個人事業主で損が出た場合はどうなる?
個人事業主の損失の処理方法

個人事業主で損が出た場合はどうなる?  個人事業主の損失の処理方法
公開日:
2020/05/22
 
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個人事業主が事業を継続していると、うまくいく年もあれば赤字になる年もあります。では、その年に出た赤字はどうなるのでしょうか。翌年以降に、損(赤字)を持ち越ししたいと考える個人事業主も多いでしょう。

そこで、この記事では個人事業主で損が出た場合にどうなるか、損失の処理方法について解説します。

個人事業の損とはどのような状態のことをいう?

個人事業の損とはどのような状態なのかを見ていきましょう。事業所得の所得金額は、次の計算式で計算します。

 

事業所得金額=売上-必要経費-青色申告特別控除(青色申告の場合)

 

例えば、売上500万円、必要経費300万円、青色申告特別控除額55万円の場合の所得金額は、次のようになります。

 

事業所得金額=売上500万円-必要経費300万円-青色申告特別控除55万円=145万円

 

このケースでは、事業所得金額は黒字です。次に、赤字になるケースを見てみましょう。

 

例えば、売上500万円、必要経費600万円の場合

事業所得金額=売上500万円-必要経費600万円=△100万円

 

このケースでは、赤字が100万円出ているので、個人事業は損となっています。ここまでのケースは、特に間違いなく理解できるでしょう。間違いが起こりやすいのが、次のケースです。

 

売上500万円、必要経費480万円、青色申告特別控除55万円の場合

 

このケースも赤字だと考える人は少なくないかもしれません。しかし、このケースでは赤字にはなりません。

実は、青色申告特別控除55万円(令和元年までは65万円)は限度額です。売上から経費を差し引いた利益が55万円までの金額の場合は、利益の金額分しか引けません。今回のケースでは、売上500万円-必要経費480万円=20万円が青色申告特別控除の金額になります。つまり、事業所得金額は次のようになります。

 

事業所得金額=売上500万円-必要経費480万円-青色申告特別控除20万円=0円

 

個人事業の損とは、あくまでも売上の金額より必要経費の金額の方が高い場合のことをいいます。事業所得金額が0円の場合は、損が出たことにはなりません。

個人事業の損は翌年に繰越できる? 損失の繰越とは

個人事業で出た損は、翌年以降に繰り越しできるという話を聞いたことがある人も多いでしょう。しかし、個人事業主の全てが損を繰り越せるわけではありません。そこで、ここでは個人事業の損失の繰越について見ていきましょう。

青色申告で個人事業の損が出た場合

青色申告をしている個人事業主で損が出た場合について見ていきます。青色申告の場合は、損失を翌年以降3年間に繰り越すことができます。損失を翌年以降に繰り越すということは、今年の損失を、翌年以降に出た黒字と相殺できるということです。

 

例えば、今年の損失50万円を翌年に繰越し、翌年になって利益が60万円出たとします。損失の繰り越しがなければ、翌年度は60万円の利益に対して税金が課されますが、50万円の損失を繰り越した場合、翌年度は利益60万円-繰越損失50万円=10万円に対してのみ税金が課されることになります。ただし、損失の繰り越しには、次の条件があります。

①繰越できるのは「事業所得」「不動産所得」「山林所得」の損失のみ

繰越できるのは、「事業所得」「不動産所得」「山林所得」の3つの所得から出た損失のみと決められています。例えば、雑所得など別の所得から出た損失は、繰越することができません。

②他の所得の黒字があれば、先に相殺する

個人事業主では、例えば事業所得と不動産所得というように、2つの所得があるケースもしばしば見られます。この場合、どちらかで出た損失は、もう一方の黒字と先に相殺します(違う所得の赤字と黒字を相殺することを、「損益通算」といいます)。もう一方の黒字と相殺し、それでも損失が残っている場合は、その金額を翌年以降に繰り越します。

 

例えば、事業所得が△50万円、不動産所得60万円の場合、事業所得の赤字より不動産所得の黒字の方が大きいため、翌年度に繰り越す損実はありません。ところが、事業所得が△50万円、不動産所得30万円の場合、事業所得の赤字の方が不動産所得の黒字より大きいため、差額の20万円の損失を翌年度に繰り越します。

③確定申告書の第四表を作成し、提出すること

翌年以降に損失を繰り越すためには、確定申告書第一表、第二表に加えて、第四表(損失申告用)を作成し、税務署に提出する必要があります。

※本来、不動産や株式などを売却したときは、第三表(分離課税用)が必要となります。しかし、損失を繰り越すために第四表を提出する場合は、分離課税所得があっても、第三表の提出は不要です(第三表を作成・添付しても受付はしてもらえます)。

白色申告で個人事業の損が出た場合

青色申告で個人事業の損が出た場合は、翌年以降に繰り越すことができます。それでは、白色申告の場合はどうなるのでしょうか。

 

実は、白色申告の場合、被災事業用資産の損失の金額がある場合など一定の場合を除いて、損失を翌年以降に繰り越すことはできません。2つの所得があるケースの損益通算ができるだけです。

 

今年、損失が出て翌年以降に黒字が出そうな場合は、青色申告を検討したほうが良いでしょう。

個人事業の損を翌年に繰り越すためには第四表の提出が必要

上述した通り、翌年以降に損失を繰り越すためには、第一表、第二表に加えて、第四表(損失申告用)を作成し、税務署に提出する必要があります。

 

実は、第四表には第四表(一)と第四表(二)の2種類あり、どちらも作成して税務署に提出する必要があります。第四表(一)と第四表(二)の記載方法について見ていきましょう。

第四表(一)の記載方法

第四表(一)は、今年出た損失額や、損益通算をした場合はその数字を記載する表になります。

 ①「1 損失額又は所得金額」

今年出た損失額を記載する箇所です。事業所得の損失額は、59番「経常所得 (申告書B第一表の1から7までの合計額) 」に記載します。土地・建物や株式などの売却といった譲渡所得や一時所得がない場合は、それ以外に記載する箇所はありません。

②「2 損益の通算」

損益通算をした場合に、その内容を記載する箇所です。損益通算していない場合でも、59番「A 経常所得」の「A 通算前」~「E損失額又は所得金額」の全てに、事業所得の損失額をそのまま記載します。また、同じ金額を71番「損失額又は所得金額の合計額」に記載します。

第四表(二)の記載方法

第四表(二)は、翌年に繰り越す損失額や、翌年以降にその損失をいくら相殺したかを記載する表になります。

①「3 翌年以後に繰り越す損失額」

翌年以後に繰り越す損失額を記載する箇所です。72番「青色申告者の損失の金額」に翌年以後に繰り越す損失額を記載します。損益通算などがなければ、今年出た損失額を記載することになります。

②「4 繰越損失を差し引く計算」

こちらは、翌年以降にその損失をいくら相殺したかを記載する表になります。そのため、損失が出た1年目には記載する箇所はありません。また、雑損失や株取引、先物取引などがなければ「5 翌年以後に繰り越される本年分の雑損失の金額 」以降の欄にも記載することはありません。

 

個人事業主で損が出た場合、損が出た1年目については、第四表の(一)(二)ともに、記載する箇所は多くありません。そのため、割と簡単に作成できることが多いです。ただし、2年目以降は記載する箇所が増えるので注意が必要です。

まとめ

個人事業主で損が出た場合、青色申告をしているのであれば翌年以後に損失を繰り越すことはできますが、白色申告の場合は繰り越すことができません。そのため、今年、損失が出て、翌年以降に黒字が出そうな場合は、青色申告を検討したほうが良いでしょう。

 

その際に注意したいのが「損失(赤字)とは何か」です。個人事業の損とは、あくまで、売上の金額より必要経費の金額の方が高い状態を指します。青色申告特別控除は関係しないので、注意してください。

 

また、損失を繰り越すためには第四表の提出が必要です。確定申告時には、提出を忘れないように気を付けましょう。

長谷川よう
会計事務所に約14年、会計ソフトメーカーに約4年勤務。個人事業主から法人まで多くのお客さまに接することで得た知見をもとに、記事を読んでくださる方が抱えておられるお困りごとや知っておくべき知識について、なるべく平易な表現でお伝えします。
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