フリーランスも「労災保険」に入ることが可能に! 政府が「特別加入」対象拡大の方針を明示 | MONEYIZM
 

フリーランスも「労災保険」に入ることが可能に!
政府が「特別加入」対象拡大の方針を明示

政府の「全世代型社会保障検討会議」は、2020年6月25日に第2次中間報告をまとめ、その中に「フリーランスとして働く人を保護するため、労働者災害補償保険(労災保険)のさらなる活用を図る」方針が明記されました。サラリーマンなどと違い、仕事中にケガなどをして休まざるをえなくなっても、何の補償もない多くのフリーランスにとっては、朗報と言っていいでしょう。現状示されている方策などについて、解説します。

そもそも「労災保険」とは?

事業主に雇用されている労働者は、労災保険に加入することができます。正確に言うと、事業主は、一部の小規模事業を除き1人でも労働者を雇ったら、必ず労災保険に加入させなくてはなりません。健康保険などと異なり、保険料も全額雇用者の負担となっています。

 

この労災保険に入っていれば、「業務上の事由又は通勤による労働者の負傷、疾病、傷害又は死亡等」(労働者災害補償保険法)に対して、補償が行われます。治療に要する費用は国から全額出してもらえますし、休業中は給料の8割程度が支給されるので、治療に専念できるというわけです。

 

労災保険は、パートやアルバイトといった雇用形態、短時間、短期間といった労働時間や勤務期間などにかかわらず、雇用されるすべての労働者が対象です。一方、雇用する側の事業主は、原則として加入することができません。1人で働く(雇用されていない)フリーランスも、やはり対象外に置かれています。

「特別加入」の対象拡大が打ち出された

しかし、このような事業主やフリーランスであっても、労災保険の給付を受けられる「特別加入」という制度があります。業務の実態、災害の発生状況などからみて、労働者に準じて労災保険により保護することがふさわしい人に、一定の要件の下に「特別に加入する」ことを認めたものです。

 

ただし、今述べたように要件があり、現在、特別加入ができるのは、次の4つに該当する人たちに限られています。

①中小事業主等

②一人親方等

  • 個人タクシーや個人貨物運送などの運送業
  • 大工や左官、とび職人など、土木業や建築業、解体業など
  • 漁師など水産物捕獲業
  • 林業
  • 配置薬業
  • リサイクル業
  • 船員

③特定作業従事者

  • 特定農作業従事者
  • 指定農業機械作業従事者
  • 国又は地方公共団体が実施する訓練従事者(職場適応訓練従事者、事業主団体等委託訓練従事者)
  • 家内労働者及びその補助者
  • 労働組合等の常勤役員
  • 介護作業従事者及び家事支援従事者

④海外赴任者

  • 日本国内の事業主から、海外で行われる事業に労働者として派遣される人
  • 日本国内の事業主から、海外にある中小規模の事業に事業主等(労働者ではない立場)として派遣される人
  • 独立行政法人国際協力機構など開発途上地域に対する技術協力の実施の事業(有期事業を除く)を行う団体から派遣されて、開発途上地域で行われている事業に従事する人

 

今回、中間報告で提示されたのは、この特別加入制度の対象を拡大(すなわち要件を緩和)して、多様な働き方をするフリーランスを労災保険でカバーしていく、という基本方針です。最終報告は今年の年末にまとめられる予定で、具体的な要件などについては、そのタイミングで公表されることになるでしょう。

 

仕事中にケガをしても休業補償などのないフリーランスにとっては、「前向き」な制度改正と言えます。ただし、労災保険に特別加入するためには、保険料を自己負担しなくてはなりません。労働者のように、会社が払ってくれるわけではない点は認識しておく必要があるでしょう。

労働環境改善に向けたガイドラインも策定へ

今回の中間報告では、フリーランスについて、「多様な働き方の拡大、ギグエコノミー(※)の拡大による高齢者雇用の拡大、健康寿命の延伸、社会保障の支え手・働き手の増加などの観点からも、その適正な拡大が不可欠である。」という認識が示されました。一方で、その立場の弱さから、発注事業者などとの関係で不利な状況を強いられているという現実もあることから、やはり年内をめどにその労働環境改善に向けた「実効性のあるガイドライン」を策定することなども、報告には盛り込まれています。

 

ちなみに、ガイドラインの具体的な内容として検討されているのは、次の4点です(中間報告より抜粋)。

 

  • (1)契約書面の交付 フリーランスと取引を行う事業者が、フリーランスに対し、契約書面を交付しない又は記載が不十分な契約書面を交付することは、独占禁止法(優越的地 位の濫用)上不適切であることを明確化する。
  • (2)発注事業者による取引条件の一方的変更、支払遅延・減額 フリーランスと取引を行う事業者が、フリーランスに対し、不当に取引条件の一方的変更や報酬の支払遅延・減額を行うことは、独占禁止法上の優越的地位の濫用にあたることや下請代金支払遅延等防止法上の禁止行為にあたることを明確化する。
  • (3)仲介事業者との取引に対する独占禁止法の適用 仲介事業者が取引条件の一方的変更を行う場合もあることから、仲介事業者とフリーランスの取引についても独占禁止法が適用されることを明確化する。
  • (4)現行法上「雇用」に該当する場合 フリーランスとして業務を行っていても、①実質的に発注事業者の指揮監督下で仕事に従事しているか、②報酬の労務対償性があるか、③機械、器具の負担関係や報酬の額の観点からみて事業者性がないか、④専属性があるか、などを総合的に勘案して、現行法上「雇用」に該当する場合には、契約形態にかかわらず、独占禁止法等に加え、労働関係法令が適用されることを明確化する。

 

今回の「新型コロナ」でも、発注のキャンセルが発生したものの、契約書面が取り交わされていないために、その事実を証明できない、といったフリーランスならではのさまざまな問題が起こっています。立場の向上に向けた方策が、確実に具体化されることを望みたいものです。

 

※ギグエコノミー
インターネットを通じて単発の仕事を受注する働き方や、そうした仕事でお金が回っている経済のこと。

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まとめ

多様な働き方をするフリーランスにも、労災保険に加入する道が開けそうです。年内に公表される予定の具体的な中身に注目したいと思います。

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