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独立・起業するなら個人事業主か会社設立か?判断基準3つを紹介

独立・起業をする場合、個人事業主にしようか会社設立にしようか悩む人は多いものです。何を基準に判断すればいいかわかれば、少しは決めやすくなるのではないでしょうか。今回は、個人事業主と会社設立のどちらかを決める判断基準を紹介します。個人事業主が会社に変更するときのタイミングも見ていきましょう。

独立・起業するなら個人事業主と会社設立どっち?3つの判断基準

独立・起業をする場合、個人事業主と会社設立のどちらにするか悩む人は多くいます。「手続きのしやすさ」「社会的な信用」「税金」の3つを基準にすると判断しやすくなります。3つの判断基準について、くわしく説明します。

個人事業主と会社設立どっち?手続きしやすいのは

独立・起業する場合、手続きが簡単なのは個人事業主です。税務署に開業届けを出すだけで手続きが完了します。一方、会社設立する場合提出書類は多くありますし、提出先もさまざまですので手続きは複雑です。さらに会社設立では、以下の手順を踏まなくてはなりません。
 

  • 基本事項の決定
  • 会社印の作成
  • 定款の作成
  • 資本金の払込み
  • 法務局での登記申請

 

会社設立では、会社名や所在地、会計年度など基本事項を決める必要があります。また会社印の作成が必要ですし、会社のルールである定款の作成もしなければなりません。資本金については1円以上で会社設立できますが、金額に会社の底力や信用が比例する傾向にあります。まとまった金額はあった方がいいでしょう。一般的に運転資金3カ月程度の資本金が必要とされています。
法務局で登記申請をすればようやく会社設立となりますが、上記のほかにも社会保険に加入する手続きも必要です。手続き面でも費用面でも、シンプルなのは個人事業主と言えるでしょう。なお、廃業する場合も個人事業主は届出を提出するだけですが、会社設立していれば解散登記が必要です

個人事業主と会社設立どっち?社会的な信用は

社会的信用の高さも、判断基準の1つです。一般的に社会的信用が高いのは、会社設立した場合です。信用が高くなるため、個人事業主よりも銀行からの借入れがしやすい傾向にあります。人材の確保もしやすいでしょう。雇用される側の意識として、どうしても会社の方が安心感を抱くものです。
 

また、個人事業主より会社設立している方が信用できると取引を決める個人や会社は少なくありません。大企業ほど、会社を取引先にしたいという考えが強い傾向にあります。借入れや人材の確保、取引先の確保から、社会的信用の高い会社設立の方が事業の拡大はしやすいでしょう。

個人事業主と会社設立どっち?税金がかかるのは

独立・起業で個人事業主と会社設立で迷った場合、かかる税金の面から考えるのもおすすめです。個人事業主と会社では、税金の種類が異なります。個人事業主の場合所得税が、会社の場合法人税がかかります。個人事業主にかかる所得税は累進課税で、所得が高いほど税率も高くなり、最大税率は45%です。利益が大きいと、およそ半分が税金として徴収されることになるわけです。一方、比例税率である法人税は比較的上がるのが緩やかです。最大でも税率は23.2%になります。つまり、所得が大きくなるほど会社の方が節税できることになるのです。
また、税計算をするときに必要経費を差し引く控除という仕組みがあります。控除される金額が高くなるほど税金の負担は小さくなるわけですが、会社の方が経費として認められる範囲が広くなります。ただし、赤字の場合所得税や住民税の負担がない個人事業主に対して、会社は赤字であっても資本金をもとに一定の税金がかかります。

個人事業主と会社設立の特徴

そもそも個人事業主、会社とはどのような存在を指すのでしょうか。個人事業主と会社の定義を確認しておきましょう。

【個人事業主】

まず個人事業主とは、会社や組織から独立して事業を営む個人のことです。事業とは継続、反復して行う仕事のことを言います。継続、反復している必要があるため、一時的な仕事は事業にはなりません。

【会社】

会社とは、「会社法に基づいて設立された営利を目的とした商業行為を行う集団」と定められています。会社法という法律によって責任や義務が定められており、利益を出すことを目的に活動しているのが会社です。会社は出資形態や出資者の責任によって「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」に分けられます。主な違いは以下のとおりです。
 

株式会社…株式を発行して資金を調達する会社のことで、資金を出資する株主と経営を行う経営者に分かれる。
合同会社…2006年5月1日の会社法改正で新しく設けられた会社形態で、資金の出資者全員が会社の決定権を持ち、経営を行う。
合名会社…無限責任社員(連帯して負債を負う社員)のみで構成されている会社で、社員(出資者)は会社の負債を自分の資産を使ってでも負担する必要がある。
合資会社…無限責任社員と有限責任社員(出資額を限度として責任を負う社員)それぞれ1人以上の社員(出資者)から成り立つ会社形態で、無限責任社員は負債の全てに責任を負い、有限責任社員は出資額の範囲のみで責任を負う。
 

個人事業主が会社設立をするタイミングは?

個人事業主で、会社設立を検討している人もいるでしょう。会社に変更するベストなタイミングを紹介します。
前述したように個人事業主には所得税が課せられ、税率は最大で45%です。累進課税のため、利益が大きいほど多くの税金を支払わなければなりません。一方で、法人税の場合税率は利益が800万円以下なら15%、800万円を超える部分は23.2%です。800万円を超えた部分については、どれだけ利益が大きくなっても税率は一定になります。

【個人事業主の場合】

税金の種類…所得税
制度…累進課税率
 

課税される所得金額 税率
195万円以下 5%
195万円超330万円以下 10%
330万円超695万円以下 20%
695万円超900万円以下 23%
900万円超1,800万円以下 33%
1,800万円超4,000万円以下 40%
4,000万円超 45%

【会社】

税金の種類…法人税
制度…比例税率
 

課税される所得金額 税率
資本金1億円以下の法人など 800万円以下
(適用除外事業者の場合:19%※)
15%
800万円超 23.2%
上記以外の普通法人 23.2%

※事業年度開始前3年以内に終了した各事業年度の所得の金額の平均が15億円を超える事業者

個人事業主が会社設立する場合、利益が800万円を超えたあたりを目安とするといいでしょう。ただし、控除の金額や事業以外の所得の有無など人によって条件はさまざまです。会社設立の判断は税理士などの専門家に依頼するのが安心と言えます。

まとめ

手続きのしやすさでは個人事業主の方が簡単ですが、社会的信用が高いのは会社設立することです。また、税金については利益によって節税効果が変わってきます。何より大切なのは、自分の性格やこれから描くビジョンと向き合うことでしょう。今回紹介した判断基準を、性格やビジョンの視点から見ていくのがおすすめです。自分や事業展開と向き合うことは、独立・起業で成功する上でも欠かせません。個人事業主か会社設立かを決めるのをきっかけに、改めて考えてみてはいかがでしょうか。

渡邉身衣子
東証1部上場企業法務部の経験を経て金融ライターとして独立する。ビジネス実務法務検定2級を取得済み。難しくなりがちな金融・税金・法律をやわらかく解説します。
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