2024年にマンション(区分所有)法が見直し、改正へ?2022年の改正内容や相続登記義務化も | MONEYIZM
 

2024年にマンション(区分所有)法が見直し、改正へ?2022年の改正内容や相続登記義務化も

2024年1月に、マンション(区分所有法)法改正のたたき台となる要綱案が公表されました。要綱案では建て替え決議の要件緩和や新制度の創設が盛り込まれています。今回は、マンション法の要綱案の内容と見直しの背景、改正されるとどうなるのか、2022年の法改正や相続登記義務化などを解説していきます。
 

※記事の内容は2024年2月20日時点の情報を元に作成したものであり、現在の内容と異なる場合があります。

2024年1月、マンション(区分所有)法の見直しに関する要綱案が公表に

法務省の法制審議会では、以前から区分所有法制の改正に対して審議されてきましたが、2024年1月に法改正のたたき台となる要綱案が公表されました。

マンション(区分所有)法、見直しの内容とは

法務省の法制審議会では、区分所有法制部会を設置し区分所有法制の改正に対して会議が開かれてきましたが、2024年1月16日には法改正のたたき台となる要綱案について審議が行われました。
 

同会議では、今回の内容を「区分所有法制の改正に関する要綱案」とすることが全会一致で決定しました。
 

要綱案の主な内容を見ていきましょう。

建て替え決議の要件緩和
1.所在等不明区分所有者を集会の決議の母数から除外する
所在が分からない所有者は、裁判所が認めれば母数から外せるように
 
2.基本的な多数決割合は、現行法どおり区分所有者及び議決権の各5分の4以上
 
3.マンション・アパートなどの区分所有建物は、地震に対する安全性に係る建築基準法に適合していないなど5つの事由が認められる場合には、多数決割合を区分所有者及び議決権の各4分の3以上に緩和

 

マンション建て替えの決議において、今まで反対票に入れていた所在等不明区分所有者を母数から除外します。
 

基本的な多数決割合は今までどおり「区分所有者及び議決権の各5分の4以上」とするものの、耐震性・火災の安全性に適合していないなど5つの事由については各4分の3以上に緩和する見込みです。
 

5つの事由は以下のとおりです。
 

① 地震に対する安全性に係る建築基準法(昭和25年法律第201号)又はこ20 れに基づく命令若しくは条例の規定に準ずるものとして政省令等で定める基準に適合していないこと
② 火災に対する安全性に係る建築基準法又はこれに基づく命令若しくは条例の規定に準ずるものとして政省令等によって定める基準に適合していないこと
③ 外壁、外装材その他これらに類する建物の部分が剝離し、落下することによ25 り周辺に危害を生ずるおそれがあるものとして政省令等によって定める基準に該当すること
④ 給水、排水その他の配管設備の損傷、腐食その他の劣化により著しく衛生上有害となるおそれがあるものとして政省令等によって定める基準に該当すること
⑤ 高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律(平成18年法律第91号)第14条第5項に規定する建築物移動等円滑化基準に準ずるものとして政省令等によって定める基準に適合していないこと

出典:法務省法制審議会「区分所有法制部会第17回会議 部会資料27-1」

 

所有者が不明な専用部分や、管理が不適当な専用部分・共用部分に対して利害関係者が裁判所に申し立てると、管理人を選出し管理を命ずる制度などの創設も記載されています。
 

新たな制度の創設
1.所有者不明専有部分管理制度
裁判所は、区分所有者を知ることができない(または所在を知ることができない)専有部分について利害関係人の請求により所有者不明専有部分管理人による管理を命ずることができる
 

2.管理不全専有部分管理制度
裁判所は、区分所有者の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され(または恐れがある)場合に、必要があると認める時は利害関係人の請求により、管理不全専有部分管理人による管理を命ずることができる
 

3.管理不全共用部分管理制度
裁判所は、区分所有者による共用部分の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され(または恐れがある)場合に、必要があると認める時は利害関係人の請求により、管理不全専有部分管理人による管理を命ずることができる
 

4.所有者が海外にいる場合の代理人制度
区分所有者は、国内に住所・居所)有しないもしくは今後有しない場合に専有部分・共用部分の管理に関する事務を行わせるため、国内に住所・居所を有する者のうちから管理人を選任できる

 

4の所有者が海外に居住もしくは海外に居住する予定の代理人制度は、仕事で海外赴任をする所有者や海外の所有者にとって利便性が高くなるでしょう。
 

加えて、被災区分所有法で指定された災害により被害を受けた建物に対して区分所有者および議決権の各3分の2以上(現行では5分の4以上)に緩和される予定です。
 

見直しの背景には、所有者の高齢化やマンションの老朽化問題が

上記のようなマンション法見直しには、所有者の高齢化や築年数の古いマンションの増加といった背景があります。
 

出典:国土交通省「マンション政策の現状と課題」

 

2018年時点で、築40年超のマンションは81.4万戸(築50年超の分譲マンションの戸数は、国土交通省が把握している築50年超の公団・公社住宅の戸数を基に推計した戸数)ですが10年後の2028年には約2.4倍の197.8万戸、20年後の2038年には366.8万戸に増加する見込みです。
 

上図の5年後・10年後・20年後のマンションの戸数は、建築着工統計などを基に推計した2018年末のストック分布を基に推計したものです。
 

日本全体で少子高齢化が進行する中で、マンションの居住者・所有者も高齢化が進んでいます。特に築年数が古いマンションでは居住者の高齢化が進み、管理組合の担い手不足が課題です。
 

加えて近年は、建築資材の高騰とそれに伴うマンション価格の上昇も問題視されています。

マンション関連法、過去の改正と相続登記の義務化

2022年の管理適正化法・マンション建替円滑化法の内容とは

2022年にはマンション管理適正化法・マンション建替円滑化法が改正されました。
 

主な改正内容は以下のとおりです。

1.マンションの管理の適正化の推進のため、国による基本方針の策定と地方公共団体による計画の策定、指導・助言などの制度を創設
推進計画を定めた地方公共団体は、一定の基準を満たすマンションの管理計画の認定が可能に。管理計画認定を取得したマンションは、住宅金融支援機構融資のフラット35の契約において金利が引き下げられるなどの優遇措置がある
 

2.新築マンションを対象とした認定制度を創設
新築時点から適正な管理がされているマンションは、管理計画認定制度の「予備認定」を受けられる。住宅金融支援機構融資のフラット35の契約において金利が引き下げられるなどの優遇措置がある
 

3.要除却認定の対象拡大
老朽化が進み維持修繕が困難なマンションをスムーズに再生するために、除却の認定対象を拡充する
 

4.団地型マンションの再生の合意形成を図りやすくするため、団地における「敷地分割制度」を創設
耐震性不足や外壁の剥落などにより危害が生じる恐れがあるマンションなどで、除却の認定を受けたマンションを含む団地では多数決(改正前は全員合意)により、敷地の分割を可能とする

 

上記の改正も、築年数の古いマンションの老朽化や管理組合の人手不足が背景にあります。
マンションの老朽化を抑制し、周辺への危害などを防止するための適正な維持管理や維持・修繕などが困難なマンションの再生に向けた取り組みの強化を図ったものです。

2024年4月から相続登記が義務化に

2024年4月から、相続で得た不動産の所有権移転登記が義務化されます。
所有権移転登記とは、不動産の名義を変更することで法務局に申請を行う必要があります。
 

不動産(建物・土地)を取得した(または取得したことを知った日)から3年以内に相続登記が必要で、正当な理由がないにもかかわらず登記をしなかった場合には10万円以下の過料が科される可能性があります。
 

2024年4月以前に相続した不動産も登記がされていないものは、義務化の対象です。
 

相続登記の義務化の背景には、相続時に登記がされていなかったことから所有者不明の建物や土地が増え周辺の環境悪化や公共工事の阻害などがありました。
相続登記をしない人が増えたわけではなく、高齢化により相続自体の件数が増加しています。

タワマン節税対策として、国税庁が財産基本評価通達を改正

タワマン節税の問題点

従来のマンションの相続税評価は、土地は路線価方式または倍率方式、建物は固定資産税評価額によって行われていました。
しかし、相続税評価額と市場価格にかい離があることが問題視されていました。
国税庁の資料によると、マンションの約65%は評価額が市場価格の半額以下になっているという実態があります。
 

(注)計数はいずれも国税庁において実施したサンプル調査(2013年~2018年中に行われた取引について、不動産移転登記情報と所得税の確定申告データを突合)による。
出典:国税庁「マンションに係る財産評価基本通達に関する有識者会議について」

 

有識者会議では原因としては築年数・建物の総階数・マンション一室の所在階が評価に反映されていないことが指摘されました。
 

国税庁が財産基本評価通達を改正

2023年9月28日に、国税庁は新たな財産基本評価通達を公表しマンション1室の相続税評価額は従来の相続税評価額に区分所有補正率を乗じたものに改正されました。
敷地利用権の価額も同様に、従来の相続税評価額に区分所有補正率を乗じて計算した価額が評価額です。
 

マンション(区分所有)法が改正されたらどうなる?

マンション(区分所有)法が今回の要綱案の内容どおりに改正されると、一体どうなるのでしょうか?
 

改正により、マンションの管理についての決議や建て替えがスムーズに進むというメリットがあります。一方で、所有者の中には家族が寝たきりで環境を変えたくないといった個別の事情があって建て替えなどに反対する人もいるでしょう。
法改正が行われると、少数の反対派にとって不利益が生じてしまうことが想定されます。
 

所有者が海外に住む場合の代理人制度は、所有者の海外赴任に対応するだけではなく日本のマンションに不動産投資をする海外の投資家にとってもメリットがあります。
 

近年、海外の不動産投資家が日本の物件を購入・運用する事例が増えました。今回改正されると、海外オーナーがさらに増加する可能性があります。

まとめ

マンション法の要綱案では、建て替え決議の要件緩和や所有者不明専有部分管理制度や海外に住む所有者の代理人制度など新たな制度が創設される予定です。今後の動向を見守っていきましょう。

田中あさみ
大学在学中に2級FP技能士を取得、会社員を経て金融ライターとして独立。金融・投資・税金・各種制度・法律・不動産など難しいことを分かりやすく解説いたします。米国株・ETFなどを中心に資産運用中。CFP(R)の相続・事業承継に科目合格、現在も資格取得に向けて勉強中。
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