新型コロナで休業し、手当もなし。そんな労働者に 個人給付する「休業支援金」が創設されました | MONEYIZM
 

新型コロナで休業し、手当もなし。そんな労働者に
個人給付する「休業支援金」が創設されました

6月12日、新型コロナウイルス感染症関連の経済対策を盛り込んだ、政府の第2次補正予算が成立しました。“目玉”の1つが、労働者に休業手当を支払った企業をフォローする「雇用調整助成金」の上限額の引き上げ。ただし、これは実際に手当を支払った企業に支給されるもので、企業が制度を活用せず、手当も払わなければ、労働者は「補償ゼロ」になってしまいます。そこで、補正予算とともに成立した臨時特例法で、新たにそうした人が直接申請できる「新型コロナウイルス感染症対応休業支援金」が創設されました。概要を解説します。(7月21日現在の情報です)

休業前賃金の80%を支給

新設された「休業支援金」は、「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための雇用保険法の臨時特例等に関する法律案」に盛り込まれました。新型コロナの蔓延防止措置の影響などで会社を休まざるをえなくなったのに、休業手当も支払われない――。そうした状況にある労働者に対して、雇用保険法に基づく雇用安定事業の1つとして個人給付を行い、失業を防ごうという趣旨です。

 

法令に示された内容などをベースに、どんな制度なのかをまとめました。

 

〈対象者〉

適用対象期間は、雇用調整助成金と同様に、今年(2020年)4月1日から9月30日まで。その間、新型コロナウイルス感染症の影響で休業し、賃金が支払われなかった中小企業の雇用保険の被保険者が対象となります。例えば4月から無給状態になっているような場合は、その分について遡って受給することができます。

 

雇用調整助成金が大企業も適用対象だったのに対し、この休業支援金が支給されるのは、中小企業の従業員に限られます。なお、中小企業は、次の要件に該当する企業となります。

 

  • 小売業(飲食業を含む):資本金5,000万円以下、または従業員50人以下
  • サービス業:資本金5,000万円以下、または従業員100人以下
  • 卸売業:資本金1億円以下、または従業員100人以下
  • その他の業種:資本金3億円以下、または従業員300人以下

 

また、週20時間未満の勤務などのため雇用保険の被保険者でない労働者についても、この休業支援金に準じた給付金が支給されることになりました。無給状態のアルバイトや非正規社員も、支援の対象になる見通しです。

 

〈支給日数・金額〉

支給されるのは、休業期間から、勤務した日などを除いた日数分で、1日4時間未満の勤務は、「半日」とカウントされます。

 

また、支給日額は、休業前賃金の80%で、上限は1万1,000円(月額33万円)となっています。新型コロナの影響で収入ゼロを余儀なくされていた中小企業の労働者にとっては、文字通り大きな「支援」になるでしょう。

 

引用:厚生労働省

 

〈必要な手続き〉

法律では、受給の際には都道府県労働局長に、支給された賃金などの情報やその他資料を提出するとされていて、この手続きは事業主が行うこともできることになっています。

 

7/10から郵送による申請受付が始まっています。支給申請書と支給要件確認書を厚生労働省のホームページからダウンロードし、以下の書類を一緒に郵送します。

 

  • ①申請者本人であることが確認できる書類の写し
    運転免許証(住所変更ない場合、表面のみ)・マイナンバーカード(表面のみ)などのコピー
  • ②振込先口座を確認できる書類の写し
    キャッシュカード・通帳 などのコピー
  • ③休業前および休業中の賃金額が確認できる書類の写し
    給与明細・賃金台帳 などのコピー

 

雇用調整助成金から「こぼれ落ちる」ケースを救済

さきほども述べたように、第2次補正予算には、雇用調整助成金の上限の大幅な引き上げが盛り込まれました。雇用調整助成金は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、雇用の維持を図るために従業員に支払う休業手当などに要した費用の一部を、国が肩代わりする制度です。「新型コロナ」の感染拡大で影響を受けた企業に対して、すでに申請、支給が開始されていますが、第2次補正予算で拡充が図られたわけです。

 

具体的には、企業に対する支給額の上限が、労働者1人当たり日額8,330円から1万5,000円(月額上限33万円)まで引き上げられました。上限を超える部分は企業負担となるため、それが低く設定されていることは、制度利用に二の足を踏ませる一因になっていました。今回は、解雇を行わない中小企業に対しては、全額を助成する方針も盛り込まれました。

 

ただし、これは、あくまでも「すでに休業手当を支給した」企業に対する助成です。つまり、企業からすると、後から補填されるお金。新型コロナの影響で資金繰りが大幅に悪化して、「遺憾ながら、休業手当自体の支払いが困難だ」というところも、現実には少なくない、という実態があります。今回の休業支援金の創設は、そうしたさまざまな企業の事情で給料を受け取れないでいる労働者に対して、直接的に経済的なフォローを行うのが目的です。

まとめ

新型コロナの影響による休業期間中に、休業手当を受け取れなかった中小企業の労働者を対象とした国の「休業支援金」制度ができました。対象となる方は、勤務実態が証明できる記録などを準備して申請しましょう。

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