子育て支援金の負担は500円って本当?健保組合別の金額一覧!制度のメリット・デメリットも | MONEYIZM
 

子育て支援金の負担は500円って本当?健保組合別の金額一覧!制度のメリット・デメリットも

2026年度から、子ども・子育て支援金の徴収が始まる予定です。
子ども・子育て支援金は、子ども・子育て支援制度の安定した財源確保のために健康保険料から天引きされます。
政府の試算では「500円」という報道がありましたが、所属する健康保険組合によって金額が異なり平均250〜450円の見込みです。
今回の記事では、子ども・子育て支援金の負担額の試算や計算方法、子ども・子育て支援金が徴収される理由、子ども・子育て支援制度のメリット・デメリットを解説していきます。
 

※記事の内容は2024年5月8日時点の情報を元に作成したものであり、現在の内容と異なる場合があります。

子育て支援金の負担額は平均250~450円

子育て支援金の負担は500円って本当?政府の試算額とは

2024年2月に政府は「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案」を国会に提出し、4月に可決されました。
法律案の中には児童手当などに充てるための「子ども・子育て支援金制度」を創設することが記載されています。子ども・子育て支援金は、2026年度以降に健康保険加入者から子ども・子育て支援金を徴収する予定です。
 

こども家庭庁が発表した、健康保険加入者1人あたりの子ども・子育て支援金の負担額の試算は以下のとおりです。
 

出典:こども家庭庁 支援金制度等準備室「子ども・子育て支援金制度における給付と拠出の試算について」

この試算額が発表された際には「1人あたり月約500円」という報道が多かった傾向がありますが、年度と人によってばらつきがあることが分かります。
 

給与所得者の場合、自社で健保組合を持つか否かによって負担金の額が異なります。
例えば自社で健保組合を設立していない企業の従業員は全国健康保険協会(協会けんぽ)に加入しますが、2026年度の見込額は250円で2027年度は350円、2028年度は450円です。
 

一方で、自社で健保組合を設立している企業や業界の組合保険に加入している企業の従業員は「組合保険」に分別されています。大企業は組合保険が多い傾向にあり、協会けんぽより負担額がやや多くなる予定です。
 

共済組合は公務員の加入する健康保険組合で、試算では最も負担額が多いです。自営業者や75歳未満の方が加入する国民健康保険、75歳以上の後期高齢者が対象の後期高齢者医療制度は比較的負担額が少なくなっています。

子育て支援金の負担はどうやって計算されているのか

上記の子ども・子育て支援金の負担の試算は、どのように行われているのでしょうか?
こども家庭庁が社会保障審議会医療保険部会に提出した資料によると、以下のとおりです。
 

出典:こども家庭庁長官官房総務課支援金制度等準備室「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案について」

 

後期高齢者と現役世代の被保険者は、所得を生み出す「稼得能力」に差があります。よって支払い能力に応じて分かち合うという考え方から、医療保険料負担に応じて按分します。
 

国民健康保険(自営業者・個人事業主・75歳未満の方など)と被用者保険(会社員・公務員など)については、自営業者などは確定申告で所得税を申告し、会社員・公務員は勤務先が代わりに計算・申告・納付するため「税務署が所得をどれくらい正確に把握しているのか(所得捕捉率)」という点に差が生じます。
よって一人あたりで公平に分かち合うという考え方から、介護納付金などと同様に加入者数で按分する予定です。
 

被用者保険間では、それぞれの所得を考慮し「支払能力に応じて分かち合う」という考え方から、総報酬割という報酬に基づき負担する見込みです。

なぜ子ども・子育て支援金を徴収するのか?

なぜ国民から子ども・子育て支援金が徴収されるのでしょうか?まずは子ども・子育て支援制度について見ていきましょう。

そもそも子ども・子育て支援制度とは

「子ども・子育て支援制度」とは、2012年に成立した「子ども・子育て支援法」「認定こども園法の一部改正、「子ども・子育て支援法及び認定こども園法の一部改正法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」の子ども・子育て関連3法に基づく制度です。
 

子ども・子育て支援制度では、児童手当の拡充や、出産・子育て応援給付金の制度化、出生後休業支援給付・育児時短就業給付制度の創設などが予定されています。
 

出典:こども家庭庁長官官房総務課支援金制度等準備室「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案について」

妊婦・子どもがいる世帯への支援が拡充される一方で、財源が必要になります。
その費用負担は「社会全体」であることが、こども家庭庁のホームページに記されています。
 

こども家庭庁の資料によると、政府は既定予算の最大限の活用した上で2028年度までに徹底した歳出改革を行い得られた公費削減効果と社会保険負担軽減の効果を活用する見込みです。
 

出典:こども家庭庁長官官房総務課支援金制度等準備室「子ども・子育て支援法等の一部を改正する法律案について」

同資料には「歳出改革と賃上げによって実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築することにより、実質的な負担が生じないこととする」と記載されています。
 

加えて政府は2024〜2028年度までに限り「子ども・子育て支援特例公債」を発行することができるようになります。

こども家庭庁は「新しい分かち合い・連帯の仕組み」と説明

こども家庭庁の資料には「支援金制度は、少子化対策に受益を有する全世代・全経済主体が、子育て世帯を支える、新しい分かち合い・連帯の仕組みである」と記載されています。
 

加えて「支援金制度を単なる拠出の枠組みとしてではなく『新しい分かち合い・連帯の仕組み』と捉え、子育て世帯を全世代、全経済主体が支え、応援していくことが重要」とも書かれています。
 

現在の日本は少子高齢化に伴う人口減少という状況にあり、資料には「少子化対策の推進は(中略)極めて重要な受益となる」と記されていますが国民の負担が増えることに批判の声もあります。

批判もあるが、子どもがいる世帯からも子ども・子育て支援金が徴収される

2024年5月現在インフレが続く中で、健康保険料から子ども・子育て支援金が徴収されることに批判的な意見があります。
 

ただし、子ども・子育て支援金は、子どもがいる世帯からも徴収されます。
加えて総報酬制で算定されますので、年収が多くなると負担が重くなる傾向があり「子どもがいるにもかかわらず、給付される金額より負担する金額が多くなる」というケースも想定されます。
 

「一体誰のための制度なのか」という声が出てくるかもしれませんが、この仕組みは企業を含めた社会全体の「所得の再分配効果」が期待できるという見方もあるのです。
 

近年、非正規雇用者の増加などを背景に25〜34歳の個人単位の労働所得の格差が拡大しており、世帯所得が500万円未満になると子どもを持つ割合が大幅に低下することが分かっています。
 

健康保険に加入する人から子ども・子育て支援金を徴収、妊婦がいる・子どもがいる世帯に給付することで「所得の再分配」ができ、貧困状況にある子どもたちに支援ができる、少子化対策につながる可能性があります。

子ども・子育て支援制度のメリット・デメリット

子ども・子育て支援制度のメリット

子ども・子育て支援制度のメリットは、児童手当の拡充、出生後休業支援給付・育児時短就業給付制度の創設などにより妊婦や子どもがいる世帯に支援が行き渡る可能性があることです。
 

例えば児童手当は、第3子以降は30,000円に増え、高校生年代まで給付期間が延長されます。所得制限は撤廃される見込みです。
 

2024年5月現在 児童手当の額
(一人あたり月額)
2024年10月分から(予定)
3歳未満 一律15,000円 3歳未満 第1子・第2子:15,000円
第3子以降:30,000円
3歳以上小学校修了前 10,000円 (第3子以降は15,000円) 3歳~高校生年代 第1子・第2子:10,000円
第3子以降:30,000円
中学生 一律10,000円 児童を養育している方の所得による制限なし
児童を養育している方の所得による制限あり
支給回数:年3回 支給回数:年6回

 

特に所得の低い世帯では、享受できるメリットが多いといえます。
 

また、保育施設への入所ができない「待機児童」問題への対策として保育園などに通っていない子どもへの支援を強化する「こども誰でも通園制度」の創設が予定されています。
 

一定期間は認可外保育施設(基準を満たさない施設)のうち、設備基準など基準を満たすのに相当の期間を要する上に転園も困難なケースは無償化の対象とするといった経過措置が設けられます。

子ども・子育て支援制度のデメリット

子ども・子育て支援制度のデメリットは、国民の金銭的な負担が増えてしまうことです。
 

加えて上記の施策が「そもそも少子化対策になるのか」「本当に支援になるのか」と疑問視する方もいらっしゃるでしょう。
 

そしてこども家庭庁の資料に記されている「加速化プランを支える財源については、歳出改革と賃上げによって実質的な社会保険負担軽減の効果を生じさせ、その範囲内で支援金制度を構築することにより、実質的な負担が生じないこととした」という文言には賛否両論があると推測されます。
 

なお筆者は、支持政党が無くこの制度についての私見は「賛成でも反対でもなく、どちらとも言えない」です。

※子ども・子育て支援金が徴収される理由や制度のメリット・デメリットは筆者個人の見解に基づくものであり、筆者が所属する組織・団体の公式見解ではありません。

まとめ

子ども・子育て支援金は2026年から平均250〜450円徴収される予定です。所属する健康保険組合によって金額が異なりますので、この記事で確認しておきましょう。

田中あさみ
大学在学中に2級FP技能士を取得、会社員を経て金融ライターとして独立。金融・投資・税金・各種制度・法律・不動産など難しいことを分かりやすく解説いたします。米国株・ETFなどを中心に資産運用中。CFP(R)の相続・事業承継に科目合格、現在も資格取得に向けて勉強中。
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