世帯分離をすると扶養控除はどうなる?2026年改正・後期高齢者のケースも解説

「世帯分離をすると扶養控除が受けられなくなるのでは?」と不安に感じる方は少なくありません。特に親の介護のために世帯を分けることを検討する場合、税負担への影響が気になります。
結論からいうと、世帯分離をしても一定の要件を満たせば扶養控除は引き続き適用できます。また2025年(令和7年分)以降の税制改正で、扶養として認められる所得の上限が引き上げられました。この記事では世帯分離と扶養控除の関係・後期高齢者への影響・最新の税制改正ポイントを詳しく解説します。
1. 世帯分離をしても扶養に入れる!要件とは
世帯分離をしても要件を満たせば扶養から外れない
扶養控除を受けるうえで重要なのは住民票の世帯区分ではなく、「生計を一にしているかどうか」という税法上の要件です。世帯分離とはあくまで住民票上の区分を分けることであり、生活費の援助・仕送りなどで生計を共にしていれば扶養控除は適用されます。
国税庁によれば「生計を一にする」とは日常の生活の資を共にすることをいい、同居していなくても生活費・学費・療養費などを送金している場合は生計を一にしていると認められます。
扶養控除の主な要件は以下のとおりです。
・扶養親族が16歳以上であること
・生計を一にしていること(住民票の世帯区分は問わない)
・扶養親族の合計所得金額が58万円以下(2025年〈令和7年分〉以降)であること
・青色申告・白色申告の事業専従者でないこと
参照:扶養控除|国税庁
2026年改正:扶養に認められる所得上限が103万円→123万円に引き上げ
令和7年度税制改正(2025年分以降の所得税に適用)により、扶養親族として認められる合計所得金額の上限が48万円以下から58万円以下(給与収入ベースで103万円から123万円)に引き上げられました。
これは基礎控除が10万円引き上げられ58万円になったこと、給与所得控除の最低保障額が55万円から65万円になったことに伴う改正です。世帯分離した後も、扶養親族の年収が123万円以下(給与収入の場合)であれば扶養控除を受けられます。
また、同改正で「特定親族特別控除」も新設されました。19歳以上23歳未満の親族が合計所得58万円超123万円以下(扶養控除の対象外)の場合に、最高63万円の控除が受けられる制度です。アルバイト収入のある大学生の子どもなど、従来は控除が受けられなかったケースをカバーします。
参照:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁
扶養控除が適用されなくても、収入が一定額以下であれば非課税世帯に
万が一扶養控除の要件を満たさない場合でも、世帯分離した後の世帯の収入が一定額以下であれば「住民税非課税世帯」に該当する可能性があります。
令和8年度(2026年度)税制改正の大綱(2025年12月閣議決定)では、住民税均等割の非課税基準の引き上げが盛り込まれています。改正の詳細は自治体ごとに通知されますので、住民票のある市区町村の窓口または市区町村のウェブサイトでご確認ください。
親と世帯を分けることで親の世帯が非課税世帯になれば、医療費・介護費・各種給付金において優遇を受けやすくなります。
2. 扶養と世帯分離。税法上の扶養と社会保険の扶養とは?
税法上の扶養(扶養控除)
税法上の扶養控除は所得税・住民税の計算に使われる制度です。前述のとおり世帯が別でも「生計を一にする」関係があれば適用されます。扶養控除の控除額は扶養親族の年齢によって異なります。
区分:一般の扶養親族(16歳以上19歳未満・23歳以上70歳未満) / 控除額:38万円
区分:特定扶養親族(19歳以上23歳未満) / 控除額:63万円
区分:老人扶養親族(70歳以上・同居老親等以外) / 控除額:48万円
区分:同居老親等(70歳以上・同居する父母・祖父母) / 控除額:58万円
なお、高校生世代(16〜18歳)の扶養控除は一般扶養控除38万円のまま維持されています。令和8年度税制改正の議論で縮減案が検討されたこともありましたが、最終的に現行水準が維持されることとなりました。
社会保険の扶養
社会保険(健康保険)の扶養は税法上の扶養とは基準が異なります。被扶養者になるには年収が130万円未満(60歳以上・障害者は180万円未満)であることが原則です。
また社会保険の扶養認定では居住状況によって条件が分かれます。
・同居の場合:年収130万円未満、かつ被保険者の年収の2分の1未満
・別居の場合:年収130万円未満、かつ被保険者からの仕送り額未満
世帯分離をすると住民票上は「別居」扱いとなるため、仕送りなどの実態がないと被扶養者から外れる場合があります。ただし親が75歳以上になると後期高齢者医療制度に移行するため、健康保険の被扶養者という概念自体がなくなります。
3. 後期高齢者が世帯分離をするケース
75歳以上の親と同居している場合、世帯分離によって医療費・介護費の自己負担を抑えられる可能性があります。それぞれのメリットを確認しておきましょう。
医療費の自己負担をおさえたい
後期高齢者医療制度における医療費の自己負担割合は所得に応じて1割・2割・3割に区分されます。世帯分離で親の世帯所得が下がれば、自己負担割合が3割から2割・1割に下がるケースがあります。
高額療養費制度には「世帯合算」の仕組み(同一世帯の複数人の自己負担を合算して上限を超えた分を払い戻す)があります。世帯を分けると世帯合算ができなくなるため、この点はデメリットとして把握が必要です。
なお2026年8月以降、高額療養費制度に「年間上限額」を設ける見直しが進められており、長期療養者の負担軽減に向けた制度改正が予定されています。
介護費用をおさえたい
介護保険の高額介護サービス費(月額上限)も世帯の所得によって区分されます。世帯分離で親の世帯収入が低くなれば月々の自己負担上限が引き下がり、介護費用負担が軽減される可能性があります。現役並み所得者(世帯)では月額44,400円が上限ですが、一般所得者は44,400円、住民税非課税世帯の低所得者は月額15,000円が上限となります。世帯を分離することで所得区分が変わるケースがあります。
非課税世帯として税金などの負担を軽減したい
世帯分離によって親の世帯が住民税非課税世帯になると、さまざまな優遇が受けられます。
・高額療養費の自己負担上限のさらなる引き下げ
・介護保険の低所得区分への該当(月額15,000円上限など)
・低所得者向け給付金の対象
・NHK受信料の免除など
令和8年度(2026年度)の税制改正では住民税の非課税基準の見直しが検討されており、今後基準が変わる可能性があります。世帯分離を検討する際は、最新の非課税基準を市区町村窓口で確認したうえで試算することをおすすめします。
4. 世帯分離をする際の注意点
世帯分離にはメリットがある一方、以下の注意点があります。事前に十分確認したうえで判断してください。
①国民健康保険料(世帯割)が増える可能性
国民健康保険料には世帯ごとに一律でかかる「世帯割(平等割)」があります。世帯分離で世帯数が増えるとこの保険料が増加し、トータルの保険料負担が上がる場合があります。
②高額療養費の世帯合算ができなくなる
同一世帯であれば複数の家族の医療費を合算して高額療養費の申請ができますが、世帯分離後はそれぞれ別々に申請することになります。医療費が多い家庭では合算できないことが不利になるケースもあります。
③高額介護合算療養費も対象外になる
医療費と介護費を合算して上限を超えた分を払い戻す「高額介護合算療養費」も、世帯分離後は合算できなくなります。
④扶養控除の適用には生計同一の実態が必要
世帯分離後も扶養控除は受けられますが、実際に生活費の援助をしているという実態(送金記録など)が必要です。税務調査等で確認を求められた場合に備え、送金記録を保管しておくことをおすすめします。
⑤介護施設の補足給付に影響することがある
介護保険施設の費用補助(補足給付)は世帯全体の資産・所得で判断されることがあります。世帯分離の効果が薄れるケースもあるため、施設入居を検討する際は事前に担当者へ確認が必要です。
5. まとめ
世帯分離と扶養控除の関係を整理すると、以下のとおりです。
・世帯分離をしても「生計を一にする」要件を満たせば扶養控除は受けられる
・2025年(令和7年分)から扶養親族に認められる合計所得の上限が48万円→58万円(給与収入で103万円→123万円)に引き上げられた
・高校生(16〜18歳)の扶養控除(38万円)は現行水準を維持
・後期高齢者との世帯分離は医療費・介護費の自己負担軽減に有効なケースがある
・一方で国保の世帯割増加・高額療養費の世帯合算不可などのデメリットもある
世帯分離は税負担や社会保険料に直接影響するため、安易に判断せず税理士・社会保険労務士など専門家に相談したうえで進めることをおすすめします。税務上の扶養控除や世帯分離のメリットを最大限に活かしたい場合は、ぜひ専門家へご相談ください。
大学在学中に2級FP技能士を取得、会社員を経て金融ライターとして独立。金融・投資・税金・各種制度・法律・不動産など難しいことを分かりやすく解説いたします。米国株・ETFなどを中心に資産運用中。CFP(R)の相続・事業承継に科目合格、現在も資格取得に向けて勉強中。
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