知ってほしい利益・税金の基礎知識から
決算書の見るべき6つのポイント

知ってほしい利益・税金の基礎知識から  決算書の見るべき6つのポイント
公開日:
2020/05/15
 
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会社の経理から提出される会社の「利益」や「税金」、総決算として作成される「決算書」を読み解く術をお持ちでしょうか?

特に決算書には、今現在の財務内容にかかる様々な情報が詰まっています。

本記事では、経営者の方に知ってほしい利益と税金の基礎知識、決算書の見るべきポイントを列挙して分かりやすく解説します。

利益と税金について知ってほしいポイント

ポイント①現金主義・発生主義・実現主義

会計には利益(収益-費用)を認識するため「現金主義」「発生主義」「実現主義」という概念があることを、最初のポイントとして理解しておきましょう。

 

  • 現金主義…収益や費用を、現金の入出金を基準にカウント
  • 発生主義…収益や費用の発生を基準にカウント
  • 実現主義…利益に関して実現したものだけをカウント

 

現金主義は、現金の入出金で損益を計算するので簡便ではありますが、入出金の日付を意図的に変えることで利益の操作が容易にできてしまうという側面があります。

 

現在、ほぼ100%近くの法人が青色申告の承認を受けていますが、青色申告の要件の1つに

 

「資産、負債及び資本に影響を及ぼす一切の取引を複式簿記の原則にしたがって、整然と、かつ明瞭に記録し、その記録に基づいて決算を行うこと」という項目があります。

 

複式簿記の原則では、費用を発生した時点で計上する「発生主義」でカウントしなければなりませんし、収益については「実現主義」で認識することとなっています。

 

したがって現金の入出金は利益を計算する際には影響しません。
支払を早くしたり入金を遅くしたりしても税金は変わらないわけです。
現金主義で利益を予想している経営者の方は、発生主義による青色決算で突然利益が出た、というケースに注意が必要になります。

ポイント②棚卸資産は費用の減算項目

決算直前で利益が出てしまったときに、節税対策として「仕入(経費)を増やせば利益を抑えられる」と考える方もいるのではないでしょうか?

 

しかし、簿記の原則のなかに「費用収益対応の原則」というのがあります。
決算で費用として認められるのは、あくまで「収益を計上したものに対応する部分」に限定されます。
仕入は経費ですが、経費として認められるのは売上を計上したものに限られるのです。

 

売上を計上しなかった仕入は商品として会社の資産となりますので「棚卸資産」として計上し、仕入(経費)から減算することになります。

 

節税対策で必要以上に仕入を増やしたとしても棚卸資産でマイナスされますので、結果としてプラスマイナスゼロになりますので注意が必要です。

 

そればかりか、上記のような余剰在庫を持つということは運転資金が棚卸資産として眠ってしまうことを意味します。そのため資金繰りに弊害がでる可能性というデメリットすらあります。

ポイント③消費税は預かり税金

年間の売上高が1,000万円を超える法人の場合、忘れてはならないのが消費税の納税です。

 

毎月の会計処理で消費税の納付税額を概算で計算しておけば、いざ決算が終了して納税する段階になっても慌てる必要はないのですが、概算を把握していない状態で決算が終了し、多額の消費税納税額に驚いた、という経験をお持ちの方もいるのではないでしょうか?

 

原則的な計算方法は「売上で預かった消費税」から「仕入で支払った消費税」を差し引いた残りを納税する方法(原則課税方式)で納税額を計算します。

 

消費税は本来「預り税金」です。
納税資金は資金繰りとは別に管理すべきですが、税込金額での取引が常態化していると、売上の消費税分もつい資金繰りに組み込んでしまいがちです。

 

多額の納税が発生しても納期限は待ってくれませんし、消費税には分割納税の制度はありません。

 

消費税計算はできるだけ毎月行い、概算額を把握したうえで納税資金を積立てておくことをお勧めします。

 

また、消費税の税抜計算をすると、納税額の分だけ「当期純利益」が減少しますので、黒字決算が赤字決算に転落する、というケースも考えられます。
納税額だけではなく利益に及ぼす影響も常に意識しておきましょう。

ポイント④節税対策は資金繰りと表裏一体

納税に対して抵抗がある経営者のなかには、法人税を払いたくないがために不要不急の買い物や支出を増やして利益を抑えようとする人もいます。

 

「どうせお金を払うなら税金で払うよりモノを買ったほうがお得」と考えがちですが、実はそうではありません。

 

例えば、利益100万円を0円にするためには、100万円の経費を計上しなければなりません。
経費が発生するということは当然、同額の手持ち資金100万円が流出することを意味します。

 

一方、節税対策をとらず利益100万円で納税した場合、約30万円が税金として手持ち資金から流出しますが、約70万円は手元に残ることとなります。

 

30万円の税金を抑えるために100万円の資金を社外流出させるのか、30万円を税金で払い70万円を手元に残すのか、どちらを選択するかは会社の自由です。

 

必要な買い物、必要な支出であれば多少前倒ししてでも節税対策としては有効かもしれませんが、本来不要な支出を節税のためだけに使うのは会社の体力を減少させますので、資金繰りの観点からはお勧めできません。

 

節税対策は資金繰りと表裏一体であることを、ポイントの1つとして意識しておきましょう。

見てほしい決算書のポイント

経営者の方に、特に見てほしい決算書のポイントは2つです。

ポイント⑤税金がかかるのは「税引前当期純利益」

利益といえば損益計算書の一番下に記載されている「当期純利益」に注目する方が多いかと思いますが、決算書の当期純利益とは、法人税等(法人税や地方税)が差引された後の利益を表しています。

 

税金の計算をする際には、法人税等の経費は「なかったもの」として考えますので、税金の計算は法人税等を差し引く前の利益、すなわち「税引前当期純利益」から計算がスタートするのです。

 

毎期利益を計上している法人のなかには、税金の前払い(予定納税)をしている場合があります。
「税引前当期純利益」でなく、前払いした法人税等を差し引いた後の「当期純利益」で税金を計算してしまうと、決算が終わったときに納付する税金が予想より多かった、ということになりますので注意が必要です。

ポイント⑥利益額より利益率

会社の業績といえば売上高や利益額に注目しがちですが、利益率というのも押さえておきたい重要なポイントです。

 

利益率とは「売上総利益」を「売上高」で割ってめた割合ですが、この利益率から会社の経営状態に関する有益な情報を得ることができるからです。

 

「利益率」=売上総利益(売上高-売上原価)÷売上高

 

例えば、販売費及び一般管理費や支払利息など、固定経費の合計額を「利益率」で割り返せば、最低限クリアしなければならない売上目標である「損益分岐点売上高」が計算できます。

ここまで売れば損益はプラスマイナス0円、という指標です。

 

もし計算した「損益分岐点売上高」が実現不可能で突拍子もなく高い目標となってしまった場合には、会社の経営スタイルそのものに問題があると分析できます。

 

原因として考えられるのは、①「利益率」が低すぎるか?②「固定経費」が掛かり過ぎているか?という2点です。

 

  • ①利益率が原因であれば、売上単価の引き上げや仕入単価のコストダウンなどを検討する必要があります。
  • ②固定経費が原因であれば「売上総利益」以下になるまで固定経費を圧縮する必要があります。

 

どれだけ売上高を増やしても、「利益率」が低いと思うように利益を計上するのは難しいでしょうし、逆に売上高が少なくても「利益率」さえ良ければ多少の売上高の増減があっても黒字決算にすることができます。

 

「利益率」は会社の健康状態を示すバロメーターのようなものですから、経営者であれば常に意識しておきたいところです。

まとめ

上記ポイントを、改めてまとめます。

 

  • ①  収益と費用は発生主義、利益は実現主義
  • ②  経費は売上を計上したものに限られる
  • ③  消費税は資金繰りとは別に管理
  • ④  節税対策は資金繰りと表裏一体…不要な支出は会社の体力を減少させる
  • ⑤  税金がかかるのは「税引前当期利益」。
  • ⑥  利益額より利益率…会社の健康状態を表すバロメーター

 

経理がせっかく計算・作成した利益や決算書も、ただ眺めるだけではただの数字の羅列となってしまいます。
しかし、詳細に読み解くためには会計に対する深い知識が必要なこともまた事実です。
ポイントを押さえた財務分析さえできれば大きな読み違いや間違いは起こりにくくなりますので、今回紹介した項目を踏まえて今一度、自社の決算書を眺めてみてはいかがでしょうか。

奥谷佳子
Webライター/ライター フリーランスとして様々な記事を執筆する傍ら、経理代行業なども行う。 自身のリアルな経験を活かし、税務ライターとして活動の場を広げ、実務で役立つ生きた税法の解説に努めている。 取材を通じて経営者や個人事業主と関わることも多く、経理や税務ほか、SNSを使った情報発信の悩みにも応えている。
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