整骨院・接骨院の税金とは? 個人事業主と法人の違いについて解説 – マネーイズム
 

整骨院・接骨院の税金とは?
個人事業主と法人の違いについて解説

整骨院やマッサージ師など施術者として独立する場合、さまざま制度を知り、税金のルールも押えたいところでしょう。特に個人事業主と法人では税金の取り扱いが異なり、納税額に差が生じます。そこで、この記事では開業志望者向けに整骨院・接骨院などの税金について解説します。

整骨院・接骨院の基本的な運営ルール

整骨院や接骨院などの施術をする業種は、営利企業よりも法律面で規制されているなどの特徴があります。まずは基本的な運営ルールについて見ていきましょう。

収入は「保険診療」と「自費診療」に区分される

整骨院・接骨院、はり・きゅう、マッサージの施術に対する収入は「保険診療」と「自費診療」に区分されます。

 

保険診療とは、保険診療の対象となる施術について患者の負担額が施術代の一部であることが特徴で、残額は保険診療報酬として請求します。同じ内容の施術なら場所に関係なく同額であるため、施術料金を整骨院側で設定することはできません。

 

一方、自由診療は保険診療の対象外の施術で、患者の負担額が施術代の全額になるのが特徴です。公的制度と関係ないため、施術料金を整骨院側で設定できます。

 

なお、保険診療と保険外診療を併用する「混合診療」は原則禁止です。そのため、混合診療に該当すると、保険診療報酬が請求できなくなってしまいます。

保険診療の対象となる施術

保険診療のほうが自由診療よりも患者の負担額は少なくなるため、集患を有利にするためにも、きちんと対象となる施術を把握しましょう。保険診療の対象となる施術は次の通りです。

(1)整骨院や接骨院

骨折、脱臼、打撲、肉離れなどを含む捻挫の施術が保険診療の対象になります。なお、緊急の場合を除き、骨折と脱臼については、あらかじめ医師の同意を得ることが必要です。

 

単なる肩こり、筋肉疲労などに対する施術は保険の対象から外れます。また、病院や診療所などの保険医療機関で治療中の部位について、施術を受けても保険診療の対象になりません。

(2)はり・きゅう

あらかじめ医師の発行した同意書または診断書がある場合に限り、神経痛、リウマチ、頸腕(けいわん)症候群、五十肩、腰痛症、頸椎(けいつい)捻挫後遺症などの慢性的な疾患の治療が保険診療の対象になります。

 

しかし、病院や診療所などの保険医療機関で同じ対象疾患の治療を受けている間は、施術を受けても保険診療の対象になりません。

(3)マッサージ

あらかじめ医師の発行した同意書または診断書がある場合に限り、筋麻痺や関節拘縮などの医療上マッサージを必要とする症例について施術が保険診療の対象になります。

 

しかし、単に疲労回復や慰安を目的としたもの、疾病予防のためのマッサージなどは保険診療の対象から外れます。

広告規制という制限がある

整骨院・接骨院などの施術をする業種は広告規制があります。広告とは、不特定多数の人が意図せず目にする看板、チラシ、外に向かってガラスに貼ったシールやポップ、インターネットのバナー広告などになります。閲覧を意図したホームページは規制対象の広告から外れます。

 

広告規制により表示できる内容は次の項目に限られます。

(1)整骨院・接骨院
  • 柔道整復師である旨と氏名、住所
  • 施術所の名称、電話番号、所在の場所
  • 施術日、施術時間
  • 「ほねつぎ」または「接骨」
  • 医療保険療養費支給申請ができる旨
  • 予約に基づく施術の実施
  • 休日又は夜間における施術の実施
  • 出張による施術の実施
  • 駐車設備に関する事項
(2)はり・きゅう・マッサージ
  • 柔道整復師である旨と氏名、住所
  • 業務の種類
  • 施術所の名称、電話番号、所在の場所
  • 施術日、施術時間
  • もみりょうじ
  • やいと、えつ
  • 小児鍼
  • 医療保険療養費支給申請ができる旨
  • 予約に基づく施術の実施
  • 休日又は夜間における施術の実施
  • 出張による施術の実施
  • 駐車設備に関する事項

整骨院・接骨院の税金のルール

整骨院・接骨院は基本的に営利企業です。その一方、保険診療の対象となる施術をするため、料金体系は公共性が求められるクリニックと共通しています。

所得金額の計算方法は営利企業と同じ

整骨院・接骨院などの所得金額は「収入金額-経費」で計算し、営利企業と同じです。同じ保険診療の医師や歯科医師と違い、「社会保険診療報酬の所得計算の特例」に基づく概算額による経費算入の特例は認められていません。

消費税の計算は医師と同じ

消費税の計算方法は、所得金額の計算方法と違い、医師と歯科医師と同じになります。整骨院・接骨院などの収入金額のうち、保険診療報酬は非課税売上、自由診療報酬は課税売上です。保険診療報酬が非課税対象なのは社会政策的配慮のためであると考えられます。

設備の購入費用は一括で経費計上できない~減価償却~

整骨院・接骨院などの業種は施術に必要な設備や内装工事が必須ですが、購入費用やリース総額を一括で必要経費に計上することができません。減価償却という手続きにより、税法上の使用可能期間(耐用年数)に応じて、複数年にわたって減価償却費として費用化します。

 

購入した場合とリース契約をした場合によって、減価償却費の計算方法が異なります。

(1)購入した場合

購入金額を費用化する方法は「定額法」と「定率法」の2種類あります。定額法とは、耐用年数に相当する期間を均等に減価償却費を計上する方法です。一方、定率法は購入した年度から前倒しで減価償却費を計上します。

 

例)令和2年1月に耐用年数8年の設備を100万円で購入した場合

年度 減価償却費
定額法 定率法
令和2年度 125,000円 250,000円
令和3年度 125,000円 187,500円
令和4年度 125,000円 140,625円
令和5年度 125,000円 105,468円
令和6年度 125,000円 79,101円

 

購入3年目に相当する令和4年度までは定率法のほうが減価償却費の計上額が大きいですが、購入4年度に相当する令和5年度以降は定額法のほうが減価償却費の計上額が大きくなります。

(2)リース契約をした場合

リース契約をした場合、「リース期間定額法」で減価償却費を計算します。リース期間定額法とは、「リース総額-残価保証額(※)」をリース期間に応じて費用化します。たとえば、100万円の設備を60ヵ月リース契約をしたとします(残価保証額は0円と仮定)。年間の減価償却費の計上額は「100万円×12ヵ月÷リース期間60ヵ月=20万円」になります。

 

※残価保証額
リース物件の処分価額が契約上取り決めた保証価額に満たない場合、借手が不足額を貸手に支払う金額のことを指します。また、リース契約の場合、定率法により前倒しで減価償却費を計上することは認められていません。

青色申告の特典を利用する

整骨院・接骨院などの業種を問わず、開業するなら青色申告を申請するのが基本です。税制上の優遇措置を利用できるからです。青色申告のおもな特典は通りです。

(1)繰越控除

その年度の赤字額を翌年度以降の所得金額から繰越控除できる制度です。赤字額を繰り越せる期間は次の通りです。

 

  • 個人事業主:3年間
  • 法人:10年間(平成30年3月31日以前に開始する年度は9年間)
(2)30万円未満の少額減価償却資産の特例

設備などの固定資産の購入金額が一括で経費計上できる範囲が「10万円未満→30万円未満」に拡大されます。たとえば、20万円のパソコンの購入金額を一括で経費計上できます。

(3)青色申告特別控除

個人事業主の場合、現金支出の伴わない所得控除が受けられます。所得控除額は10万円、55万円、65万円のいずれが選択できます。

個人事業主と法人の税金の違い

整骨院・接骨院などの業種を開業するとき、個人事業主または法人によって税金の取り扱いが異なります。

所得金額に対する税目と税率の違い

所得金額に課税される税目と税率が個人事業主と法人では違います。

(1)個人事業主

所得税、住民税、事業税が課税され、所得金額に比例して税率が高くなるのが特徴です。整骨院・接骨院などの業種の所得税率は5%~45%までの7段階、住民税率は一律10%、事業税率は3%になります。

 

税率が後述する法人所得の税率よりも高くなる時点が法人化する目安といえます。

(2)法人

株式会社などの営利企業と同じように、法人税、地方法人税、住民税、事業税が課税されます。個人と違い所得金額に関係なく、トータルの税率は約30%です。

社会保険の加入義務の違い

社会保険に加入すると、従業員の社会保険の半額を事業所が負担しなければならず、加入義務の有無によって、人件費に差が生じます。個人事業主が開業する整骨院・接骨院は従業員が5人未満なら加入しなくても問題ありません。しかし、従業員5人以上の個人事業主や法人は社会保険の加入が強制されます。

所得分散に対する違い

整骨院・接骨院で獲得した所得を分散することにより、所得税率を下げるメリットが得られます。そのため、所得分散により税率を下げることが節税対策の定番といえます。たとえば、整骨院・接骨院で獲得した所得が1,000万円の場合、所得税率は33%になります。しかし、500万円ずつに所得分散をすれば所得税率を20%に下げることができます。

 

個人事業主は整骨院・接骨院で獲得した所得を分散できる対象者は配偶者などの家族に限られます。しかも、青色事業専従者給与が認めれるのは、家族が整骨院・接骨院などの事業に専ら従事している場合に限られます。

 

一方、法人の場合、獲得した所得を「会社の所得」と「事業主本人や家族の役員報酬」に分散することができます。個人事業主の青色事業専従者給与と違って、整骨院・接骨院などの事業に専ら従事するような縛りはありません。

決算月の設定についての違い

一般的に利益を多く計上する繁忙期の月を期首にしたほうが余裕をもって節税対策ができるといわれています。法人の場合、決算月の設定は任意であり、変更することが可能です。しかし、個人事業主は強制的に12月末となり、変更も認められません。

まとめ

整骨院・接骨院などの業種は所得が少ない場合は所得税率の低い個人事業主のほうが有利になる可能性が高いです。しかし、所得が多くなり所得税率が高くなる場合、約30%の税率であり、所得分散などの節税対策の幅がより広い法人が有利といえます。開業前に個人事業主と法人の税金の違いを知り、適切な形で開業できるようにしましょう。

阿部正仁
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。
「税務/会計」カテゴリの最新記事