学生起業家にかかる税金とは? 個人事業主と法人の違いを徹底比較 | MONEYIZM
 

学生起業家にかかる税金とは?
個人事業主と法人の違いを徹底比較

学生起業家としてスタートする際、個人事業主または法人設立を選択しなければなりません。しかし、個人事業主と法人では税金面や対外的な信用度などの違いがあります。しかも、選択後の変更はできません。そこで、学生起業家向けに個人事業主と法人の違いを徹底比較します。

学生起業家のスタートアップの方法とは

学生が事業を始める前、起業スタイルについて個人または法人の選択に迷うかもしれません。まずは起業スタイルごとのスタートアップの方法について説明します。

個人事業主として開業する場合

個人事業主として開業する場合、次の書類は必ず提出しましょう。

(1)開業届

個人が事業を開始するときには、開業届を提出します。提出先は税務署と都道府県であり、提出期限は次の通りです。

 

  • 税務署:事業開始日から1ヵ月以内までの期間
  • 都道府県:東京都の場合は事業開始日から15日までの期間
(2)青色申告承認申請書

青色申告承認申請書の提出は法律で義務付けられていませんが、青色申告で確定申告をしたほうが節税対策に有利です。税制上の特典の代表格は青色申告特別控除という所得控除(10万円、55万円、65万円)でしょう。

 

青色申告承認申請書の提出期限は青色申告の承認を受けようとする年の3月15日です。ただし、1月16日以降に開業した場合、事業開始日から2ヵ月以内になります。

 

  • 例1)事業開始日が1月14日の場合:提出期限は3月15日
  • 例2)事業開始日が2月1日の場合:提出期限は3月31日

法人設立をして社長になる場合

法人として事業を開始する場合、個人事業主よりも手続きが複雑になります。開業手続きの前に設立登記が必要になるためです。設立登記とは、 法人格を取得するために所在地を管轄する法務局に会社設立を申請することを指します。当初の資本金や事業目的などの事前の決めごとや会社の実印を作るなどの事前準備が必要です。特に株式会社を設立する場合、設立登記の前に定款を作成し、公証人役場の認証を受けなければなりません。

 

設立登記後に税務署・都道府県・市区町村への開業手続きを実施します。個人事業主と同じように開業届と青色申告承認申請書を提出するのがセオリーです。

 

また、法人は社会保険の加入義務があるため、事業開始日から5日以内に「新規適用届」を年金事務所に提出する必要があります。

学生起業家にかかる税金

学生起業家に課税される税金について個人事業主と法人ごとに説明します。

利益が出た場合の税金

事業活動による「売上-費用=利益」に対する税金について説明します。この利益のことを「所得」といいます。

(1)個人事業主

学生起業家の個人所得は事業所得となり、所得税、復興特別所得税、住民税が課税されます。また、70種類の法定業種に対し、「所得-事業主控除=課税標準額」に対して事業税が課税されます。

(2)法人

法人所得に対しては法人税、地方法人税、住民税、事業税が課税されます。
また、所得の有無に関係なく課税される均等割という税金も納めなければなりません。

法人の社長に対する税金

法人の社長に対する給料のことを役員報酬といい、給与所得になります。そのため、「年収-給与所得控除=給与所得」に対して、所得税、復興特別所得税、住民税が課税されます。

社会保険の加入が必要

前述の通り、法人は社会保険の加入義務がありますが、それは個人事業主も同じです。しかし、加入する社会保険の種類が異なります。

(1)個人事業主

国民年金と国民健康保険への加入義務があります。国民年金保険料は毎月定額となり、令和2年度は月額1万6,540円です。一方、国民健康保険は市区町村ごとに計算方法が異なりますが、4つの要素を組み合わせて算定します。

 

  • 所得割:世帯加入者の所得に応じて計算(所得額×料(税)率)
  • 資産割:世帯加入者の資産に応じて計算(固定資産税額×料(税)率)
  • 均等割:世帯加入者の人数に応じて計算(加入者数×均等割額)
  • 平等割:一世帯あたりいくらと計算
(2)法人

月額報酬と役員賞与を合計した役員報酬に対して、厚生年金と健康保険がかかります。役員報酬という収入金額をベースに計算する点で、個人事業主と異なります。

年商1,000万円を超えたら消費税も支払う

年商1,000万円を超えた場合、翌々年度から消費税の納税義務者になります。消費税の納付税額は「売上税額-仕入税額=預かった消費税」となり、所得に関係なく支払いが発生するのが特徴です。

「学生」起業家のみの特例制度

学生のみに認められている特例制度について紹介します。

(1)勤労学生控除

勤労学生控除という所得控除(所得税27万円、住民税26万円)は学生のみに適用できます。おもな条件は次の通りです。

 

  • 給与所得などの勤労所得がある(事業所得も勤労に基づいている場合は勤労所得になると考えられます)
  • 合計所得金額65万円以下(年間の給与収入が130万円以下)
  • 学校教育法に規定する小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校などの学生であること
(2)国民健康保険のマル学

国民健康保険のマル学とは、学生が親元の市区町村から別の市区町村に転出しても、引き続き転出前の市区町村の国民健康保険が適用できる制度です。そのため、本来支払うべき転出先の市区町村に対する国民健康保険料が免除されます。しかし、次の場合は特例が認められません。

 

  • 学生であっても就労して生計をたてている場合
  • 結婚して修学地で世帯を持っている場合
  • 学生でなくなった場合
  • 法人の社長として健康保険に加入している場合

 

学生起業家の場合、就労して生計を立てている可能性が高いため、あまり利用できない制度とも考えられます。

(3)国民年金保険料の学生納付特例制度

学生納付特例制度とは国民年金保険料の支払期日を延長する、納税猶予の制度です。次の所得以下の学生であることが条件になります。

 

  • 118万円+社会保険料控除等(+扶養親族等の数×38万円)

 

ただし、法人の社長として厚生年金に加入している場合は適用対象外です。

個人事業主と法人設立を比較検証

学生起業家のスタートアップの判断材料として、個人事業主と法人設立を比較検証します。

開業・設立前にかかる費用

開業・設立前の法定費用は法人設立のほうが個人事業主よりも負担額が大きくなります。個人事業主の開業届などの提出費用は無料です。一方、法人設立の場合、設立登記に必要な最低限の法定費用は次の通りになります。

 

  • 株式会社の設立:20万円以上(定款認証費用5万円、登録免許税15万円)
  • 合同会社の設立:登録免許税が6万円以上

毎年、支払わなければならない税金

所得に対する税金は毎年課税されます。結論からいうと次の通りになります。

 

  • 所得が少ない:個人事業主のほうが有利
  • 利益が多い:法人のほうが有利

 

なぜなら、同額の所得でも個人事業主と法人で税率が異なるためです。個人事業主に課税される所得税は累進課税を採用しているため、所得に比例して税率が高くなるという特徴があります。所得金額ごとの税率を比較すると次の通りになります。

 

課税所得金額 所得税率 住民税率 事業税率 法人の実効税率
195万円以下 5% 一律10% 3%~5% 約30%
195万円を超え 330万円以下 10%
330万円を超え 695万円以下 20%
695万円を超え 900万円以下 23%
900万円を超え 1,800万円以下 33%
1,800万円を超え4,000万円以下 40%
4,000万円超 45%

 

たとえば、あるサービス業が事業活動で所得を1,000万円獲得したとします。個人事業主の所得に対する税率は46%(所得税33%、住民税10%、事業税5%と仮定)適用されます。一方、法人の所得に対する実効税率は30%です。

 

しかし、所得が300万の場合、法人の実効税率30%よりも個人事業主の適用税率は25%(所得税10%、住民税10%、事業税5%と仮定)と低く抑えられます。

信用度・資金調達の有利不利

対外的な信用度や資金調達面では法人のほうが有利な傾向にあります。理由はさまざまですが、法人には資本金が存在するため、「資本金=自己資金」があることが客観的に分かります。また、保証人の面でも法人のほうが有利です。法人の場合、代表者が法人の保証人になれますが、個人事業主の場合は別の人を立てなければなりません。

まとめ

学生起業家が個人事業主または法人設立のいずれかを選択するかはケースバイケースです。一例として、規模が小さいうちは個人事業主、対外的な信用度を重視する場合や最初から規模の大きい事業展開をしたい場合は法人設立をおすすめします。

阿部正仁
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
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