経理業務をAIで効率化!導入メリット・成功事例・投資対効果を徹底解説

[取材/文責]マネーイズム編集部

近年、経理業務の効率化や正確性向上のため、AIの活用が注目されています。本記事では、経理業務のAI化の現状や市場動向、具体的な効率化事例、導入によるメリット、導入の進め方と今後の展望について解説します。

1. 経理業務AI化の現状と市場動向

近年、経理業務のデジタル化やAI活用への関心が高まっています。政府も会計DXを推進していますが、中小企業では導入目的を明確にし、まず負荷軽減や現場で取り組みやすい施策から段階的に進めることが重要です。

ここでは、経理業務AI化の現状と市場動向について解説します。

政府が推進する経理DXと関連政策の動向

政府は「国・地方重点DXプロジェクト」として、デジタル行財政改革関連の取り組みを重点的に進めています。

・デジタル行財政改革会議関係プロジェクト:
教育、介護・医療、交通、子育て、防災、福祉相談の分野に加え、上下水道DXが新たに対象として追加される予定。

・国・地方デジタル共通基盤推進連絡協議会の合意に基づくプロジェクト:
令和6年度の共通化対象候補(12業務・システム)に加え、令和7年度の共通化対象候補(現在提案受付中)が対象。

・特に重要と認めるもの(BPR・制度改革を含む):
データ利活用の推進や、府省共通業務DX(会計DX・人事管理DX・法制事務DXなど)が位置づけられている。

このように、会計DXは国・地方重点DXプロジェクト(デジタル行財政改革関連)の一部として、制度改革や業務プロセスの見直しと一体で進められているのです。

中小企業におけるAI導入状況と課題

中小企業におけるAI導入では、単に最新技術として導入するだけでは効果が出にくいことが課題となっています。変化の目的やAIの役割が明確でないまま導入すると、従業員にとって不毛な作業となり、生産性向上にはつながりません。

AIを単なる流行として導入するのではなく、業務改善や課題解決のための具体的な手段として位置づけ、社員に対して必要性を丁寧に説明することが重要なのです。

経理業務のデジタル化が進む背景と必要性

経理業務のデジタル化が進む背景には、業務効率化やテレワーク環境の整備といったニーズがあります。企業によってはテレワークの活用が難しいケースもある一方で、テレワークの阻害要因の解決に関心を示す企業も少なくありません。

このような状況から、経理業務のデジタル化は、まず業務の負荷軽減や現場が取り組みやすい施策から着手することが必要であり、その上で徐々に高度な取り組みへと拡張していくことが有効だといえるでしょう。

2. AI導入による経理業務の効率化事例

ここでは、AIを活用して経理業務の効率化を実現した事例を紹介します。従来、手作業で時間を要していた業務が、AIの導入によってどのように改善されているかを確認していきましょう。

AI-OCRによる請求書・領収書処理の自動化

AI-OCRを活用した請求書・領収書処理の自動化は、月間数千枚にも及ぶ請求書の仕分けや登録、チェック作業を効率化する取り組みです。従来は月次処理のタイミングに業務が集中し、繁忙期には多くの社内要員が投入される一方で、一定期間の余剰要員が発生するなど、業務の平準化が難しい状況でした。

しかし、AI導入により、手作業で行っていた請求書処理をOCRによって自動化することが可能です。専用の管理画面を用いることで、OCR処理前後のデータを確認し、修正やダブルチェックが必要な作業も効率化できます。

最終的に、チェック済みデータは会計システム用データとして生成可能であり、経理業務全体の効率向上と社内要員の削減につながります。

自動仕訳と帳簿作成の効率化

昨今、経理業務の効率化が大きく進みました。従来は、Excelで作成された申請書をもとに経理担当者が一件ずつ勘定科目を確認・設定していました。しかし現在は、申請者が経費項目を選択するだけで、システムが自動的に適切な勘定科目を紐付け、会計システムに仕訳データを直接連携できます。
このような仕組みにより、仕訳作業や検算の負担が大幅に軽減され、経理部門の業務量は大幅に削減されました。結果として、経理担当者はより付加価値の高い業務に時間を割くことが可能となり、帳簿作成全体の効率化と精度向上が実現されているのです。

経費精算・支払処理の自動化

AIを活用することで、経費精算や支払処理の効率化が可能です。交通費や交際費などの経費が正しく申請されているかをAIが自動でチェックするため、経理担当者の手作業が大幅に減ります。

このように、経費精算の自動化は単なる業務効率化にとどまらず、不正や申請ミスの防止にもつながります。結果として、経理担当者の負担を軽減し、精度の高い支払処理を安定して行えるようになるため、企業全体の経理業務の質向上にもつながるでしょう。

財務レポート作成と分析業務の効率化

経理業務における財務レポート作成や分析業務でも、AIの活用による効率化が進んでいます。AIは、過去の仕訳履歴や勘定科目のパターンを学習し、自動的に仕訳案を提案可能です。

これにより、ミスの少ない入力が可能となり、月次決算のスピードアップや経理業務の平準化につながります。さらに、AIによるデータ分析機能は、売上の傾向やコストの異常値を自動で検出し、視覚化されたレポートとして提示できます。

このように、AIを活用した財務データの分析により、経営判断や事業戦略に直結する情報を迅速に提供でき、従来数日かかっていた作業も数分で完了させることが可能です。

3. AI導入のメリットと投資対効果

ここでは、AI導入によって経理業務で得られる効果や投資対効果について、業務時間削減やコスト圧縮、エラー削減、経理人材の付加価値向上や投資回収期間の目安などさまざまな視点から紹介します。

業務時間削減と人件費コストの削減効果

AIの導入により、業務時間や人件費コストの削減効果に期待できます。例えば、AI-OCRを活用して領収書や請求書を自動でデータ化することで、従来の手作業による手間を削減できます。

このように、AIを導入することによって、業務時間の削減と人件費の圧縮に即効性のある効果が期待できるのです。

作業精度向上とヒューマンエラーの削減

AIは経理業務におけるヒューマンエラーの防止や削減に大きく役立ちます。経理では、データ入力ミスや仕訳の誤選択、桁数のずれなどが発生するものです。AIは設定されたルールに従って自動処理を行うため、入力ミスや桁数のずれなどの人為的ミスを防止できます。

さらに、過去のデータや履歴と照合しながら異常値を検知できるため、万が一ミスが発生しても早期に発見可能です。このように、AIの活用により経理業務の正確性が高まり、ヒューマンエラーを抑止する仕組みを構築できるのです。

経理人材の戦略業務へのシフトと付加価値向上

AIの導入により、経理担当者には従来の会計処理に加えて「判断」と「創造」のスキルが求められるようになっています。「判断」は仕訳の適正化や財務状況の把握、AIによる業務結果の確認など、従来の実務スキルをベースにした能力です。

一方、「創造」は業務プロセスの効率化やより効率的なAI活用、関係部署との調整など、これまで注目されにくかった能力であり、経理部門の付加価値向上に直結します。AI時代の経理部門では、こうしたスキルを組み合わせることで、単なる事務作業から戦略的価値創出へと役割が進化しているのです。

中小企業での投資回収期間と具体的コスト削減効果

中小企業がAIやIoT関連のツールを導入する際、費用は場合によって大きく異なります。汎用的なツールであれば月数万円程度で導入できる場合もありますが、十分なデータを取得して活用する場合には1,000万円以上かかることも少なくありません。

それでも、AI導入による投資回収期間は、小規模導入であれば6〜12か月程度と比較的短期間となっています。費用負担が課題となる場合は、補助金・助成金を活用し、コストを抑えながら導入を検討することをおすすめします。

4. AI導入の進め方と今後の展望

ここでは、AI導入を効果的に進める方法と注意点、補助金活用のポイント、さらに経理業務におけるAIの将来展望について解説します。段階的な導入やリスク管理を踏まえ、中小企業でも戦略的に活用できる方向性を考えていきましょう。

段階的なAI導入のロードマップと優先順位

AI導入を効果的に進めるには、段階的なロードマップと優先順位の設定が重要です。例えば、経済産業省が策定したDX推進指標は、企業がどの程度DXに対応できているかを可視化できるツールです。

この指標を活用すれば、現状を正しく認識し、優先度の高い業務からAI導入を進められるでしょう。

導入時の注意点とリスク管理

AIツールや生成AIを導入する際は、注意点を把握し、リスク管理することが重要です。

まず、社外サービスで動作するAIには、機密情報や個人情報を入力しないルールを社内で徹底しましょう。また、AIは過去の学習データに基づくため、最新の法令や会計基準に対応していない可能性があります。アップデート状況を確認し、社内で出力内容をチェックする体制を整えましょう。

導入時には、領収書読み取り・交通費精算・仕訳自動化・請求書作成など、対象業務を整理し、評価指標も事前に設定します。また、現場教育として操作マニュアル整備、初期説明会やハンズオン、トラブル対応フローを準備することで、AI活用効果を最大化できるでしょう。

政府支援制度と補助金活用方法

AIツールの導入にあたっては、政府や自治体が提供する補助金を活用することで、初期投資の負担を軽減できます。

例えば、「IT導入補助金」や「ものづくり補助金」、「事業再構築補助金」が活用の選択肢になるでしょう。さらに、各自治体でもDX推進を対象とした独自の補助金や助成金が用意されていることがあるため、地域の制度を調べることでより多くの支援を受けられる可能性があります。

経理業務の未来展望とAI技術の進化予測

今後、AIの進化により、中小企業でも経理業務の効率化が可能になると期待されます。AIは膨大なデータを短期間で分析し、異常値の検出やリスク評価を低コストで実施できるため、中小企業でも手軽に導入できるようになるでしょう。

これにより、中小企業は内部統制の整備や業務の効率化を実現しつつ、経理業務の品質向上を図ることが可能です。AIは単なる作業支援にとどまらず、経理部門の価値を高める戦略的ツールとしての役割も担っていくでしょう。

まとめ

AIの導入により、経理業務は単なる作業から戦略的価値創出へと進化します。業務時間や人件費の削減、ヒューマンエラーの防止、経理担当者の付加価値向上が期待できるでしょう。

適切なロードマップと補助金を活用すれば、投資回収も比較的短期間で可能です。今後はAIの進化により、中小企業でも効率的かつ高品質な経理業務を実現できる時代が到来するでしょう。

中小企業経営者や個人事業主が抱える資産運用や相続、税務、労務、投資、保険、年金などの多岐にわたる課題に応えるため、マネーイズム編集部では実務に直結した具体的な解決策を提示する信頼性の高い情報を発信しています。

新着記事

人気記事ランキング

  • banner
  • banner