付加年金とは?加入するメリット・デメリットや条件まとめ | MONEYIZM
 

付加年金とは?加入するメリット・デメリットや条件まとめ

老後の生活について、不安を抱える人もいるでしょう。老後は年金が生活の柱になる傾向にありますが、将来受け取る年金を増やせる制度の1つに「付加年金」があります。今回は付加年金について、増える年金額やメリット・デメリットをみていきましょう。老後に不安を少しでも抱えている人は、ぜひ読んでみてください。

付加年金とは?どれくらい上乗せされるの?

付加年金とはどんなもの?

まずは付加年金がどのようなものか説明します。付加年金とは、通常の年金保険料に400円の付加保険料を上乗せして支払うことで、将来の年金受給額が増える制度を言います。利用すれば、永久的に年金受給額を増やすことができます。安心して老後が送れるように、今のうちからしっかり備えたい人にはおすすめの制度です。
付加年金に加入できる期間は20歳〜60歳までの最大40年間、受給するタイミングは老齢基礎年金と同じく65歳です。お住まいの市区町村役場やお近くの年金事務所で申し込むことができ、申し込んだ月から付加保険料の支払いが始まります。

付加年金として上乗せされる金額は

付加年金によっていくら年金受給額が増えるのか、気になるところではないでしょうか。実際にどのくらい支払い、いくら加算して受給されるのか説明します。
付加年金では「200円×付加保険料の納付月数」が年金受給額に加算されます。わかりやすく、実際に加算される年金受給額をシミュレーションしてみましょう。30歳で付加年金に加入し、30年間付加保険料を支払った場合を例に見ていきます。
 

<支払う付加保険料>
400円×360ヵ月(12ヵ月×30年間)=14万4,000円
<加算される年金受給額>
200円×360ヵ月(12カ月×30年間)=7万2,000円

 

400円の付加保険料を30歳から60歳までの30年間支払うと、合計金額は14万4,000円です。一方、加算される年金受給額は1年間に7万2,000円になります。年金受給開始から2年経つと、支払った付加保険料より受け取る金額の方が多くなる計算です。

付加年金のメリット・デメリット

付加年金には、メリットとデメリットがそれぞれあります。ここで、付加年金に加入するメリットとデメリットを紹介します。

付加年金のメリットは?

まず、付加年金に加入するメリットを確認しましょう。メリットは以下のとおりです。

・2年で支払った付加保険料の元が取れる

前述したように、年金を2年以上受け取れば支払った付加保険料より受け取る金額の方が多くなります。付加年金には、短期間で元が取れるメリットがあります。

・老齢基礎年金の繰り下げ受給をすると付加年金も同額で増額される

老齢基礎年金の繰り下げ受給とは、本来65歳で受け取る年金を66歳以降75歳までの間に遅らせて受給することです。繰り下げ受給をすると年金額が増額されますが、付加年金も同額で増額されます。

・支払った付加保険料は全額が所得控除の対象になる

所得控除と言って、所得税を計算するときに所得から一定の金額を差し引くことのできる仕組みがあります。所得控除が多いほど、課税対象額が減って所得税の負担も小さくなります。所得控除には社会保険料控除や生命保険料控除などさまざまな種類がありますが、付加保険料は、社会保険料控除として全額が控除の対象です。付加年金には、老後のことだけでなく現時点でもこうしたメリットがあります。

付加年金のデメリットは?

デメリットもしっかり把握しておきましょう。付加年金には、以下のデメリットがあります。

・年金受給開始前に亡くなると支払った付加保険料が全額戻ってこない

万が一老齢基礎年金の受給が始まる65歳前に亡くなると、支払った付加保険料が年金として受け取れません。支払っていた期間全額分、かえってこないことになります。

・年金受給開始から2年以内に亡くなると支払った付加保険料と年金受給額の差額分は損をする

付加年金は年金受給開始から2年で元が取れる年金です。受給が始まったとしても、2年以内に亡くなってしまった場合は支払った付加保険料の方が高くなります。

・老齢基礎年金の繰り上げ受給をすると付加年金も同額で減額される

老齢基礎年金は、60歳から65歳の間までに繰り上げて受給することも可能です。繰り上げ受給をすると、年金額は減額されます。同額で付加年金も減額されるため、注意しなければなりません。

・iDeCo(確定拠出年金)の拠出限度額から付加保険料分が控除される

iDeCo(確定拠出年金)に加入している場合、拠出限度額から付加保険料分が控除されてしまいます。本来、自営業者など国民年金第1号被保険者の場合、拠出限度額は月額6万8,000円(年額81万6,000円)です。
付加年金保険料として支払った400円分、拠出限度額が月額6万7,600円に減額されます。年額にすると81万1,200円ですが、iDeCoの掛金は千円単位ですから81万1,000円まで減額されることになります。

付加年金の加入には条件がある

付加年金の加入には条件があります。加入できるかは、国民年金の被保険者の区分によって変わります。まずは被保険者の区分を確認しておきましょう。以下のとおりです。

【国民年金の被保険者の区分】
  • 第1号被保険者:自営業者、学生、農業者とその家族、無職の人など
  • 第2号被保険者:民間会社員や公務員など厚生年金、共済組合の加入者
  • 第3号被保険者:第2号被保険者に扶養されている配偶者(主婦・主夫など)

 

3つの区分のうち「国民年金第1号被保険者」であれば、付加年金に加入できます。第1号被保険者には国民年金保険料の支払い義務がありますが、第2号被保険者と第3号被保険者はその義務はありません。第2号被保険者と第3号被保険者の国民年金保険料は、厚生年金から出されています。付加年金は、国民年金保険料を支払う第1号被保険者のみが加入できる制度です。また65歳未満の任意加入者も、付加年金に加入できます。
ただし、以下の場合は第1号被保険者でも付加年金に加入できませんので、注意してください。

・国民年金基金に加入している人

国民年金基金も、付加年金と同じく国民年金第1号被保険者や任意加入者が加入できる制度です。国民年金基金と付加年金は併用できないことになっています。加入を検討している場合、どちらかを選択する必要があります。

・国民年金保険料が免除されている人

所得が一定額以下の場合や失業した場合、申請して国民年金保険料を免除してもらうことができます。この免除を受けている人は、付加年金に加入できません。

まとめ

今回は付加年金について説明してきました。付加年金は、毎月400円の付加保険料を支払うことで将来の年金受給額が増える制度です。増える年金受給額は「200円×付加保険料の納付月数」ですから、年金受給開始から2年経てば元が取れる計算です。個人事業主やフリーランスの方などで老後をより安心して過ごしたいという人は、付加年金を1度検討してみてください。

渡邉身衣子
東証1部上場企業法務部の経験を経て金融ライターとして独立する。ビジネス実務法務検定2級を取得済み。難しくなりがちな金融・税金・法律をやわらかく解説します。
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