法人が割引債を所有している場合の税金や
会計処理方法について

法人が割引債を所有している場合の税金や  会計処理方法について
公開日:
2020/05/18
 
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法人は、株式や国債などの証券や債券を所有することがあります。債券には様々な種類があり、債権の種類によって、会計処理方法が異なります。その債権の1つが「割引債」です。では、割引債の処理方法は他の債券とは違うのでしょうか。ここでは、法人が割引債を所有している場合の税金や会計処理方法について解説します。

割引債とは 利付債との違いについて

債券とは、国や企業などが、企業や個人から資金を調達するために発行する、いわば借用証書のようなものです。証書の表面には、その債券の金額が記載されています。これを額面といいます。

 

国や企業は、金銭と引き換えに債券を渡し、満期になると額面の金銭を返済します。国が発行する債券を「国債」、企業が発行する債券を「社債」といいます。実は、債券はその発行の形態から、大きく分けて「利付債」と「割引債」の2つに分かれます。それぞれ見ていきましょう。

①利付債

利付債とは、名前の通り、利息を受け取ることができる債券のことです。額面の金額を支払い、債券を取得します。満期になると額面の金額が戻ってきます。これを満期償還といいます。

 

額面の金額で債券を取得し、そのまま額面の金額の返済を受けても、購入者は得になりません。そこで、半年に1度利金(利息)を受け取ります。利金のついた債券のため、利付債といいます。

②割引債

割引債には、利金(利息)がありません。では、購入者はどのような得があるのでしょうか。

 

割引債は、額面の金額よりも安い価格で取得することができます。満期償還時には額面の金額が返済され、取得価額と額面の金額の差額が利益になります。このように、額面よりも金額を割り引いて発行される債券を割引債といいます。

 

この他に、一部、利札(クーポン)のついた割引債である「利付割引債」というものもあります。

額面と取得価額の差額の処理方法

割引債を法人が所有した場合には、額面と取得価額の差額についても会計処理する必要があります。では、どのように額面と取得価額の差額を処理する必要があるのでしょうか。

ここでは、割引債の額面と取得価額の差額の処理方法について、見ていきます。

額面と取得価額の差額はいつ益金として計上する?

まず、額面と取得価格の差額をいつ益金(利益)に計上するのかということを考える必要があります。普通に考えると、満期償還をした時に、額面と取得価格の差額を計上すると考えがちです。債券の保有期間が1年間であれば、満期償還時に益金に計上しても問題ないでしょう。

 

しかし、債券の多くは取得から満期償還までに数年の間があります。利付債では、毎年利金を受け取り、益金に計上します。割引債では利金を付けない代わりとして、額面を割り引いて発行しています。そのため、割引債の場合だけ、満期償還時の1年だけ益金に計上するのは、利付債を保有している場合と整合性がとれません。

 

そこで、割引債の額面と取得価格の差額も、取得から満期償還まで毎年少しずつ益金に計上していく必要があります。

償還益の処理で必要な償却原価法とは

割引債の額面と取得価格の差額は、毎年少しずつ益金に計上していく必要があると上述しました。では、毎年いくらの金額を益金に計上すれば良いのでしょうか。益金に計上する金額は「償却原価法」を使って計算します。

 

償却原価法には「利息法」と「定額法」の2つがあります。会計上、原則として利息法を適用します。ただし、元金の支払が弁済期限に一括して行われる場合や、規則的に行われる場合は定額法でも良いこととなっています。それぞれの方法を確認しましょう。

①利息法

利息法は、実効利子率を使って、益金計上額を求める方法です。実効利子率とは、将来受け取る元利の合計額から債券の発行価額を求めるための割引率のことです。利息法による益金計上額は、次の計算式で求めます。

 

益金計上額=債券の帳簿価額×実効利子率

 

例)取得価格90万円、実効利子率1.5%の場合

 

1年目

益金計上額=帳簿価額90万円×実効利子率1.5%=13,500円

 

2年目

上記で計算した13,500円は、債券の帳簿価額に加算されます。

2年目の帳簿価額=90万円+13,500円=913,500円

益金計上額=帳簿価額913,500円×実効利子率1.5%=13,702円

 

以降、満期償却年まで、毎年、上記の計算を続けます。

 

実効利子率は計算により求めることができますが、複雑です。不明な場合は、税理士などの専門家にご相談ください。

②定額法

定額法とは、割引債の額面と取得価格の差額を取得から満期償還までの期間で期間按分する方法です。定額法による益金計上額は、次の計算式で求めます。

 

益金計上額=(額面金額-取得価額)×当期の月数/取得時から償還時までの月数

 

例)5年償還で額面金額100万円の割引債を期首に90万円で取得した。

 

益金計上額=(額面金額100万円-取得価額90万円)×当期の月数12か月/取得時から償還時までの月数60か月=2万円

 

定額法の場合は、毎年、上記の計算を続けます。

割引債の会計処理方法

ここまでは、割引債の額面と取得価格の差額について、益金計上額の計算方法を見てきました。では、計算した益金計上額は、どのように帳簿付けするのでしょうか。ここでは、割引債の会計処理方法について見ていきましょう。

法人が割引債を所有する場合の購入から満期償還までの流れ

割引債の会計処理方法を見ていく前に、まずは、購入から満期償還までの流れについて確認します。購入から満期償還までの流れは次のようになります。

①割引債の購入

割引債は、全国の金融機関や証券会社などで購入できます。その際には、購入する割引債の種類によって、様々な書類が必要になることもあります。事前に、金融機関などに何が必要かを確認しましょう。

②決算時の益金計上処理

決算時には、割引債の額面と取得価格の差額について、利息法もしくは定額法で益金に計上します。

③満期償還

満期になると、額面金額が償還されます。

割引債を保有している場合の会計処理方法

では、上記の流れに沿って、割引債を保有している場合の会計処理を見ていきましょう。

①割引債の購入

長期保有の目的で、期首に額面100万円の割引債を90万円で、普通預金で購入した。なお、満期償還までの期間は5年である。

 

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
投資有価証券 90万円 普通預金 90万円 割引債の購入

 

割引債を、長期保有目的で購入した場合は、「投資有価証券」科目で処理します。短期保有目的の場合は、「有価証券」科目で処理します。

②決算時の益金計上処理

額面金額と取得価額との差額を定率法で計算した結果、当期の益金計上額は、1万円だった。

 

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
投資有価証券 1万円 有価証券利息 1万円 割引債

 

益金計上額は、「有価証券利息」科目で処理します。

益金計上分の割引債の帳簿価格が増加するため、借方勘定科目は「投資有価証券」科目を使います。

③満期償還

満期になり、額面金額100万円が普通預金に入金された。

 

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
普通預金 100万円 投資有価証券 100万円 割引債 満期償還

 

毎期、決算時に益金計上処理をしておけば、満期償還時の割引債の帳簿価額は、額面の金額と同じになります。そのため、満期償還時には、益金の計上はありません。

まとめ

割引債とは、額面よりも金額を割り引いて発行される債券のことです。額面金額と取得価額との差額は毎期、決算時に利息法もしくは定額法で益金に計上します。

 

この処理を正しく行わないと、利益の金額が正確でなくなり、税金の計算も正確でなくなります。正しい処理を行い、正確に税金の金額を計算しましょう。

 

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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