会社都合退職と自己都合退職の違いとは?失業保険の受給条件や給付制度について徹底解説

[取材/文責]マネーイズム編集部

会社を辞めることになったときに、退職の理由が「自己都合」か「会社都合」かによって、その後の生活や受けられる支援の内容は大きく変わってきます。しかし、実際の現場では両者の制度や手続きの違いを知らず、会社に言われるがままに退職届を提出してしまうケースも少なくありません。

本記事では、会社都合退職の基本的な定義や典型的な例、自己都合退職との違い、失業保険や給付制度の差などを紹介し、もしもトラブルになった場合の対応方法まで丁寧に解説します。

1. 会社都合退職とは何か・定義と代表的な事例

労働環境の悪化や経営判断などによって会社を辞めることになった際に、自分の退職が会社都合によるものなのか、自己都合によるものなのかによって、その後の支援や給付は大きく変わってきます。

ここでは、まず会社都合退職の正しい意味を明らかにし、どのような事例がそれに該当しやすいのかを整理します。形式上は円満な合意退職に見える場合でも、実態によっては会社都合となる場合もあるため、判断材料を具体的に知っておくことは有益です。

会社都合退職の基本的な定義

会社都合退職とは、労働者の側に原因があるわけではなく、文字通り会社の事情によって退職しなければならないケースのことです。労働者側の意思や都合に関係なく、企業側の判断や経営状況によって雇用契約が終了するため、この呼称が用いられます。

「会社都合退職」という言葉が法令上で直接定義されているわけではありませんが、雇用保険制度上では、このような形での離職は自己都合退職とは明確に異なる扱いになることを押さえておきましょう。

具体的には、会社の倒産や経営再建のためのリストラなど、労働者に責任がない理由で雇用が終了した場合に、会社都合退職として認定されるのが一般的です。

会社都合退職に該当する主なケース(倒産・リストラ・解雇など)

会社都合退職は、労働者本人の意思で退職するのではなく、企業側に発生した何らかの事情により雇用が終了する場合に該当します。典型的な例として挙げられるのは、会社の経営破綻による倒産や人員削減を目的としたリストラ、業務上の必要性や経営方針変更に伴う解雇などです。

会社が倒産した場合は、企業の経済的理由で事業継続が不可能となり、従業員すべてが離職せざるを得ません。また、リストラでは、経営の悪化や事業再編によって特定部門の縮小や廃止が行われる際に、希望退職の募集や指名解雇が実施されることがあります。

また、契約社員や派遣社員、パート社員など非正規雇用の場合、契約満了時に更新を希望しているにもかかわらず、会社の都合で更新が行われない雇止めによる退職も、会社都合に該当する場合があります。

それ以外にも、労働者に重大な落ち度がなく、会社の独断で契約を終了させる「普通解雇」や「整理解雇」も会社都合による退職です。

形式上の合意退職でも会社都合となる場合

合意退職とは、会社と労働者の双方が合意して雇用契約を終了する形式を指します。しかし、その背景に会社側からの強い働きかけがある場合、実質的には労働者の自由意思とはみなされないことがあり、形式的には合意退職だったとしても、実態によっては会社都合退職として扱われます。

たとえば、会社側から退職勧奨があった場合には、合意退職であっても会社都合退職です。会社が従業員に対して退職を促す理由として、会社の経営悪化に伴うリストラや従業員の心身不調、勤務態度などがありますが、いずれの場合でも退職勧奨による離職は会社都合退職となります。

2. 会社都合退職と自己都合退職の違い

退職には大まかに「会社都合」と「自己都合」という理由による2つの区分があります。しかし、両者の違いを正しく認識していないと、受けられるはずの給付が受けられなかったり、その後の転職活動が不利になったりするという不利益を被りかねません。

会社都合は企業側の事情で雇用が終了するケース、自己都合は労働者の意思による退職を指しますが、実際の現場では判断が難しい事例も多いため、判断のポイントを押さえておくことが大切です。

ここでは、両者の定義や判断基準を整理し、自身の事例がどちらのケースに該当するかを見極めるためのポイントを解説します。

それぞれの退職理由と分類のポイント

会社都合と自己都合のどちらに分類されるかは、退職理由が本人の意思に基づくのか、会社の都合によるのかで区分されます。

会社都合退職に該当するケースは、たとえば、会社の倒産で雇用の継続が不可能になる場合や、経営方針変更によるリストラのような、本人に責任がなく退職するもの、契約社員や派遣社員、パート社員で契約更新を希望しているにもかかわらず、会社都合で契約が更新されない場合などです。

それに対して、自己都合退職は、転職先が決定したことにより元の会社を退職したり、家族の介護で実家に戻るために辞めたりといった、本人の都合や意思で退職するケースを指します。

これらは、失業給付の条件や期間に直接影響するため、自身のケースがどちらに該当するかを正確に理解することが重要です。

自己都合退職の定義と事例

自己都合退職とは、働く本人の意思や事情により、自らの意思で雇用契約の終了を申し出る形式の退職を意味します。会社側から辞めるよう働きかけがあったわけでなく、自発的な判断による退職の意思表示があるのが特徴です。

自己都合退職は、雇用保険上「一般受給資格者」とされ、失業給付の支給開始までに待期期間や給付制限期間が設けられるなど、会社都合退職者(特定受給資格者)と比べて給付条件が不利になる場合があります。

自己都合退職の主なケースとして挙げられるのは、転職を目的とした退職や、家庭の事情による退職、自己の健康上の理由によるものなど様々です。

会社都合退職か自己都合退職かの判定基準・注意点

会社都合退職か自己都合退職かの判定は、離職理由の客観的な事実に基づいて行われます。雇用保険においては、会社の倒産や解雇、雇止め、著しい労働条件の変更、長期の賃金未払いなど、労働者側に責任がない離職の場合に「特定受給資格者」として会社都合退職という扱いになるのが一般的です。

注意点として、自己都合により退職する場合でも、本当にそのケースで自己都合による退職になるのか、会社都合による退職にならないかどうかをよく見極める必要があります。離職票に「自己都合」と記載されていたとしても、実際には会社都合になる場合もあるため、まずはよく確認することが大切です。

3. 会社都合退職と自己都合退職の失業保険・給付制度の違い

会社都合による退職か、自己都合による退職かによって、失業保険の受給条件や支給開始までの期間などは大きく異なります。そのため、それぞれの違いを正しく把握しておくことが、制度の恩恵を受けるためのポイントです。

ここでは、両者の失業保険・給付制度の違いと、受給する際に知っておきたい基礎知識を解説します。

失業給付金の受給条件・支給期間の違い

失業給付金を受給するためには、離職日以前の2年間に通算12か月以上の雇用保険の被保険者期間があることが条件です。ただし、この期間は退職理由によって短くなる場合もあります。

自己都合退職の場合は、令和7年4月1日以降であれば離職から基本手当の給付開始までに原則1か月間の給付制限期間を経なければなりません。支給期間は、被保険者期間に応じて90〜150日です。

会社都合退職の場合、労働者側に責任がないケースと認められるため、給付制限期間はなく、7日の待期期間後にすぐに給付が開始されます。給付期間は、被保険者期間や年齢に応じて90〜330日と、自己都合の場合よりも長く支給される点が特徴です。

会社都合退職の給付優遇と自己都合退職との比較

会社都合による退職では、失業保険の受給に関して自己都合退職よりも有利な条件が設定されています。給付開始までの待期期間が7日間のみで、自己都合退職の際にある1~3か月の給付制限がありません。そのため、離職後すぐに失業保険の給付を受けられる点が大きなメリットです。

一方で、自己都合退職は労働者側の意思による離職であるため、給付制限期間があり受給開始までの期間が長くなるデメリットがあります。さらに、給付日数も短めに設定されているため、貯蓄や退職金など別の生活資金を確保しておくことが重要です。

特定受給資格者・特定理由離職者について

会社都合退職とみなされるケースを、雇用保険制度では「特定受給資格者」として区分しています。特定受給資格者になると、給付開始までの待期期間が短縮され、給付日数も優遇されるのはすでに述べたとおりです。

一方、本人の意思による退職であったとしても、やむを得ない事情が認められる場合には、「特定理由離職者」に該当します。契約期間満了で更新を希望したにもかかわらず更新されなかった場合や、健康上の理由による退職などが代表的な理由です。

これらのケースでは、自己都合による退職ですが、やむを得ない正当な理由であると認められ、失業保険の給付制限期間がなくなるなどの優遇措置を受けられます。

4. 会社都合退職に該当するかの判断ポイント・トラブルになった場合の対応

退職理由は、失業給付の条件や支給期間、将来のキャリア設計にも影響する重要な要素です。そのため、意図せぬ不利益を被らないためにも、正しい判断基準と対処方法を理解しておくことが大切です。

ここでは、判断ポイントやトラブルの際の対処法まで詳しく解説します。

会社都合退職となる代表的な退職理由・判断基準

会社を辞めた場合に会社都合退職と認められるかどうかは、離職の原因が労働者の責任によるものか否かがポイントです。

会社都合となる代表的な退職理由としては、会社の倒産やリストラの一環としての解雇、会社の移転で通勤が困難になったなどが挙げられます。また、賃金の未払いや違法な長時間労働への対処を怠ったなどの理由も対象です。

会社都合退職と判断される基準は、事実を証明できる証拠の有無にあります。そのため、退職時には離職理由の根拠となる通知書や記録を保管しておくことが非常に重要です。

自己都合退職とされた場合の対応方法(証拠・訂正申立てなど)

本来は会社都合退職であるにもかかわらず、離職証明書や離職票に自己都合退職として記載されてしまう場合があります。この場合は、ハローワークに異議を申し立てることが可能です。

ハローワークは、企業側と労働者側の主張や客観的な資料をもとに調査を行い、最終的に退職理由を判定します。そのため、退職勧奨があったことを示す証拠(退職勧奨通知書や面談の記録)を確保しておくことが重要です。

トラブル時の相談窓口・適切な対応

退職理由をめぐって会社側と意見が折り合わない場合は、専門機関に相談するのが有効です。厚生労働省の総合労働相談コーナーでは、解雇や賃金未払い、ハラスメントなど幅広い労働トラブルについて無料で相談できます。また、「労働条件相談ほっとライン」は、労働条件全般に関する悩みに対応しており、アクセスしやすい時間帯設定が特徴です。

会社の人事部や労働組合、社外の専門家への相談も選択肢として挙げられます。社内での解決が難しい場合には、弁護士や社会保険労務士など外部の専門家に依頼することで、法的な観点からアドバイスを受けられるでしょう。

中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。

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