背景には、2018年から無料だった外野席が有料化、高校野球の人気が高まったことなどが挙げられます。
前売り券の価格について見ていきましょう。

高校野球の経済効果とは?チケット代はいくら?

高校野球、甲子園のチケット代はいくら?

高校野球、夏の甲子園のチケット代はいくらなのでしょうか?
2023年8月6日から17日間に渡って開催される「第105回全国高等学校野球選手権記念大会」の前売り券の料金は以下のとおりです。

一般 子ども
中央指定席(上段、中段、下段) 4,200円
1・3塁指定席(上段、中段、下段) 3,700円 1,200円
アルプス席 1,400円
外野指定席(上段、下段) 700円 200円

出典:「2023年 第105回全国高校野球選手権記念大会【入場券】」❘ 公益財団法人日本高等学校野球連盟
 

公益を目的とした事業ですので、プロ野球などよりもチケット代が安く設定されています。
外野席は2017年まで無料でしたが、2018年の第100回目から雑踏事故の防止を理由に有料となり2022年は全ての席が値上げされました。

2018年の経済効果は 約 433 億 3,256 万円

関西大学のプレスリリースによると、同大学の宮本勝浩名誉教授が、「夏の全国高等学校野球選手権大会」の第 100 回記念大会の経済効果を計算した結果、約 433 億3,256万円となることを明らかにしました。
 

プレスリリース内で宮本名誉教授は以下のように述べています。

「今年の第100回大会は過去最高の経済効果であると言っても過言ではない。その要因として、①出場校が7校増え、試合数が7試合増加し、大会日数が2日増えたこと ②これまで無料であった外野席が有料になり、内野席やアルプス席も値上げされたこと ③第100回の記念大会であること などが考えられる」と分析しています。 また、「プロ野球と比べると、入場料が非常に安価な料金設定にもかかわらず、たった 16日間で約433億3,256万円という大きな経済波及効果をもたらすことは驚くべきことである」

出典:「宮本勝浩 関西大学名誉教授が推定『第 100 回全国高等学校野球選手権記念大会』経済効果は 約 433 億 3,256 万円」❘ 関西大学プレスリリース

甲子園・高校野球の意外なお金事情

高校野球の放映権料は無料

高校野球は、地上波ではNHKやテレビ朝日などで放送されていますが放映権料は無料です。
高野連が定めた「日本学生野球憲章」の第2条学生野球の基本原理において「学生野球は、学生野球、野球部または部員を政治的あるいは商業的に利用しない」と記載されています。
 

放映権料を受け取ることは「商業的に利用される」と捉えられるため、無料です。

甲子園の使用料も無料!

阪神甲子園球場は阪神電気鉄道株式会社(以下阪神電鉄)が所有・運営しています。
 

高野連・朝日新聞社は阪神電鉄に使用料を支払っておらず、阪神電鉄は「野球振興に貢献」するとして無償で甲子園を提供しています。
放映権料と同様に「高校野球が公益事業である」という要素が大きいでしょう。

高野連と寄付金

高野連への寄付金は2019年に1,000万円を超え、2021年にはおよそ2915万円に達しました。

 

高校野球の主な収入源は入場料ですが、2020年に新型コロナウイルス感染症拡大の影響で大会が中止になり大赤字となりました。2021年には夏の甲子園にクラウドファンディングで寄付を募り、約1,400万円の寄付金が集まりました。
 

なお公益法人への寄付は、個人・法人ともに税制上の優遇措置が設けられています。
公益法人側にとっても、収益事業に属する資産のうちから公益目的事業のために支出した金額は公益目的事業への寄付金とみなし(みなし寄付)、損金算入が可能です。

高校野球は異例のビジネスモデル

高校野球はプロスポーツとは異なり、放映権料が無料で入場料が収入の多くを占めることが特徴なので大会が中止になると赤字になってしまいます。
 

2020年に運営団体の高野連が赤字となった際には、多くの寄付金が寄せられました。2021年の寄付金の額はおよそ2,915万円です。
 

公益事業である高校野球は、「スポーツを通じて国民の心身の健全な発達に寄与し、又は豊かな人間性をかん養することを目的とする」という役割を担っています。
 

高校野球で球児の懸命なプレーに感動し、励まされる・心が豊かになるファンは多いのではないでしょうか。

まとめ

多くの人に愛される高校野球は、プロ野球とはビジネスモデルが大きく異なります。高校野球が公益事業であることが理由で、大会を通じて私たちの心身の健全な発達と豊かな人間性を育むことが目的なのです。

田中あさみ
大学在学中に2級FP技能士を取得、会社員を経て金融ライターとして独立。金融・投資・税金・各種制度・法律・不動産など難しいことを分かりやすく解説いたします。米国株・ETFなどを中心に資産運用中。CFP(R)の相続・事業承継に科目合格、現在も資格取得に向けて勉強中。
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