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私たちのライフスタイルにも変化が?生成AIにできること

IT技術の進歩により、私たちの仕事や生活をサポートしてくれる新たな試みが日々生まれています。その中の1つが「生成AI」です。言語や思考などを学習させることで、人が作り出すものと同じようなことができる機能を持ちます。今回は「生成AI」が拓く未来について解説していきます。

日々進化する「生成AI」の世界

まずは知りたい生成AIとは何か?

「AI(Artificial Intelligence)」とは人工知能の略であり、プログラムに人間と同様の思考機能を持たせたものです。コンピュータの情報処理能力を生かして膨大なデータをプログラムにインプットし、傾向や予測から答えをアウトプットするというのが従来の「AI」の機能でした。
 

「生成AI」はこの「AI」をさらに進化させ、従来必要であった膨大なデータの学習を要せずAI自らが思考を持ち、答えを導き出すという画期的なものです。人間が生み出す品質水準は勿論のこと、プログラムという特徴を生かし人間では踏み込めない領域の創造まで手がけるようになるのではないかと注目されています。
 
実際、アメリカのOpenAI社が開発した「ChatGPT」は既に公開されており、投げかけた問いに適切な文章で答えてくれるその性能に驚かれた方もいるのではないでしょうか。「ChatGPT」に限らず、画像や動画、音声など様々な「生成AI」が登場し、その能力に触れる機会が増えているのが現状です。
 

生成AIは産業全体にも普及する見込み

「ChatGPT」は、問いかけに対して人間のように自然な文章を生成できるAIで「テキスト生成AI」と呼ばれています。しかし「生成AI」はそれだけではありません。
 

SNSやメタバースのような仮想空間上で自分の分身として活躍する「アバター(キャラクター)」は従来、人がデザインを考えプログラミングすることで使用することができました。しかし現在では、希望する条件を与えれば自動でアバターが生成できる「画像生成AI」が登場しています。
 

また、文章を認識し自然な音声データに自動変換してくれる「音声生成AI」、テキストや画像などをベースに3Dモデルを生成することができる「3Dモデル生成AI」など、生成AIが活用される場面が増えています。
 

生成AIがもつこれらの能力を産業全体に応用しようという動きは今後ますます加速していく可能性があります。アニメコンテンツや建築デザインなど、従来は人が膨大な時間と手間をかけて作成していたものを「生成AI」に作業させることで大幅に作業を効率化させることができるでしょう。

また、情報処理能力の高さを生かし、人間の処理能力が及ばない高度な開発・発明をすることも「生成AI」ならば可能かもしれません。
 

日本市場を狙う海外の生成AI

日本の生成AI市場は今後伸びる見通し

コンピュータ開発技術の進化スピードのことを「分進秒歩」と例えることがありますが、「生成AI市場」はコンピュータの進化とともに急成長を遂げています。生成AIの先進国であるアメリカでは大手IT企業は勿論のこと、スタートアップ企業も参入して生成AIの研究開発に取り組んでいます。
 

生成AIテクノロジーの進展とともに、ビジネスへの応用が盛んに行われ市場規模も拡大しています。また、カナダは現在、研究開発の世界的拠点となっており、生成AIの分野で優れた成果を挙げています。中国やヨーロッパ各国でも生成AIへの関心が高まりつつあり、今後生成AI市場に参入してくる可能性が高いでしょう。
 

我が国でも総務省が「令和5年版情報通信白書」で、世界の生成AI市場が現在の1.2兆円規模から2030年には14.2兆円まで成長すると予想しています。また、経済産業省も「令和6年度 経済産業政策の重点(案)」のなかで、デジタル社会の実現・生成AIへの対応として開発力の強化、AI研究開発に対する支援、デジタル人材の育成などを挙げており、世界における市場規模拡大の流れに追従する姿勢を見せています。

生成AI市場が活発なアメリカなど諸外国と比較して、日本の生成AI市場の規模はまだ小さく、今後40%を超える成長率で拡大していくとの予想もあります。成長する可能性が高い生成AI市場を狙って、海外のAI企業が日本の市場に参入してくる可能性もあるでしょう。
 

日本の生成AIが伸びる要因とは?

日本の生成AI市場が今後成長すると予想される理由は何でしょう?要因の1つとして挙げられるのは、以前からある日本の産業基盤が影響していると考えられます。

ジェトロ(日本貿易振興機構)のまとめによると、日本における産業の主力は「製造業」「サービス業」「卸売、小売業」であるといわれていますが、これらの産業を支えてきたのは長年に渡って蓄積してきた日本独自の高度な技術力です。特に、先進分野の技術開発において優れた能力を持つ日本の産業にとって、新ジャンルである生成AIの分野はまさにうってつけであるといえます。
 

既に各国で開発が進んでいるとはいえ、生成AIが生み出す開発の可能性はまだまだあると言われています。技術開発に優れた日本で新たな研究成果が挙がれば、生成AI市場で日本が一気に急成長する可能性もあり得ます。
 

経済産業省でも、市場規模を拡大するための政策として「生成AI基盤モデルの開発企業の公募」や「企業に対する支援スキーム」を検討するなど、生成AI市場の成長を支援する姿勢を見せています。
 

生成AIが拓くライフスタイルの新たな可能性

生成AIを利用した生産効率のアップ

日本では現在、少子高齢化に伴う「生産年齢人口の減少」が深刻化しつつあります。総務省の「令和4年版情報通信白書」のなかでも生産年齢人口のことに触れており、1995年をピークに15~64才の生産年齢人口が年々減少し、2050年には2021年の約7割まで落ち込むのではないかと予想されています。
 

つまり現在の労働者の3人に1人はいなくなるわけですからこれは深刻です。労働者不足の根本的な問題は、婚姻率の低下に伴う出生率の低下が大きな原因の1つです。この問題を解決することが先決ですが、仮に生成AIが不足する人員の穴を埋めることができれば当面の問題は解決できるかもしれません。
 

特に、デスクワークのように特別な肉体労働を必要としない分野については生成AIの導入は図りやすいでしょう。休日を増やしたり残業時間を短縮したりするなど、労働環境を改善し労働者のライフスタイルを充実させ安心して働ける環境にするためにも生成AIの活用は有効であるといえます。
 

人材不足が深刻な産業で積極的な活用を

現在でも労働者不足が問題になっている業種は少なくありません。医療従事者や建設業、製造業、情報サービス業などでは慢性的な労働者不足に陥っているという声がよく聞かれます。はじめに紹介した「画像生成AI」「3DモデルAI」などは既に実用化されており、医療現場や情報サービスの分野で活用されつつあります。
 

「テキスト生成AI」の性能がさらに向上すれば顧客対応のオペレーターや塾の講師などもこなせるようになるかもしれません。全てはこれからの生成AIの進化にかかっていますが、今後様々な分野で人にかわってAIが仕事をし、労働者は主にそれを管理する側に立つという理想の労働環境が整備される可能性もあります。
 

まとめ

「生成AI」開発の世界はまだまだ伸びしろが多く残されており、今後も成長を続ける市場であると言われています。世界のAI研究や進化に取り残されないよう、国内の生成AI市場に対し政府の更なる支援が期待されるところです。

奥谷佳子
Webライター/ライター フリーランスとして様々な記事を執筆する傍ら、経理代行業なども行う。 自身のリアルな経験を活かし、税務ライターとして活動の場を広げ、実務で役立つ生きた税法の解説に努めている。 取材を通じて経営者や個人事業主と関わることも多く、経理や税務ほか、SNSを使った情報発信の悩みにも応えている。