個人事業主の交際費の考え方を詳しく解説! 法人の交際費とどう違う? | MONEYIZM
 

個人事業主の交際費の考え方を詳しく解説!
法人の交際費とどう違う?

個人事業主にとって、経費の中でも交際費はよく知られている科目の一つです。所得税においては交際費の金額にしばりはないものの、法人税では交際費が制限されています。
交際費として正しく計上するためにどんなことに気をつけるべきでしょうか?身近な例をあげつつ、交際費についておさらいします。

個人事業主の交際費とは?

こんなケースは交際費となる?

まず最初に、次の支出は交際費にしてよいかどうかを考えてみてください。
どれもよくありそうな例です。

 

  • (例1)馴染みのクライアントとの打ち合わせ後に開催した慰労会の費用
  • (例2)従業員の家族や事業主の友人も参加したお花見の費用
  • (例3)事業主がやむを得ず一人で外食したときの費用

 

判断にあたってのヒントとして、一般にいわれる「交際費の三要件」をあげておきます。

交際費の要件には諸説あり、これらは法人における通説とされていますが、次の3点を参考にしてみてください。

 

  • →相手方が事業に関係のある者か?
  • →支出の目的が今後の相手方との取引を円滑にするものか?
  • →行為が接待、供応、慰安、贈答などにあたるか?

 

(例1の場合)〇
交際費として問題はなさそうです。慰労会をすることによってさらに次の取引が円滑になることが期待できます。

さらに、その打合せが終わり、同じ場で弁当や飲み物、お菓子などの飲食である場合、交際費でなく会議費としても特に問題はないように思われます。

 

(例2の場合)×
交際費となりません。事業関係者として従業員はいますが、事業主の友人なども参加しているため、将来の取引の円滑のみを目的にしているとは言えません。

従業員の慰安目的で行われるレクリエーションや飲食の多くは福利厚生費として計上しますが、例2の場合、事業主の友人の部分についてはプライベートの費用であり福利厚生費にも含まれません。

 

(例3の場合)×
交際費となりせん。相手方もいませんので接待でも供応でもありません。

しかし、交際費には計上できなくても、その事業主が時間調整や現地取材等の目的でその店を利用する必要があれば会議費等で計上できます。

所得税における交際費とは?

個人事業主にとって交際費における最初の着眼点は、事業と関係があるかどうかですが、所得税ではどのように規定されているのでしょうか?

 

個人事業主においては、プライベートでの支出との分別が求められることから、交際費であれ他の費用であれ、まずはその支出と事業との関係性が求められます。

 

所得税法37条を要約しますと、必要経費に算入すべき金額は次の2つとされます。

  • 売上原価その他収入を得るため直接に要した費用
  • その年における販売費、一般管理費その他所得を生ずべき業務について生じた費用

 

個人事業主の支出が必要経費として認められるためには、業務との直接関連性が求められるということです。

個人事業主の業務内容は多岐にわたる場合もありますし、その費用も一見、第三者からはどう関連性があるのかわからない場合もあります。

結局、その支出について自分の言葉で直接的な関連性を説明できるかどうかにかかってくるということです。

 

その費用をどのような意図で支出したのかという支出の目的が説明でき、そして第三者に事業との関連性を説明できれば、所得税の計算では金額的な制約はありません。

しかし、交際費計上の上限がないからといって、事業の規模や取引の回数から考えて度を越した交際費の計上は、「必要経費」か否かという点で厳しく問われることになります。

法人税における交際費とは?

法人の交際費はどのように取り扱われている?

ここで、法人税における交際費について見ていきましょう。

法人税が交際費について規定しているのは租税特別措置法第61条の4においてです。

「交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人がその得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出する費用」を交際費等との意義として規定しています。

ここで交際費の後の「等」とは交際費の範囲が広く、単に勘定科目だけでは判断できないためです。

 

さらに租税特別措置法通達61の4では、交際費等と判断される事実について記されており、交際費等には含まれない性質を有するものとして次の5つを挙げています。

 

  • ①寄附金
  • ②値引き及び割り戻し
  • ③広告宣伝費
  • ④福利厚生費
  • ⑤給与等

 

さらに、最近では情報提供料と交際費等との区分についても、「契約に基づくもの」のみ情報提供料として、契約のない情報提供等については交際費となります。

 

法人税では、原則として交際費等を損金(所得税でいう必要経費)として認めていません。

ただし、交際費等のうちの飲食費として一人当たり5,000円までは損金として認めており、資本金1億円以下の中小企業であれば、一定(交際費合計の50%又は年間800万円までのどちらか)の交際費等については損金として認めています。

 

つまり、法人においては冗長な費用を抑制し、法人の財務体質の強化を図るという点、さらに社会政策的な観点から交際費が規定され、基本的に損金として認めないが、中小企業では特例的に交際費を認めているという状態です。したがって、条文だけで割り切れない例もでてきます。

 

中小企業で、従業員が交際費として認められないからといって、接待した人数の水増しにより一人当たり5,000円以下にして経費とする領収書メモや交際費の報告書は「改ざん」にあたります。

会計書類の改ざんが発覚すると懲罰的な税金である重加算税の対象にもなりかねません。

 

得意先の接待などの回数が多い従業員には、交際費のルールを浸透させておきましょう。

個人事業主が交際費を計上するにあたっての注意点

このように、交際費等については個人事業主と法人とでは取り扱いが異なってきます。

個人事業主の支出する交際費等については、次の3点について注意しましょう。

 

  • →個人的な支出と業務関連費との線引きを明確に
  • →交際費の領収書には「目的」と「参加者」を記録
  • →費用の直接性の説明は、社会通念に沿っているか?

 

対応策として会計仕訳をする際に、摘要欄を充実させることをおすすめします。

どの会計ソフトであっても、摘要欄には文字数の制約はありますが、自由に記載できます。交際費勘定が発生したら、目的、参加者、場所などを入力必須にするなどのルールを設けておきましょう。

 

また、交際の範囲については、社会通念上妥当かどうかという判断、つまり、常識の範囲内かどうかという第三者目線で考えましょう。

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まとめ

アメリカでは交際費の50%は費用になり、イギリスでは交際費は費用として認められず、フランスでは交際費は全額費用になるようです。それぞれの国の商習慣とも結びつくためか国によって税務上の取り扱いが異なっているのは興味深いですね。

 

わが国は、交際費というと税務調査で重要視される科目の一つです。

個人事業主においては、確かな証拠収集と確かな会計処理によって、時間が経過してもある程度は交際の内容がわかるようにしておきましょう。

▼参考URL

岡和恵
大学卒業後、2年間の教職を経て専業主婦に。システム会社に転職。 システム開発部門と経理部門を経験する中で税理士資格とフィナンシャルプランナー資格(AFP)を取得。 2019年より税理士事務所を開業し、税務や相続に関するライティング業務も開始。
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