社宅を経費にして節税する方法は?役員と従業員に貸し出す際の違いも解説 | MONEYIZM
 

社宅を経費にして節税する方法は?役員と従業員に貸し出す際の違いも解説

法人の節税対策の1つが、社宅の導入です。しかし、社宅を導入すると、何がいくら経費となって節税になるのかまでは、詳しく知らない人が多いのではないでしょうか。
 

本記事では、社宅の導入による節税について詳しく解説します。また、住宅手当との違いや社宅の家賃の決め方まで説明するので、ぜひ参考にしてください。

社宅は経費として計上して節税できる

社宅を導入すると、主に次の3つのポイントで節税につなげられます。
 

  • 賃貸料相当額と家賃の差額を経費にできる
  • 社宅を購入した場合は減価償却費を計上できる
  • 社宅の取得や維持管理にかかる費用を経費にできる

 

社宅を貸し出すことで生じる経費だけでなく、購入や維持管理などにかかる費用なども経費にして節税できます。それぞれ詳しく説明します。

賃貸料相当額と家賃の差額を経費にできる

社宅を導入して貸し出した場合、一定の計算方法で求められる賃貸料相当額と支払ってもらう家賃の差額を、損金として計上して経費にできます。
 

損金
税務上の経費のこと。損金が多ければ、その分税金の計算対象となる益金が減り、節税になる。

 

ただし、社宅を無償で貸し出したり、賃貸料相当額より低い金額で貸し出していたりすると、差額分が給与として扱われる場合があります。その場合、従業員や役員の税金が上がってしまうので注意してください。

社宅を購入した場合は減価償却費を計上できる

社宅を法人が購入した場合は、社宅に対して減価償却費を計上できます。結果、経費が増え、節税になるのです。
 

もし社長本人が個人で自宅を購入してしまうと、減価償却費は計上できません。個人名義でなく、法人名義で購入して住むと税制上お得です。

社宅の取得や維持管理にかかる費用を経費にできる

社宅の取得や維持管理にかかる費用も、経費にできます。
 

例えば、社宅の購入のために借り入れをした場合、その利子を経費として計上可能です。他にも、登記費用や仲介手数料などの取得にかかる費用や、修繕費や固定資産税などの維持管理にかかる費用も対象となります。
 

社宅に関わるさまざまな費用が経費となるのです。

社宅と住宅手当との税務上の違い

住宅手当は金銭での支給なので、給与の扱いとなってしまい、従業員の所得税や住民税などが上がってしまいます。一方、社宅の場合、条件を満たせば給与とならないので、課税されません。
 

そもそも住宅手当とは、基本給とは別に家賃補助として金銭を支給するものです。対して、社宅は企業が保有・契約する物件を比較的安い賃料で従業員へ提供するもので、従業員から一定額の家賃以上を受け取っていれば、企業負担分は福利厚生費として計上できます。。よって、社宅は課税対象になりません。なお、社宅の場合、節税メリットは大きいですが、管理を会社側が行う必要があるので手間がかかるのが難点です。

役員に社宅を貸し出す場合の家賃の決め方

役員に社宅を貸し出す場合の家賃は、一定の計算方法で求められる賃貸料相当額以上に設定しましょう。賃貸料相当額以下にしてしまうと、家賃との差額分が給与として扱われ、課税対象となってしまいます。
 

賃貸料相当額の計算方法は、社宅が小規模な住宅であるか否かで異なります。小規模な住宅かどうかの判断方法は、下記のとおりです。
 

(小規模な住宅の定義)

  • 法定耐用年数が30年以下の建物:床面積が132平方メートル以下
  • 法定耐用年数が30年を超える建物:床面積が99平方メートル以下
※区分所有の建物は共用部分の床面積をあん分し、専用部分の床面積に加えたところで判定する

上記に当てはまらなければ、小規模な住宅でない場合の計算方法を利用します。
 

ただし、例外として、一般的な社宅とはいえない「豪華社宅」として判断された場合は、別の計算方法で賃貸料相当額が求められるので注意してください。豪華社宅かどうかは、床面積が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額や内外装の状況などの要素を総合して判断されます。なお、240平方メートル以下であっても、プールのような一般的な住宅にはない設備があると、豪華社宅に該当する場合があるので注意してください。
 

では小規模な住宅だった場合とそうでなかった場合、豪華社宅と判断された場合で、賃貸料相当額の計算方法がどのように違うのかそれぞれ説明します。

小規模な住宅の場合の賃貸料相当額

小規模な住宅の場合は、下記の1〜3の合計額が賃貸料相当額となります。
 

(小規模な住宅の賃貸料相当額)

1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2パーセント
2. 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
3. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22パーセント
引用元:国税庁「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」

上記の合計額以上の家賃を設定すれば、課税されずに済みます。

小規模な住宅でないの場合の賃貸料相当額

小規模な住宅でない場合は、自己所有の社宅か借り入れた住宅を役員へ貸し出しているのかで異なります。
 

(小規模な住宅でない場合の賃貸料相当額)

【自己所有の社宅の場合】
次の1・2の合計額の12分の1。
 

1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×12パーセント ※
2. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×6パーセント

※ただし、法定耐用年数が30年を超える建物の場合には12パーセントではなく、10パーセントを乗じます。

【借り入れた住宅を貸し出している場合】
会社が家主に支払う家賃の50%の金額と、上記で算出した賃貸料相当額とのいずれか多い金額。

引用元:国税庁「No.2600 役員に社宅などを貸したとき」

 

上記を参考に、賃貸料相当額を上回らない家賃を設定しましょう。

「豪華な社宅」の場合の賃貸料相当額

豪華な社宅を貸し出した場合、賃貸料相当額は「通常払うべき家賃」となります。
 

それ以下の家賃を設定した場合、差額が給与として課税されてしまうので注意してください。
 

従業員に社宅を貸し出す場合の家賃の決め方

従業員に社宅を貸し出す場合は、賃貸料相当額の50%以上に設定すれば問題ありません。差額が発生しても、給与として課税されないためです。
 

使用人から受け取っている家賃が、賃貸料相当額の50パーセント以上であれば、受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は、給与として課税されません。
引用元:国税庁「No.2597 使用人に社宅や寮などを貸したとき」

賃貸料相当額の計算方法は、次の1〜3の合計額となります。
 

1. (その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2パーセント
2. 12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/(3.3平方メートル))
3. (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22パーセント

 

従業員に社宅を貸し出す場合は、上記で求められる金額の50%以上の家賃を設定しましょう。

社宅を貸し出す場合の注意点

社宅を貸し出す場合の主な注意点は、次の2つです。
 

  • 借り上げの社宅の場合、経費になるのは家賃のみ
  • 社内規定の整備が必要

 

社宅を活用して節税するにあたって、把握しておくべきことなので、それぞれ解説します。

借り上げの社宅で経費になるのは家賃のみ

借り上げの社宅を貸し出した際、経費として認められるのは原則家賃のみです。
 

水道光熱費や駐車場代などは対象になりません。もしそれらの費用を会社側が負担した場合、給与として扱われるので注意してください。

社内規定の整備が必要

社宅を導入する際は、あらかじめ社内規定を整備しておきましょう。
 

例えば、家賃や光熱費など各種費用の負担範囲を明記しておかないと、貸し出している相手とトラブルになったり、税務調査で問題にあがったりする可能性があります。

節税以外に社宅を導入するメリット

節税以外に社宅を導入するメリットは、次の2つです。
 

  • 福利厚生のアピールになる
  • 社員同士のコミュニケーション促進につながる

 

求人や社内コミュニケーションに対して、良い効果が期待できます。それぞれ解説します。

福利厚生のアピールになる

社宅を導入していると、福利厚生の一環としてアピールできるため、採用に有利に働きます。
 

家賃は毎月の生活費の多くを占めるため、そこを節約できるとなると、魅力的に感じる人は一定数いるでしょう。

社員同士のコミュニケーション促進につながる

社宅を導入すると、社宅内で社員同士のコミュニケーションのきっかけにつながります。
 

会社でなかなか話せないプライベートな話題を、社宅内で話すことで、より密な関係が生まれる可能性があるのです。結果、スムーズに業務が進み、会社の拡大につながるかもしれません。

まとめ

社宅を導入すると、貸し出したときだけでなく、取得や維持管理の費用も経費にできるため、節税効果が高いです。ただし、借主が役員か従業員かであったり、小規模な社宅か否かであったりによって、設定すべき家賃が異なります。社宅を導入するなら、正しく家賃を設定して、効率よく節税していきましょう。

増田賢人
青山学院大学教育人間科学部卒。在学時からFP2級を取得し、お金に関わるジャンルを得意とするライターとして活動。その後、上場企業へ入社し、Webマーケティング担当として従事。現在はお金ジャンルを得意とする専業ライターに転身。「お金の知識は知ってるだけで得する」という経験を幾度もしており、多くの人にお金の基本を身につけてもらいたいと思い執筆を続けている。
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