なでしこ銘柄とは?選定方法や2022年の企業一覧、メリット・デメリットを解説 | MONEYIZM
 

なでしこ銘柄とは?選定方法や2022年の企業一覧、メリット・デメリットを解説

経済産業省と東京証券取引所が毎年発表している「なでしこ銘柄」をご存じでしょうか?
なでしこ銘柄は、女性活躍推進に優れた企業を中長期の企業価値向上を重視する投資家にとって魅力ある銘柄として紹介するものです。
2022年からは審査方法が変更になり、大幅にリニューアルされました。本記事ではなでしこ銘柄とは何か、2022年のなでしこ銘柄一覧、なでしこ銘柄に選定されるメリット・デメリットやなでしこ銘柄に選ばれた企業の株価などを解説していきます。

なでしこ銘柄とは

女性活躍推進に積極的な企業を「なでしこ銘柄」として選定

経済産業省と東京証券取引所は、2012年から女性活躍推進に優れた上場企業を「なでしこ銘柄」として選定し、毎年発表しています。
 

2022年度のなでしこ銘柄は、2022年10月時点でプライム市場・スタンダード市場・グロース市場に上場している外国株を含む全ての企業約3,700社が対象です。
「女性活躍度調査」を基に16社が選定されました。
 

応募企業の中から、以下の5つの要件を満たす企業が審査対象となります。

1. 上場会社単体ベースにおいて、女性取締役が1名以上(社内・社外は問わない)
2. 女性活躍推進法に基づく行動計画の策定
3. 従業員数101人以上の企業
4. 厚生労働省「女性活躍推進データベース」に女性管理職比率を開示
5. 直近3年間平均ROE(自己資本利益率)がマイナスではない

 

審査されるためには、要件を満たした上で「定量調査票」と「定性調査票」を提出します。
2022年度になでしこ銘柄に応募した企業は312社です。その内、定量調査票・定性調査票の両方を提出した企業は255社でした。

2022年度のなでしこ銘柄一覧

2022年のなでしこ銘柄16社は以下のとおりです。

出典:「2022年度『なでしこ銘柄』を選定しました」 ❘ 経済産業省
 

16社のうち15社は今までなでしこ銘柄に選定されたことがありますが、出光興産株式会社は2022年度に初めて選定されました。
 

なでしこ銘柄に選ばれた回数が最も多い企業は株式会社LIXILで、準なでしこ銘柄を含めると8回目です。次いで双日株式会社が7回目となっています。

なでしこ銘柄、選定方法や基準とは?

なでしこ銘柄はどのような基準で選定されているのでしょうか?2022年度からは、女性活躍度に加え情報開示を促進するため定量調査に加え定性調査を実施しています。

2022年にリニューアル!なでしこ銘柄の選定基準・方法とは

なでしこ銘柄は2022年度からリニューアルされました。
経済産業省「なでしこ銘柄」事業事務局の「『2022年度なでしこ銘柄』レポート」によると、「企業の情報開示について国内外で議論が進んでおり、経営戦略と連動した人材戦略を立案し、情報開示していくことが一層求められている」ことから「女性活躍推進に関する情報開示を促進することを目指して」リニューアルを実施しました。
 

具体的には審査の基準となっている女性活躍度調査において、2022年度から定量調査票に加え定性調査票を提出することになりました。
 

定量調査票では女性活躍推進の度合いを確認する指標として、女性役員・取締役・管理職などの比率や数を回答します。
定性調査は2022年度から実施される新しい試みです。
自社の女性活躍推進の取り組みや成果を簡潔に記入します。以下が質問項目です。

出典:「『2022年度なでしこ銘柄』レポート」 ❘ 経済産業省経済産業政策局経済社会政策室
 

上記の質問に対する回答に対して経済産業省では「戦略性・取り組み・成果・開示」の4つの評価視点を基に審査を行っています。

具体的には「女性活躍推進について、明瞭かつロジカルに説明している」「企業価値向上を見据えて、意欲的な目標値を設定している」「成果を出し続けるためのPDCAサイクルを具体的に説明できている」などを評価のポイントとしています。

定量調査票では数値、定性調査票では数値では分からない部分を調査します。
定量調査では客観的にデータを把握できますが、定性調査では文章やアピールが上手いと評価されてしまう可能性があります。
例えば「女性活躍推進について、明瞭かつロジカルに説明している」という評価ポイントは、受け取る側によっても評価が左右されてしまう恐れがあります。
 

ただし数値を調査する「定量調査」と言葉で数値化できない部分を把握する「定性調査」は、場面に応じて組み合わせると有効な調査手法になるといわれています。

2021年まであった「準なでしこ銘柄」が廃止に。選定方法の変更点とは?

2021年度は、なでしこ銘柄49社と準なでしこ銘柄15社が選定されていました。
要件は以下のとおりです。

<共通の要件>
従業員数300人超
行動計画を策定している
厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」に「女性管理職比率」を明示している
<なでしこ銘柄>
女性取締役が1名以上いる
業種ごとに上位にランクイン
<準なでしこ銘柄>
取締役、または監査役、または執行役員のいずれかの役職において女性が1名以上いる
業種は関係なく上位にランクイン

 

2022年度は準なでしこ銘柄は選定されず、廃止となっています。
 

2021年度(令和3年度)までのなでしこ銘柄・準なでしこ銘柄の企業数の推移は以下のとおりです。

出典:「2021年度なでしこ銘柄」 ❘ 経済産業省・株式会社東京証券取引所
 

2021年度の選定ポイントは、女性役職者登用のパイプライン強化です。具体的には①女性取締役が複数名おり、かつ、女性取締役比率が10%以上の企業を更に加点、②女性執行役員が複数名おり、かつ、女性執行役員比率が10%以上の企業を更に加点していました。
 

なでしこ銘柄は、初年度の2012年度には東証一部上場企業を33業種に分類し、CSR報告書などの公開情報から調査していました。
2017年度にはスコアリングの枠組みとして「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」を採用し、財務指標(ROE)による加点を導入、2019年度には 「ガバナンスの改革(女性取締役比率等)」の配点を前年比2倍へ変更するなどこれまでにも評価方法や基準を改正しています。

なでしこ銘柄に選定されるメリット・デメリット

なでしこ銘柄に選定されるメリットには、①企業のイメージが向上する②企業価値が上がり株価も上がる可能性があることなどが挙げられます。
「2022年度『なでしこ銘柄』レポート」では、なでしこ銘柄の選定は「女性活躍推進に優れた上場企業を中長期の企業価値向上を重視する投資家にとって魅力ある銘柄として紹介する」ことを目的としています。
もともと投資家のために発表しているため、株価に一定の影響があるといえるでしょう。

なでしこ銘柄に選定されるデメリット

なでしこ銘柄に選定されるデメリットはありません。
しかしなでしこ銘柄として審査されるためには、従業員数101人以上・直近3年間平均ROEがマイナスではないなど5つの要件を満たし「定量調査票」「定性調査票」を提出しなくてはいけません。
 

また、企業内において実績で人材を評価するのではなく「なでしこ銘柄に選ばれるために女性を取締役にする」といった「なでしこ銘柄ありき」の人事が生じてしまう恐れがあります。

なでしこ銘柄に選定された企業の株価はどうなった?

なでしこ銘柄選定企業は、株価指数が高い傾向がみられる

経済産業省の公表レポートによると、なでしこ銘柄は株価指数が高い傾向にあります。

出典:「2022年度『なでしこ銘柄』レポート」❘ 経済産業省2022年度「なでしこ銘柄」事業事務局
 

特に2020年(令和2年)3月の「コロナショック」からの回復が、他の企業と比べて早いことが分かります。ただし、なでしこ銘柄の要件の1つに「直近3年間平均ROE(Return On Equity:自己資本利益率)がマイナスではない」があります。
 

ROEは「企業がどのくらい自己資本を有効に活用して利益を上げているか」が分かる指標ですので「もともと自己資本を有効に活用していた企業が審査対象になっていた」という実態があります。

なでしこ銘柄の売上高営業利益率と配当利回り

なでしこ銘柄の売上高営業利益率と配当利回りを見ていきましょう。

※「なでしこ銘柄」平均は経済情報プラットフォーム「SPEEDA」より該当指標に関して2021年度(2021年4月から2022年3月にかけて)の通期データを抽出し、作成。東証一部銘柄の該当するデータは、東京証券取引所が公表している「2021年度(2021年4月期~2022 年3月期)決算短信集計【連結】《市場第一部》」及び「株式平均利回り」より2021年度通期での「単純平均利回り」の平均値を算出し使用。

出典:「2022年度『なでしこ銘柄』レポート」 ❘ 経済産業省2022年度「なでしこ銘柄」事業事務局
 

売上高営業利益率・配当利回りともに東証一部(現:東証プライム)平均より高いです。
 

なでしこ銘柄は株価・売上高営業利益率・配当利回りが高く、投資家として魅力的かもしれません。ただし、なでしこ銘柄に限らず株式の購入を検討する際には企業の将来性や財務・配当などをリサーチし最終的には自分で判断するよう心がけましょう。

まとめ

女性活躍推進に優れた企業を発表するなでしこ銘柄は、2022年度から大幅にリニューアルされました。株を選ぶ時の判断材料の1つとして、参考にしていきましょう。

田中あさみ
大学在学中に2級FP技能士を取得、会社員を経て金融ライターとして独立。金融・投資・税金・各種制度・法律・不動産など難しいことを分かりやすく解説いたします。米国株・ETFなどを中心に資産運用中。CFP(R)の相続・事業承継に科目合格、現在も資格取得に向けて勉強中。