法人で「くりっく365」の取引を行っている場合の 税金と会計処理方法 | MONEYIZM
 

法人で「くりっく365」の取引を行っている場合の
税金と会計処理方法

証券会社や銀行などの金融機関で取り扱っている投資商品の1つに、「くりっく365」があります。くりっく365は個人が保有するものというイメージがありますが、法人でも保有することができます。法人の場合は、必ず帳簿付けが必要です。そこで、ここでは法人でくりっく365の取引を行っている場合の税金と会計処理方法を解説します。

くりっく365とは?くりっく365のしくみについて

くりっく365の税金や会計処理を見ていく前に、まずは、くりっく365とは何か、そのしくみについて見ていきましょう。
 
くりっく365とは為替証拠金取引、いわゆるFX取引の1つです。FX取引とは、簡単にいうと、2国間の通貨を使って利益を上げる取引のことです。FX取引の特徴は、手元資金の数倍~数十倍の取引ができる点です。
 
最初に一定の証拠金(保証金)を専用口座に預け、その数倍~数十倍の2国間の通貨を売買し、為替の金額の違いにより利益を得ます。先に低い金額の通貨を購入してから高い金額で売却するだけでなく、先に高い金額の通貨を売却してから低い通貨を購入することもできます。
 
では、くりっく365とは、どのようなものかというと、FXの中で東京金融取引所により上場されたものです。東京金融取引所に上場されているため、信頼が高く、安心してFX取引ができます。
 
投資家は、くりっく365の取扱会社などを通して、東京金融取引所に一定金額の証拠金を預けます。投資家が拠出した証拠金は、東京金融取引所が保全するため、取引参加者が万一破綻したような場合でも、安心です。

個人と法人のくりっく365の税金の違い

くりっく365は、東京金融取引所により上場されたFX取引のことですが、個人であっても法人であっても、取引に参加できます。ただし、個人と法人では、くりっく365の税金の計算方法が異なります。ここでは、個人と法人それぞれのくりっく365の税金計算方法を見ていきましょう。

個人でくりっく365を行っている場合の税金

FX取引には、くりっく365のほかにFX業者と直接取引を行うものがあります。以前は、この2つで税金の計算方法が異なっていましたが、今はどちらであっても、同じ計算方法になっています。

 

FX取引は、公的年金や事業規模でない商売の収入などと同様に、雑所得に該当します。しかし、FX取引は雑所得の中でも「先物取引の雑所得」に該当します。先物取引の雑所得では、一般の雑所得とは切り離して、税金を計算する「申告分離課税」を採用しています。

 

具体的にいうと、2国間の通貨を使って出た利益に対して、20.315%(所得税15%・復興特別所得税0.315%・住民税5%)の税率を乗じて納める税金の金額を計算します。

 

複数のFX取引を行っている場合は、すべての損益を合算し、税率を乗じます。すべての損益を合算した結果、赤字が出た場合は、翌年以降3年間繰り越しできます。

法人でくりっく365を行っている場合の税金

次に、法人でくりっく365を行っている場合の税金について見ていきましょう。

 

個人の場合は、FX取引をそれ以外の一取引と切り離して、税金を計算します。しかし、法人ではFX取引をそれ以外の一取引と切り離して、税金を計算することはありません。本業の損益と、FX取引の損益を合算した最終的な損益に、法人税が課されます。

 

例えば、法人の本業の損益が黒字500万円、FX取引の損益が赤字100万円の場合は、合算した損益400万円に対して、法人税が課されます。

法人でくりっく365を行っている場合の会計処理

法人でくりっく365を行っている場合は、その取引内容を帳簿付けする必要があります。そこで、ここでは法人でくりっく365を行っている場合の会計処理を確認しましょう。くりっく365の主な流れは以下のとおりです。

 

  • ①証券会社などのくりっく365の取扱会社にくりっく365専用口座を開き、証拠金を預け入れます。この証拠金は、くりっく365取扱会社を通して、東京金融取引所に預けられます。
  • ②取引を開始し、通貨を購入または売却します。
  • ③購入または売却した通貨を決済します。利益が出た場合は、その分がくりっく365専用口座に入金され、証拠金が増加します。逆に、損失が出た場合は証拠金がマイナスされます。
  • ④資金が必要になった場合や、くりっく365の取引を辞める場合は、くりっく365専用口座から証拠金を引き出します。

 

では、具体例で仕訳を確認しましょう。

 

①証券会社などのくりっく365の取扱会社にくりっく365専用口座を開き、証拠金を預け入れる

 

例)くりっく365の取扱会社でくりっく365専用口座を開き、普通預金から300万円の証拠金を預け入れた

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
差入証拠金 300万円 普通預金 300万円 差入証拠金

 

証拠金は、資産科目の「差入証拠金」で処理します。差入保証金や預け金など、別の資産科目でも問題ありません。別の勘定科目を使う場合は、次からの仕訳も同じ科目を使います。

 

②取引を開始し、通貨を購入または売却します。

くりっく365専用口座に証拠金を預け入れたら、その証拠金をもとに、通貨を購入または売却します。ただし、この時点では損益が確定していないため、仕訳の必要はありません。

③購入または売却した通貨を決済します。

買いから始めた取引は売りで、売りから始めた取引が買いをすることで、決済をします。決済すると、そこで初めてくりっく365取引の損益が確定します。

 

・利益が出た場合

利益が出た場合は、その利益分がくりっく365専用口座に振り込まれて、証拠金が増えます。

 

例)購入した通貨を決済し、利益が20万円出た

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
差入証拠金 20万円 先物取引収益 20万円 差入証拠金

 

差入証拠金が増加する会計処理を行います。

貸方勘定科目の先物取引収益は損益科目です。雑収入など別の損益科目で処理しても、問題ありません。

 

・損失が出た場合

損失が出た場合は、その損失分がくりっく365専用口座から差し引かれ、証拠金が減少します。

 

例)購入した通貨を決済し、損失が10万円出た

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
先物取引損失 10万円 差入証拠金 10万円 差入証拠金

 

差入証拠金が減少する会計処理を行います。

貸方勘定科目の先物取引損失は損益科目です。雑収入など別の損益科目で処理しても、問題ありません。

 

④資金が必要になった場合や、くりっく365の取引を辞める場合は、くりっく365専用口座から証拠金を引き出します。

 

例)くりっく365専用口座から証拠金200万円を引き出し、普通預金に預け入れた

 

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
普通預金 200万円 差入証拠金 200万円 差入証拠金

 

※期末の時点で未決済の通貨(買いもしくは売りから初めて、決済がまだなもの)がある場合は、決算日時点の価格で評価替えする必要があります。

 

例)決算を迎えた。保有している通貨は15万円、決算日の時価は20万円だった

 

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
先物取引差金 5万円 先物取引収益 5万円 差入証拠金

 

借方勘定科目は、差入証拠金で処理することも可能ですが、分かりやすいように先物取引差金などの資産科目で処理します。

まとめ

法人でくりっく365を行っている場合は、本業の損益とくりっく365取引の損益を合算して、税金の金額を計算する必要があります。そのため、くりっく365の取引は帳簿付けが必要です。
今回ご紹介した取引以外にも、スワップポイントが付く場合など、状況によって仕訳が異なります。くりっく365の取引があり、処理方法に不明な点がある場合は、税理士などの専門家に相談しましょう。

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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